猫は子供たちのメンタルに「悪」影響をもたらす?|猫の健康効果に対する批判的な見解とは?

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猫ちゃんを飼っている人は、「猫が我々に健康効果をもたらしている」と強く実感する人が多いかもしれません。
しかしながら、猫が必ずしも人を健康にするとは限りません。
 
猫が人にどのような影響を及ぼすかは、「時」「場所」「場合」など、さまざまな要因によって左右されます。
 
この記事では、猫が人にもたらす健康効果を批判的に評価している記事を紹介します。
 
いつもとは異なり、学術論文ではなく、サイトの記事をとりあげます。
 
 
 
もくじ

■文献情報

〇記事のタイトル

Do Children with Cats Have More Mental Health Problems?
Researchers explain why there are so few studies of human-cat relationships.
 

〇著者

Hal Herzog
 

〇記事名

Psychology Today 2018
 
 

■猫がもたらす人への悪影響

〇 猫研究のこれまでの背景

 
猫は代表的なコンパニオンアニマルであり、アメリカではその飼育頭数は犬を上回っている。
にもかかわらず、「犬と人の絆」に関する研究と比べて、猫を対象にした研究は非常に少ない。
 

〇 一貫性のない猫の研究結果

 
複数の研究結果は、ポジティブなものであったり、はたまたネガティブなものであったり、さまざまである。
 
研究① 「猫の飼い主は運動量が低く、メンタルクリニックの利用率が高い
研究② 「猫の飼い主は心血管疾患で死亡する可能性が低い
研究③  「心血管疾患にかかった猫の飼い主は、死亡率も再入院率も高い
研究④ 「猫を飼っている女性は酒飲みが多い
研究⑤ 「猫を飼っている高齢者は、慢性疾患が増えやすい
 

〇 子どもへの悪影響

 
ペットを飼育している子供たちを対象に行った大規模調査では、を飼っている子供は以下の健康効果が見られた。
 
「運動量が多くBMIの数値が低い」
「精神疾患の有無」
「不安傾向が低い」
 
一方では、以下の結果が見られた。
 
「精神疾患と診断された数が3倍高い」
 
 
 

■ なぜこんなネガティブな結果がでたのか?

〇 可能性1 

 
1つの可能性は「猫の『何らかの要素』」が子供の心理面に悪影響を及ぼしているということ。
ただし、この『何らかの要素』は、現在明らかになっていない。
 
ただ、ある研究者は、猫が媒介するといわれている「トキソプラズマ」による物ではないかと主張している。
 
このトキソプラズマに感染すると、注意状態を含む精神疾患にかかる可能性が高まることが知られています。
 
ただ、こちらもただの仮説であり、「猫」「トキソプラズマ」「精神疾患」の3者の関係性を正確に研究した論文はありません。
 

〇 可能性2

 
もう1つの可能性は、「猫自体には無関係な要因」によるものではないか、ということだ。
 
例えばある研究は、「猫を飼っている成人は、犬の飼い主よりも、ポジティブな感情、さらに誠実性という性格傾向が低い」ということを示した。さらに、「ネガティブな感情、さらには神経症的傾向が高い」ということも示した。
 
可能性は低いが、もしかしたら、「猫と暮らすことを選択した『大人』の育てている子供が精神疾患を抱える可能性が高い」という事なのではないかと推測できる。つまり、因果関係の向きが逆なのである。
 

〇 可能性3

 
最後の可能性は、実験の統計的な結果によるもの、ということ。
つまり、偶然によるものではないか、ということだ。
 
 

■ なぜ猫の研究は少ない?

 
なぜ猫の研究が少ないのか、猫研究の専門家3名に理由を聞いてみた。
 

〇 Carri Westgarth (リバプール大学)

 
資金面の問題ですね。
犬が身体面に影響をあたえ、それと同時に精神面にも影響を与えることはとても明白です。
それは、資金提供者に、支援する重要性と理解を与えます。
 

〇 Mikel Delgado (カリフォルニア大学)

 
1つは、やはり資金面
犬の研究は、動物介在療法といった医療系に寄ったものがおおく、国の機関などから資金源を受けられることが多い。
「セラピーキャット」のような活用の少ない手法よりも、「セラピードッグ」を用いた研究の方が明らかにやりやすい。
 
もう1つの理由は、猫への認識だ。
猫は「非社会的」「独立性が高い」と認識している人が多く、いくつかの研究者にとって、猫と人の関係性を研究することの価値が理解されていないということもある。
 
さらに、猫を研究する学生が少ないのも理由の1つだろう。
 

〇 John Bradshaw (ブリストル大学)

 
犬の資金調達は、猫と比較して簡単だ。
犬はさまざまな機関で活用されており、社会的、政治的な影響力があります。
 
また、生物学的な理由も考えられる。
犬は人との愛着関係を持つため、「認知能力を調べる研究」や「複数の異なる条件の研究」にも適しています。
 
一方、猫は縄張り性の動物であり、特定の環境に愛着関係をもちます。
見知らぬ場所などでは実験が難しく、犬では可能であるような実験も猫では難しい
 
 

■感想と転用

〇 めちゃくちゃ格好いい研究者たち

 
私のようなアマチュア研究者も含め、「何かを実験して、評価して、解釈を下す」という一連の行為に従事している時、どうしても邪な考えが頭をよぎります。
それは「都合の悪いデータを見た時」に起こります。
つまり、「都合よく解釈したい」と思ってしまうことです。
 
しかし研究の重要な要素として「客観性」があります。つまり解析の段階でも「主観」を入れたプロセスは厳禁で、あくまで事実を正確に解釈することが求められます。
 
「猫飼育と子供の関係性」を研究した人も、最初はポジティブな影響を仮説に立ててたと思います。
しかし、ネガティブな結果が得られました。
こんな場合でも、しっかりと結果を論文としてまとめ、その結果を社会に発信したことはすごく格好いいです。
 

〇 どの側面を切り取るか

 
世の中に存在する事象の多くが、「白黒つけられない」物です。ある人から見れば思いっきり白だとしても、違う人が見たら薄っすら黒かもしれません。
 
何らかの事象に対して自分が敷いている価値基準の場所を「バランシングポイント」などと表現しますが、この「バランシング・ポイント」は無限に存在しており、重なり合う人の方は人類規模で見てもごく少数かもしれません。
 
得られた実験結果というのも、複雑なバックグラウンド実験の方法対象者実験プロトコル、、多くの要素から左右されまくった結果あらわれた事実です。
これを一義的に捉える方が難しく、メディアのように一側面を切り取って「あたかもその一側面が事実の解釈のすべてである」のように表現するのは危険な行為といえます。
著者のHerzogさんは記事内で、その点の危険さも強調しています。
 
メディアに限らず、結果そのものである「事実」と、それを主観的に捉えたあとの「解釈」を、ごっちゃ混ぜにしないよう心掛けることが、なにごとにも肝要かと思います。

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