猫の福祉

餌を食べる時にヒゲが邪魔!?|「ヒゲに優しいエサ皿」を使うことで、猫のストレスは改善されるか?

猫のひげは重要な感覚器官であり、猫の生活には欠かせないものです。
 
われわれ猫好きからすると、いろんな方向に揺り動くヒゲは猫のかわいさを引き立たせる要素であるといえます。
部屋に落ちていたら『良く分からないけど何らかの記念』として取って置く人もいるくらい、不思議な魅力に溢れた物質です。(私も保管したりします)
 
そんなヒゲが、猫のストレスを和らげるための重要な要素になるかもしれない、そんなことに着目した研究が行われました。
 
この記事では、「『ヒゲが当たりづらい (ヒゲに優しい) エサ皿』を使うことで、猫はご飯をたくさん食べるようになるか?」を検証した研究を紹介します。
 
 
 

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犬猫のダイエット大作戦|肥満のリスクとその対策方法

みなさんが飼っているペットは、健康ですか?
適正体重を維持できてますか?
 
人と同様にペットも、「肥満」は健康を害する疾患の一つです。
 
ペットの食事管理はすべて飼い犬がコントロールしているため、飼い主がペットの体重管理をすることは義務であると言えます。
 
この記事では、ペットが肥満になったときの「ダイエットの流れ」「大事なポイント」を解説した、海外の記事を紹介します。
 
 
 

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猫は棚が好き?|猫のストレスを軽減して、福祉を向上させましょう

猫は、体の大きさや社会性の高さから、多頭飼育が可能な動物であるといえます。
一方で、完全な集団形成をする動物ではなく、明確な序列も存在していません。
 
多頭で猫を飼育している場合、猫の間での「ケンカ」は頻繁におこります。
 
この記事では、猫が隠れられるような「棚」を設置することで「猫のケンカ」が減るか否かを調べた、環境エンリッチメントに関する研究を紹介します。
 
 

■文献情報

〇題目

Effect of a shelf-furnished screen on space utilisation and social behaviour of indoor group-housed cats (Felis silvestris catus)
 

〇著者

Emma J. Desforges,Alexandra Moesta,Mark J. Farnworth
 

〇雑誌

Applied Animal Behaviour Science 178 (2016) 60–68
 
 

■研究概要 (序論~方法) 

〇背景

 
研究室で飼育されている猫の飼育環境は制限的であり、彼らの福祉に影響を及ぼすかもしれない。
環境エンリッチメントは彼らの福祉をより良くするかもしれないが、その効果に対する信頼性や評価はめったに行われない。
 

〇目的

 
この研究は、集団で飼育されている研究室の猫たちの「敵対的な行動」「親和的な行動」が、「家具 (棚)」の有り無しによって変化するかを調べること。
また、その棚によって出来た「上下空間」の利用の有無についても調査すること。
 

〇被験者情報

 
 
研究室で飼育されている29匹の猫
部屋は4か所あり、それぞれ8,7匹の猫たちが共同生活しており、それぞれの部屋を順々に実験していった。
 

〇評価方法

 
データ採取は「ビデオ」によって行われた。
「棚の空間利用」の割合は、8か所に設置されたビデオから10分ごとに写真が撮られ、そのデータが解析に用いられた。
「敵対的および親和的な行動」の頻度は、1日ごとに30分のエピソードを6回の合計3時間分のデータが、解析に用いられた。
 

〇実験・調査方法

 
 
実験は3つのフェーズに分けられた。
 
通常期間」2日
テスト期間」4日
再通常期間」2日
 
この「テスト期間」の間、猫の飼育部屋に「猫たちが初めてみる家具 (棚)」が設置された。
棚 (IKEA製) は縦横150㎝ずつ、奥行きが40㎝ほどの大きさ。
前面と後面に、猫が休めるような広さの空間が8か所ずつ (合計16か所) 用意された。
 
 

■研究概要 (結果~考察)

〇メインで得られた結果

 
 
全ての期間において、敵対的な行動の発生は、「朝ごはん後」と比較して「朝ごはん前」により多く発生していた。
ただ、「棚の有無」は関係がなかった。
 
また、「朝ごはん後」に発生する敵対的な行動は、「通常期間」よりも「テスト期間」の方が少なかった。
 
「棚」を部屋から無くした際 (つまり「再通常期間」の際)、「通常期間」と比較して、「昼ごはん前」の敵対行動が増加した。
これが生じた理由は、「フラストレーション効果」もしくは「リバウンド効果」であると考えられる。
 

