近年では、「犬と飼い主」の関係性は人の母子間に類似したものとも考えられ、多くの研究が行われています。
それに伴い、「犬のもたらす健康効果」も注目されており、犬が人の生理学的な健康効果をもたらすことが分かってきました。
 
この記事では、「犬」「飼い主」『オキシトシン分泌』『自律神経活動』に影響を及ぼすかを検証した研究を紹介します。
 

■文献情報

〇題目

Effects of Human–Dog Interactions on Salivary Oxytocin Concentrations and Heart Rate Variability: A Four-Condition Cross-Over Trial
 

〇著者

Lauren Powell, Kate M. Edwards, Scott Michael, Paul McGreevy, Adrian Bauman, Adam J. Guastella, Bradley Drayton & Emmanuel Stamatakis
 

〇雑誌

Anthrozoös, 33:1, 37-52, DOI: 10.1080/08927936.2020.1694310
 
 

■研究概要 (序論~方法) 

〇背景

 
犬を飼育することが人を健康することは広く知られている。
そしてその健康効果の根底には、「オキシトシン」「自律神経活動」の変化があるといわれている。
 
このオキシトシンは、ストレス反応、そして自律神経活動を抑えるようなストレス緩和効果ことが知られている。
また、他者との関係性を構築するような社会的な行動との関連性も報告されており、飼い主と犬の「愛着的な関係性」の構築にも関与していることも考えられている。
 
さらに、犬とその飼い主を対象にした研究では、「犬の散歩」といった身体的活動における「自律神経活動」を対象にした実験がいくつも行われ、「犬と散歩をすると副交感神経が活性化する」ことも知られている。
 
しかし、「オキシトシン」と「自律神経活動」の両面に着目しつつ、「飼い主と犬の愛着的な関係性」との関係性を考慮に入れた研究は行われていない。
 

〇目的

 
犬との一般的な関わりである「散歩」「ふれあい」がもたらす、人の唾液中オキシトシン濃度と、自律神経活動への影響を調べること。
 
また、それらの影響と「人と犬の愛着の強さ」に関係があるのか検討すること。
 
 
 

〇被験者情報

 
29組の犬とその飼い主
 

〇評価方法

 
「実験の前後」のタイミングで唾液を採取し、オキシトシン濃度を計測する。
また、自律神経活動も、実験の前後の値を計測する。
 
また、愛着レベルは、「Monash Dog Owner Relationship Scale (MDORS)」を用いて評価された。
 

〇実験・調査方法

 
実験の条件は4つ。
 
「犬と一緒に歩く」
「犬なしで1人で歩く」
 
「犬と触れ合う」
「犬なしで休憩する」
 
それぞれの条件は、約15分間行われた。
 

■研究概要 (結果~考察)

〇メインで得られた結果

 
オキシトシンは、条件間で違いは見られなかった。
 
自律神経活動は、「犬と一緒に歩く」「犬なしで1人で歩く」の両方の条件の時、数値の減少が見られた。
 

〇面白い・特筆すべき結果

 
犬との愛着レベルが低い飼い主は、「犬なしで1人で歩く」と比べて、「犬と一緒に歩く」方がオキシトシンと自律神経変動が高かった
さらに、「犬なしで1人で歩く」条件と比べて、「犬と触れ合う」ことの方がオキシトシンが高かった。
 

〇筆者の意見・主張

 
オキシトシン自律神経変動における、一貫性のあるパターンは見られなかった。
しかし、犬とその飼い主の愛着関係の強さによって違いがあり、愛着の少ない飼い主でより大きな変化が見られた。
 
今後の研究では、もっと長期の健康状態との関連性を見る必要もあるといえる。
 
 

■感想と転用

〇 逆かと思った

 
愛着的な関係性が強い「犬と飼い主」ペアの方が、より大きな生理学的な反応が生じそうな気もするのですが、反対なのは意外でした。
 
ただ、著者は「愛着に問題を抱えている人は、犬とのかかわりから影響を強く受ける」という過去の研究と類似した結果だ、と主張しています。
だからこそ、愛着の低い飼い主が、犬とのかかわりで大きな影響が生じたのだと。
なるほど、逆の考え方でしたね。
 
なんにせよ、生理学的な反応の評価はとても難しく、実験の条件や実施プロセス、 (オキシトシンに関しては) その定量化方法によって大きく影響を受けます。難しい実験系ですね、、。
 

〇 知見が沢山

 
私の研究分野とかなり近い内容だったので、ものすごく勉強になりました。
 
Polarによる心拍変動解析の測定タイミング・方法などは私の認識していない部分があり、勉強不足を実感しました。
また、オキシトシン計測にはENZO社の物を使っており、私の活用している物とは異なるため、そこも参考になりました。
 
猫だと実験系が多少異なってきますが、私の実験の修正に活用したいと思います。