輪読会とは?読みたい文献と出会うための「検索方法」

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学術論文を探す方法はたくさんあります。ただ、やり方を間違えると上手に探すことができません。

この記事では、輪読会で使用する「学術論文」を見つけるための方法を解説します。輪読会に関わらず、文献検索は研究活動の各場面でひつようになってくるものです。

効率的な検索方法をおぼえて、無駄な時間を削減しましょう。


もくじ

1. 探す前の心構え

兎にも角にも「研究目的」「論文目的」

まず最初に、「あなたの興味がある研究分野」を特定してください。ここが定まらないと、文献探しは始まりません。何に興味がありますか?何を知りたいですか?言語化して文章化してみましょう。

その上で、2種類の考え方を取り入れて欲しいです。それは、「論文目的」「研究目的」を意識することです。

論文目的は分かりやすいです。「その論文がどんな結果および考察を示したいか」になります。みなさんが論文を探す時にメインとしてる部分です。

一方、研究目的は「その研究は誰を幸せにしているか」という発信性の高いメッセージ部分だと思ってください。私で言えば「人と猫のより良い共生社会の実現」みたいな内容がそれに該当します。「論文目的のその先 (こんな目的で実験して、その結果をもとに、、〇〇と主張したい)」みたいなイメージです。

実はここ結構重要です。なぜかというと、論文が見つけやすくなるからです。

キーワード選定が肝要

文献検索の肝は「キーワード選定」になります。ゆえに、検索するキーワードが間違っているだけで、自分が読みたい文献がヒットしなくなります。

では、そのキーワードはどのように考え出すかというと、「具体化と抽象化を繰り返す」ことで生み出します。

たとえば、「猫の利き手」というテーマの文献が欲しかったとしましょう。このテーマであれば、「論文目的」は『猫に利き手はあるか』や『利き手は性別によって異なるか』などになります。これだけでも出ることには出ますが、アイデアおよびキーワードは広がりづらいです。

そこで「研究目的」を考えてみます。「猫の利き手」を探る論文の「研究目的」とは何でしょうか?おそらく「猫のQOLの向上」が一つかなと思います。なぜなら、利き手が分かれば「利き手側の筋肉をほぐすようにマッサージした方が健康になる」かもしれないし、「利き手の方向にオモチャを振ったほうが反応がいい」かもしれない、と、この様に考えられるからです。

・・・ただ、さすがにここまで発展的な考察だと、論文自体には記載がないかもしれません。なので、大切なことは何かというと、「思考や捉え方が広がる」、つまり「抽象化できた」という点です。

「抽象化」できると、キーワード選定の幅が広がります。もし仮に、あなたが「猫のQOL向上」を「研究目的」にしたいと強く思っていたのであれば、別に「他の論文目的」でもいいはずです。例えば、「猫へのマッサージ効果を検証した研究」「猫の遊び反応を高めるための研究」など、こっちの方が、あなたの興味をそそる研究なのかもしれません。

こんな感じで、論文における抽象的な「研究目的」を考えてみると、キーワードの選択肢が増えます。その結果、自分の興味のある文献が見つかる確率が高くなると考えられます。だから「目的」を意識してほしいということです。

では、目的を意識した上で、実際にどのような方法で文献を探せば良いのかを説明します。

2. 探すときのコツ「横に広げて縦に掘る」

以下は、論文を探すときの「考え方」のイメージ図です。

私は、文献を探す時には『方向性』があると考えています。

横方向というのは「並列的な検索」です。具体的に言えば、以下のものたちです。

①Web記事・雑誌記事
②書籍
③論文紹介コンテンツ (サイト・ブログ・Youtubeなど)
④知識のある人から教えてもらう
⑤学術雑誌
⑥Google scholar

上記これらの検索により、みなさんはまず、「とっかかり論文」を見つけてください!「とっかかり論文」とは、自分の興味のある研究分野を知る「きっかけ・入口」になる論文のことです。

そして「とっかかり論文」が見つかったら、今度はで掘ります。縦というのは「直列的な検索」であり、引用参考文献を探す方法のことを言います。

うちの研究室のゼミでは「横方向」の⑥しか教わってないと思います。しかし私は、「横方向に探して、縦方向に掘る」が参考文献を探すコツだと思っています。特に縦は、「卒論の序論作り」で重宝すると思います。