〇面白い・特筆すべき結果

 
親和的行動の発生は、「棚の有り無し」と関係がなかった。
 
一方で、「テスト期間」においては、「地面に体をつけている割合」が少なく「棚の空間利用の割合」が多くなっていた。
 

〇筆者の意見・主張

 
棚を部屋に設置することでできた「垂直方向の空間」は、隠れる機会を猫に提供します。
これは、猫にとって必要な空間である考えられ、それによって敵対的な行動が減ったことが伺える。
 

■感想と転用

〇 エソグラムを使った行動解析

 
エソグラムとは、直訳すると「行動目録」と呼ばれるものです。
これは、「その動物がどのような行動を示した場合に、それを『○○行動』とみなす」といった、いわゆる定義づけのようなものです。
 
この研究では「親和行動」「敵対行動」の2種類を観察しましたが、猫がどんな行動をしたらカウントするのかは、このエソグラムを基にしたようです。
(例) 猫が前脚で他の猫を引っ叩いたら「敵対行動」・しっぽを絡めながら他の猫と横並びで移動すると「親和行動」)
 
面白いですよね~。こうやって行動を細分化して定義づけして評価に用いるんですね。
エソグラム自体は、他の研究論文 を参考にしているようですね。
 
行動的な解析をする際にはすごく参考になる資料です。
 
 

〇 ごはん前の熾烈な争い 笑

 
「朝ごはん前」は「朝ごはん後」よりも敵対行動が多い、というのが面白かったですね笑。
やはり、食料資源を確保するためには、争いは避けて通れないよう、、笑。
 
「朝ごはん前」に関しては棚を置こうが関係無いようでしたが、その他の場面 (昼ごはんなど) では棚は「敵対行動」を減らすのに役立っているようですね。
 
当研究室はまだまだ猫の数が少ないですし、個別の3段ゲージ内で餌をあげているため争いはありません。
ただ、今後ネコの数が増えていったときは、考慮すべきポイントかもしれません。
 
また、多頭飼いのご家庭の方々も、「猫の喧嘩が絶えない」ような場合には、猫専用の棚をふやすのはいかがでしょうか。

猫の顔の匂いでストレス軽減?|猫が落ち着くフェロモン液体 (Feliway フェリウェイ) とその効果

猫の飼い主さんにとって、そしてその猫ちゃんにとって、動物病院はストレスを感じやすい場所であるといえます。可能な限り、猫ちゃんのストレスを緩和することで、よりスムーズに診療を行えることを願うばかりだと思います。
そしてその願いは、実際に診療を行う獣医師の方々も同様です。
 
この記事では、猫の顔から分泌されるフェロモンを用いることで、猫の診療時のストレスを和らげることが出来るのかを検証した論文を紹介します。
 
 

■文献情報

〇題目

Improving the feline veterinary consultation: the usefulness of Feliway spray in reducing cats’ stress
 

〇著者

Pereira, J. S., Fragoso, S., Beck, A., Lavigne, S., Varejão, A. S., & da Graça Pereira, G.
 

〇雑誌

Journal of Feline Medicine and Surgery,(2016) 18(12), 959–964.
 
 

■研究概要 (序論~方法) 

〇背景

 
動物病院は、多くの猫にとってストレスを感じやすい環境です。
そのストレスを少しでも緩和するための方法として、匂い成分を用いる方法が知られています。
 
猫の顔面の臭腺には5種類のにおい成分 (F1~F5) があると言われています。
その内のF3成分は、猫の行動や生理的な部分に変動をもたらし、いわゆるストレス緩和の役割を果たすことが知られています。
そのF3成分を人工的に作って商品化したものが、Feliway(フェリウェイ) と呼ばれるものです。
 
 
 

〇目的

 
Feliwayが、動物病院診療時の猫のストレスを緩和し、ハンドリングがしやすくなるかを確かめること。
そして、飼い主と獣医と猫、この3者の関わり合いを手助けし、猫の福祉を向上させるための方法を考えること。
 

〇被験者情報

 
26週齢 (半年) 以上の猫87匹
 

〇評価方法

 
猫のストレス状態を測るために、以下の指標を用いた。
 
・キャットストレススコア (CSS)
→ 猫の体の部位の状態から、ストレス状態を7段階で評価
 
・ハンドリングスケール
→ ハンドリングのしやすさを、5段階で評価
 
どちらも、数値が低い方がストレスも低いということになる。
 

〇実験・調査方法

 
「Feliwayを散布した診察台」
「プラセボ (偽薬) を散布した診察台」
 
の2種類を用意し、それぞれの台での診療中の猫の様子を観察した。
 
 
 

■研究概要 (結果~考察)

