ペットを飼っている子供は低血圧?|ペットが持つ生理学的な健康効果 (猫は、、)

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ペットの健康効果には、ざっくりと「心理 (精神) 面」「生理 (身体) 面」「社会面」に分けられます。

「心理面」「社会面」に関してはアンケート調査の活用がメインとなりますが、「生理面」ではそれが難しいと言えます。故に、非常に実験が難しいと言えます。
特に「子供」を対象にした実験では、更にその難易度が上がります。

この記事では、「ペットの飼育」が「子供の生理的健康効果」と関わりがあるかを調査した研究を紹介します。

 

もくじ

■文献情報

〇題目

Prenatal and postnatal exposure to pet ownership, blood pressure, and hypertension in children: The Seven Northeastern Cities study. 
 

〇著者

Xu, Shu-Li & Trevathan, Edwin & Qian, Zhengmin & Vivian, Elaina & Yang, Boyi & Hu, Li-Wen & Zeng, Xiao-Wen & Li, Meng & Zhou, Yang & Qin, Xiao-Di & Wenwen, Bao & Yuan, Ping & Zhang, Ya-Zhi & Wang, Jia & Zhang, Chuan & Tian, Yan-Peng & Nian, Min & Xiao, Xiang & Dong, Guang-Hui.
 

〇雑誌

Journal of Hypertension. (2016).35. 1. 10.1097/HJH.0000000000001166.
 
 

■研究概要 (序論~方法) 

〇背景

 
ペットが人の健康、特に血圧などの生理面に及ぼす影響は多く議論されています。
しかし、それらの多くは成人を対象にしており、子供を対象としたものは少数です。
 

〇目的

 
ペット飼育と子供の血圧に関係性はあるか調べること
 

〇被験者情報

 
5から17歳の子供9354人
ペットを飼育していた人は2127人で、犬の飼育者は482人、猫の飼育者は325人。
 

〇評価と実験方法

 
評価の軸は大きく2種類。
 
「収縮期 (最高) および拡張期 (最低) 血圧」
☞ 血圧は3回測定された
 
「高血圧」
☞ 判断基準は、「性別」「年齢」「身長」を基に割り出された基準値を超えるか否か
 
 
また、「飼育歴」「家庭内経済状況」「親の教育レベル」「受動喫煙」「家族の高血圧歴」などなど、解析で調整するためにさまざまな項目が調査された。
 
 
 

■研究概要 (結果~考察)

〇メインで得られた結果

 
ペットの飼育している人は、そうでない人よりも、「高血圧」の発症数も「血圧」の数値自体も、低い傾向にあった。
その傾向は犬の飼育者でより顕著であった。
 
 

〇面白い・特筆すべき結果

 
その他、「家庭内経済状況」などの様々な因子の影響を考慮した上での結果は以下の通り。
 
・「その子供の生後2年の間にペットが家庭にいたか否か」は、結果と無関係
・一方で、「現在ペットを飼っているか否か」では、飼っている子どもの方が高血圧の割合は低かった
・また、男児のみ、「生まれる前 (まだ母親の子宮の中にいる時) にペットが家庭内いた」方が「高血圧」の割合が少なかった
 
 
・「ペットの飼育」の有無で、「血圧の値」において有意な違いが見られたのは「女児」のみで、「最低血圧」が低いことが分かった
 
・動物の種類別で分けた時、すべての動物種 (犬・猫・鳥・牧場動物・その他動物) で血圧が低いことが分かったが、統計学的に有意な違いが見られたのは「犬」と「その他動物」のみであった。
 

〇筆者の意見・主張

 
ペットの飼育は、子どもの血圧の上昇を抑え、高血圧のリスクを下げることが分かった。
 

■感想と転用

〇 ものすごい数の大規模調査

 
48もの小中学校の子供たち9354人を対象って、えぐすぎますね。
この論文では過去に行われた「ペット」と「血圧」の関係性に関する研究を表でまとめてくれています。
そこで記載されている人数たちと比較すると、いかにこの研究の対象人数が多いかが分かります。
(過去の研究では多くて5000人くらい)。
 
子どもを対象にした実験は、実験の承諾などはご両親が関わってくるはずですし、成人よりも倫理的な配慮がとても大変だったと思われます。
研究のそういった準備部分を考えると、この人数に対する調査がいかにヤバいかが分かります。笑
 
ゆえに、すごく信頼性が高く、すごく価値がある研究です。
ゆえに、猫ではっきり結果が出ていないのが、すごく悔しい、、。笑
 
考察で述べられていますが、今回の調査で統計学的な差が見られたのは「犬 (482人)」と 「その他動物 (504人)」だけでしたが、その理由が「被験者の数」の可能性があります。
猫の飼育者は176名で、3倍近くの差があります。
 
この調査は中国で行われたようですが、中国は確か犬の飼育頭数の方が多いんですよね。
(日本を含めた他の先進国では、猫の飼育頭数が多い傾向にあり)
 
猫の飼育頭数ももう少し確保できるような地域だったならば、、と思うばかりです。
 
 

〇 過去の研究との差分

 
過去に5079人の成人に対して行われた研究では、ペットの飼育は血圧に影響を及ぼさず、最低血圧は高い傾向にあることが示されていたようです。
 
全文が見れないので考察は見れてないのですが、明らかに今回の結果とは逆ですね。
 
人数の規模を考えると、被験者の数とかは関係なさそうです。
子どもと成人の違い、なのか、、。
 
 
〇 最低血圧のが重要らしい
 
血圧には「最高 (収縮期) 血圧」と「最低 (拡張期) 血圧」の2種類がありますが、「高血圧」とのかかわりが深いのは後者の方のようです。
 
この研究の結果でも「最低血圧」でのみ有意な結果が見られていることから、結果の信頼性がさらに伺えます。
 
 
日本医事新報社

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