なのでまず、「横方向の検索」を解説します。

【横方向の検索】「とっかかり文献」を見つける

私は、「自分が欲しい英語論文を『Google scholar』から見つける」って、割と「難易度の高い作業」だと思っています。

特に学部生の時分では、学術論文に慣れておらず、「検索するためのワード(専門用語・よく使われる表現)」を知りません。では、それをどうやって知ることができるのか。それは、「その研究分野の論文をたくさん読むこと」です。笑

「服を買いに行くための服がない」
「お金を稼ぐためのお金がない」

なんて言ったりしますが、これって言い得て妙だと思います。学術論文も同じだと思っていて、「学術論文を見つけるために『読むべき学術論文』を知らない」みたいな感じですかね。なんにせよ、つまり、学部3年生のノー知識な状態で「自分が真に知りたい文献を見つける」のは結構難しいということです。

文献検索は、地道にやるとものすごく時間がかかります。そこでの苦労はどう考えても必要のない努力です。真っ先に削減すべきコストだと思っています。

そこで私は、自力で頑張ろうなんてせず、①②③④で探すことを提案します。

①Web記事・雑誌記事

LINEニュースで話題になってる研究とかで全然いいと思います。「ナショナルジオグラフィックス日本版」「東洋経済オンライン」などなど、ネットにゴロゴロ転がっています。うさんくさいサイトもあるので全部ではありませんが、その情報の元となった「学術論文」が記載されていることがあります。それを輪読会で使えば良いです。

まずGoogle scholarではなく、普通のGoogleでググりましょう。

②書籍

これも良いです。特に「海外の著者」が執筆した文献は、巻末にキチンと元となった原著論文が記載されていることが多いです。また、その本のテーマの研究がたくさん記載されていますので、かなり深い知識が得られます。

しかしながら、書籍だとどうしても「最新性」が薄くなります。なんでかというと、書籍は出版まで時間がかかるからです。英語の書籍であれば、なおさら古い文献が記載されています。少し留意しましょう。

③論文紹介コンテンツ (サイト・ブログ・Youtubeなど)

これは、1番グレーに思われがちです。が、1番おすすめです。「子猫のへや」「子犬のへや」の「ニュース一覧」ページを読んでみてください。このサイトでは、英語の学術論文をかなり細かく書かれており、度肝を抜かれると思います。「カラパイア」「マランダー」などのポピュラーサイエンス的な記事も、おのおのの記事によりますが、良い参考になると思います。

最近ではYoutubeなどの発信もあります。メンタリストDaiGoさんのチャンネルくらいしか私自身は知りませんが、調べてみれば見つかるかもしれません。

④知識のある人から教えてもらう

先生や院生に聞きましょう。「自分で調べなさい」と言われたら無理ですが笑。少なくとも私なら、「知っていれば」すぐ教えます。探してる時間は無駄なので。

上記①②③④の良いところは、「その論文の概要を日本語でまず知れる」という点です。これは、ズルでもなんでもなく、効率的に知見(既知)学ぶためのノウハウです。

⑤学術雑誌

ここからは、論文をそのまま探す方法です。この研究分野で言えば、以下のものが参考になると思います。

Anthrozoös 人と動物の関係学
Animal Behaviour 動物の行動
Animal Cognition 動物の認知

どの雑誌もオープンアクセス、いわゆるネット上で閲覧できる文献もありますが、紙じゃないと閲覧できないものもあります。ただ、我々の研究分野に近しい雑誌なら、自分の見たい文献がヒットする確率は上がると思います。

また、紙の雑誌はなく、電子ジャーナルと呼ばれるオンライン上のみで発刊しているものもあります。

scientific reports サイエンティフィックリポート
Plos One プロスワン
frontiers フロンティア

これらのジャーナルは、全てオンライン上でオープンソース (誰でも見れる仕様) になっています。ゆえに、「アブストはいい感じなのに全文見れない~~」みたいな悲劇はないので」安心ですね。

一方、電子上のメガジャーナルであるがゆえに、「自分の読みたい文献領域」を遥かに凌駕する量の文献が記載されています。ここから「自分のほしい論文をさがす」のは、ちょっと非効率ですね、、。

RSSリーダーも効率的です。大学院生になりたい人は必須ですが、「Feedly」での情報収集がおすすめです。参考資料→「Feedlyとは?時短情報収集に不可欠なアプリの使いこなし方」

⑥Google scholar

検索サイト自体は色々あると思いますが、メジャーなGoogle scholar(スカラー)でいいんじゃないかと思います。検索の仕方のコツとしては、「絞る」ことだと思います。