〇メインで得られた結果

 
Feliwayを散布した診察台を用いた時の方が、CSSの数値が低かった
ハンドリングスケールも、数値は低いものの、統計学的な有意差は見られなかった。
 

〇面白い・特筆すべき結果

 

飼い主が「ハンドリングしやすい」「いつもよりリラックスしている」と回答した割合は、Feliwayを散布した台を使用した場合の方が多かった。
 

〇筆者の意見・主張

 
Feliwayは、診療時の猫のストレスを緩和し、より診療をスムーズにするといえる。
液体を散布するだけなので実施が非常に楽であり、活用がしやすいものといえる。
 

■感想と転用

〇 厳格な調査

 
この研究では、プラセボ群を用いた2重盲検法を採用しています。
つまり、診療する獣医師も、飼い主さんも、実験者も、「その診察台に散布された液体がFeliwayかプラセボかを誰も知らされていない」ということです。
主観が入りやすい行動評価において、この実験デザインは必須なのかなと思います。
 
行動観察としては素人の飼い主さん (猫の様子に関しては玄人だけど) の目線でも、猫の行動の違いを検出できたっていうのは、Feliwayの効果の高さが伺えます。
 
 

〇 誰でも・いつでも・どこでも

 
著者も言っていますが、「スプレーするだけ」なので使用方法がとても簡単です。子供でもできます。
そして、主観が混じりやすくて方法にブレが生じやすい定性的な手法 (猫に向かってまばたきをする・優しく声を掛ける、とか) とは違い、客
 
また、猫側へのアプローチ (猫の首根っこをつまんでおとなしくする、など) でもなく、あくまで環境側へのアプローチになりますので、その点もより猫の福祉の向上に準じた手法なように感じます。

猫の爪とぎの好みは、あの形だった!?|猫のストレスを小さくし、問題行動を減らそう!

■文献情報

〇題目

Preference of kittens for scratchers.
 

〇著者

Zhang L, Plummer R, McGlone J.
 

〇雑誌

J Feline Med Surg. 2019;21(8):691‐699. doi:10.1177/1098612X18795258
 
 

■研究概要 (序論~方法) 

〇背景

 
猫を飼っている人ならご存知の通り、猫はとっかかりやすい表面の物体に爪とぎをする習性がある。
爪とぎは、「爪の手入れ」「マーキング」「体のストレッチング」等の様々な役割があるが、時と場合によっては、飼い主を悩ませる問題行動になる。
 

〇目的

 
仔猫の、爪とぎの好み (形と匂い) を調べること。
 

〇被験者情報

 
8週齢よりも幼い仔猫40
 

〇実験・調査方法

 
2種類の爪とぎを部屋に設置し、仔猫を1匹づつ部屋に入れ、10分間の行動をビデオにて観察する。
どちらで爪とぎする時間が長いかを確かめた。
 
爪とぎの形の種類は「S字」「平面」「立体 (柱型) 」など様々。
匂いの種類は、「キャットニップオイル」「キャットニップの苗木や葉」「猫の毛 (化学的匂い物質) 」など。
 

■研究概要 (結果~考察)

〇メインで得られた結果

 
S字型の段ボール製爪とぎ」が最も人気だった。
 
 
 
 

〇面白い・特筆すべき結果

 
あまり匂いには影響されておらず、顕著な違いは見られなかった。
 

〇筆者の意見・主張

 
匂いに反応しなかったのは、まだ幼く発達過程であったから (オピオイド受容体のシステムの未発達) によるものではないか。
 
 

■感想と転用

 
垂直方向のようなポールが人気かなと思っていたので、S字シェイプは意外でした。
実際、過去の研究ではポールが人気だったらしい。
たぶん仔猫じゃないけど。あと、アンケート調査。
Moesta, A., Keys, D., & Crowell-Davis, S. (2018). Survey of cat owners on features of, and preventative measures for, feline scratching of inappropriate objects: a pilot study. Journal of Feline Medicine and Surgery, 20(10), 891–899. https://doi.org/10.1177/1098612X17733185
 
ただ、実験の条件設定が難しく、なかなか断定はできないようですね。
 

〇 こんな研究あるんだ(笑)

 
猫の爪とぎの好みを調べよう!と思った人、めっちゃ面白いな。
福祉には直結するとっても大事な着目点なのに、意識したことありませんでした。

〇 成猫版は?

 
たしか以前、成猫でも似たような実験の記事を見た気がします、、。見つけたら、また記事に投稿しようと思います。
体の大きさの違いから安定感も変わってくると思いますし、違った結果が見られるのかなと思います。 (体重いからポール状の物を好むのでは、、?) 
オピオイド受容器官も発達しているため、結果は違ってくるだろうと思いますし。
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