読書感想文 ※ネタバレなし|龍神の雨 道尾秀介|家族の再定義

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本の紹介

著者と書籍の情報

 
今回手に取った本は、道尾秀介さんの「龍神の雨」でした。
 
 
 
 
道尾秀介さんの作品はいくつか読んだことがありました。
なかでも「向日葵の咲かない夏」は、私が今まで読んだ小説の中でもトップに面白かったです。
伏線の張り方がエグくて、何度も読み返してゾクゾクしたのを覚えています。
 
 
今回の作品も、ワクワクしながら読みました。
 
 

内容

 
本書では、2つの家族が登場します。
 
「実母が事故でなくなり、実父が病気で亡くなり、継母と暮らす兄弟」の小学生の圭介、中学生の辰也
「実母が事故でなくなり、実父とは疎遠になって、継父と暮らす兄妹」の中学生、その兄の
 
この2つの異色な家族に焦点を当てて、物語は進んでいきます。
 
思春期真っ只中の彼らは、継父母との関係が良好ではありません。
4名とも、心におおきなしこりを抱えつつ、それでも日々は平凡に過ぎていきます。
 
これから家族はどうなっていくのだろう、、
そんなことを思っていた矢先、家族の住む地域に大規模な台風が発生します。
龍が引き起こしたような荒れ狂う台風の日、事件は起きます。
 
そしてその事件をキッカケに、接点のなかったこの2つの家族が繋がり、物語は意外な方向に進んでいきます。
 
彼らの運命いかに、、
 
 

全体の感想

 
面白かったです!
 
本書は、2つの家族の視点が交互に入ってきます。
継母の家族では弟の圭介、継父の家族では兄の蓮、彼らの視点で進んでいきます。
 
ただ、物語の終盤では、もう片方の兄妹たちの視点も描かれ、そこから物語がクルっと変わってきます。
あの瞬間はやっぱりミステリ小説の醍醐味と言いますか、とってもワクワクする瞬間です。
ぱらぱらページを戻しながら、”おー、たしかに” とか ”あ、そゆことか” と腑に落ちていく瞬間がいいですよね。
 
 
本書のテーマはずばり『家族』です。
 
家族といっても、しょせんは赤の他人です。心のうちを真に理解することはありえない。
考えていることを理解するには、他の人間と同じく、言語や非言語の情報を頼りに『推測する』しかありません。
じゃあ、家族とその他の人間を分かつものって何でしょう。
 
人によってはそれを『血縁関係』や『過ごした時間』と置くかもしれません。
どれが正解とかはありませんが、社会上では『戸籍上の血縁関係』が上位に来ます。
そして、社会で普通に生きていると、感覚がマヒしてそれが自然なように感じてしまうようになります。
 
 
本書の終盤では、こんな言葉が出てきます。
 
家族のことだけは、どんなことがあっても信じなきゃいけない。
たとえ血が繋がっていても、いなくても。家族なら、信じなきゃいけない。
 
 
そう、家族の定義は『信頼』です。
というか、信頼するしかないんです。それしか、家族とその他を分かつものはないんです。
 
本書はそんな、家族の定義やあり方を考えさせる一冊でした。
 
 
そして、逆に言えば、「信じてさえいればそれはもう家族」なんです。
 
 
そう、信じてさえいれば、
 
 
 
 

グッと来たところ

場面・描写

 
この本では、感情の描写が面白いなと思いました。
 
 
たとえば「怒り」の描写では、
 
生まれて初めてみるような、グロテスクな怒りの表情が張り付いていた
p73
 
もう一度呼びかけた瞬間、その部屋中の粒子が一斉に尖った。見えないからこそ、圭介はぎくりとした。
p121
 
すぐそこにある辰也の顔は、よくかれたガラスの向こうにあるように、変にはっきりと見え、しかしどこか現実感がなかった。
p154
 
 
 
 
不安の描写では、こんな感じ
 
窓の隙間から漏れ入った水が、床をだんだん濡らしていくように、不安はゆっくりと圭介の胸に広がっていった。
p168
 
ドライアイスから溶け出る霧のように、胸に曖昧な不安が広がっていった。
p195
 
 
 
また、自己憐憫 (悲劇のヒロイン) のような複雑な感情を、こう描写したりもしています。
 
自分のことを可哀相だと思う瞬間の、この甘いような、鼻の奥がちりちりするような感覚
p93~94
 
 
 
感情という抽象的な概念を具体化して言語化する能力は、学ぶべきところが沢山ありますね。
 
 

琴線に触れた表現

 
このような家族構成を見ると、とかく子供たちを憂慮しがちです。
 
しかしながら、親たちだってさぞ大変でしょう。
ここまで特殊なご家庭が日本にどれだけ存在するか分かりませんが、自分がその立場にたったとしたらやっぱり辛いですね。
 
そういった意味で、物語中盤の「継母の里江さん」と「圭介」のやり取りは、やはり印象的でした。
 
見ていてとてもつらい描写ですが、私個人としてはあのやり取りこそが「家族とは何か」を突きつけられるシーンだと感じます。
 
 
 

書籍の紹介文章

 
家族とは何だろうか。
戸籍上の血縁関係だけが、その証明になるのだろうか。
 
両親を亡くして継母と暮らす圭介と辰也。
同じく、継父と暮らしている楓と蓮。
彼らは、新しい家族の形に戸惑いを抱きつつも、かわらない日々を過ごしていた。
しかし、それも限界を迎える。
 
龍が荒れ狂うような台風が襲ったある日、蓮は継父の殺害計画を立てた。
その計画は思わぬ展開を見せ、物語は予想外の方向へと向かっていく。
 
そして、辰也は圭介に言う。
『母さん、龍になったんだぞ』
『誰かを恨みながら水の中で死ぬと、龍になるんだ』
 
両親を失った彼らだからこそ導ける、家族の再定義。
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