  • 年代を絞る

  • ””を使った「キーワード検索」から“固有名詞”で絞る

方法は、上記2個くらいで十分だと思います。

まず、検索するときは年代を新しいものに絞りましょう。検索画面の左側にボタンがあるので、「2016年以降」くらいでいいと思います。そして、熟語になっている固有名詞は、ダブルクオーテーション””で括って検索しましょう。こうすると、その””内の単語が「必ずその順で載っている」論文がヒットします。

で、ここで重要になってくるのが、「検索ワード選定」です。これはもう、調べるしかありません。「猫の利き手」がテーマなのであれば、『猫 英語』『利き手 英語』などでググりましょう。

ただここで注意すべきことが、カジュアルな英語とフォーマルな英語かどうかです。カジュアルだと、Google scholarで検索をかけてもヒットしません。一方で、どれがフォーマルなのかは、前述の通り、その分野の学術論文を読み漁らないとわかりません。

よって、ここは数撃ちゃ当たる戦法で、様々なキーワードを当て込んでいきましょう。

多くの人はここで「自分が真に読みたい論文」の検索を諦めます。たしかに時間はかかります。だからこそ、①~④の方法で探すのをおすすめしているのです。

 

では、上記の横方向の検索で「とっかかり論文」が何とか見つけてください。そしてその論文が「自分の知りたかった論文」だったのであれば、もう問題はありません。読み始めてください。

一方、「少しズレている」場合や、「これから序論を書くための既知の参考にしたい」などの場合は、検索を続ける必要もあります。そのときようやく、「縦方向」に掘ります。

【縦方向の検索】「とっかかり文献」を拡げる

これら縦作業のメリットの一つ目は「自分が欲しい文献を見つけるための効率が高い」ことです。

研究活動は「たくさんの既知」の上に成り立っています。つまり論文中には「その研究分野でこれまで明らかになってきたこと」がまとめて記載されているはずです。たとえその「とっかかり論文」自体が「自分の欲しい文献じゃなかった」場合であっても、その論文の中から「自分の欲しい文献」を見つけられる可能性が上がります。これはおそらく、横方向の検索よりも楽です。

縦方向の検索には2種類あります。

 

①下方向(過去)の検索「参考引用文献」

これは分かりやすいと思います。文献の中で、特に「序論」と「考察」の中で使われている「参考引用文献」です。過去の文献にはなりますが、あなたが知りたい情報がてにはいるかもしれません。

②上方向(未来)の検索「参考引用文献にされた文献」

今度は①の逆です。「そのとっかかり論文を『参考引用文献』として活用している、『より最新の文献』」です。

確認の仕方は簡単で、Google scholarを使います。ますその「とっかかり論文」を検索して探します。そして、タイトル部分の下部にある「引用元」というボタンを押します。そうすると、一覧で結果が出てきます。

実はこの「上方向の縦検索」が最良の文献の掘り方です。

新しさが正義

さきほど説明したとおり、研究は常に新しいものが優遇されます。なぜかというと、研究は「過去の知見を参考にして『より発展した知見』を求める」という本質を持っているからです。Google scholarのトップページに記載されてある『巨人の肩の上に立つ』とは、まさにこのことから来てます。

縦方向で論文を探すと、常に新しい文献を目にすることが出来ます。自分の卒業論文に関係ある領域の「最新論文」を捕まえましょう。

一方、論文の種類には留意する必要があります。

なぜレビュー論文はダメか

研究論文にはたくさんのタイプが存在します。

みなさんがこれから行っていく「卒業論文」のように、「学位」を求めて作成する長大な「学位論文」

特定の研究領域の文献をかき集めて総合的な考察を述べる「レビュー論文」

得られた研究結果を簡易的にいち早く発表する「Short Communication」

ウチの研究室では、Full paper・Original Article といった、「スタンダードな学術論文」が推奨されています。理由はいくつかありますが、「みなさんがこれから行う『卒業論文』の作成に一番役立ちやすいから」だといえます。

「レビュー論文」は著者が実際に調査をしてるわけではないし、「学位論文」は内容が長大すぎて読み解くのに時間がかかります (あと、著者が学生ですしね)。

なるべくコンパクトに研究がまとまっていて、なおかつ参考にすべき内容を手に入れやすい、のがFull paper・Original Article等になります。

みなさんは、論文の種類にも留意しましょう。


論文検索は、はまると沼のように抜け出せなくなります。私も下手な方ですが、日々、効率的に探すよう心がけています。みなさんも、この無駄な時間を1秒でも消せるように尽力しましょう。

では次の記事で、「文献を見つけたは良いものの、どうやって英語を読み込めばいいの~~」という疑問に答えていきます。

 

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