輪読会レポート 2019年6月26日 | 猫の頭と好み・ASD児と認知的柔軟性・肥満と認知症・猫の早期離乳と問題行動・警察犬の訓練・音楽の効用

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本日の輪読会は6題でした。

 

~~(=^・・^=)~~

題目1「In the Eye of the Beholder: Owner Preferences for Variations in Cats’ Appearances with Specific Focus on Skull Morphology Mark」

見る人次第だ:頭蓋骨形態に特に焦点を当てた、猫の見た目の多様性に対する飼い主の好み

J. Farnworth, Rowena M. A. Packer, Lorena Sordo, Ruoning Chen, Sarah M. A. Caney and Danièlle A. Gunn-Moore
Animals 2018, 8, 30; doi:10.3390/ani8020030

目的:

猫の頭蓋骨形状に対する人の嗜好性を定量化すること。

方法:

1239名の猫の飼い主に対して、アンケート調査を行った。
10種類の猫の写真を準備し、11段階で嗜好性を評価してもらった。
写真は、頭の形状「長頭症 (Dolichocephaly:DC) と短頭症 (Brachycephaly:BC)」、毛の長さ「短毛と長毛」などの要因を変化させて、比較している。

結果:

頭の形状としては、中程度の大きさが最も好まれ、極端なBCはもっとも低い評価を受けた。
また、中程度の毛の長さが最も好まれ、目の色は緑色が好まれた。

BCの猫を飼育している飼い主はBCの猫に高い嗜好性を示し、DCの猫を飼育している飼い主はDCの猫に高い嗜好性を示した。

アジアに居住している回答者は、比較的BCおよびDCの猫の嗜好性が高かった。

虎太郎所感:

非常にスタンダードな結果が出ましたかと思います。
飼っている猫の形状を好みであることは当然であるかと思います。

 

題目2「Neurobehavioral and Hemodynamic Evaluation of Cognitive Shifting in Children with Autism Spectrum Disorder」

自閉症スペクトラム障害児の認知的柔軟性の神経行動学的および血流動態的評価

Akira Yasumura, Naomi Kokubo, Hisako Yamamoto, Yukiko Yasumura, Yusuke Moriguchi, Eiji Nakagawa, Masumi Inagaki, Kazuo Hiraki
Journal of Behavioral and Brain Science, 2012, 2, 463-470 http://dx.doi.org/10.4236/jbbs.2012.24054

目的:

自閉症患者の認知的柔軟性 (Cognitive Shifting)を、実行機能課題を用いて評価すること。
そして同時に、前頭前野の活動を近赤外線分光法にて測定し評価すること。

方法:

次元変更カード選択(DCCS)を課題に設定した。
OEG-16を用いて、自閉症児14名と健常児20名の課題回答中の前頭前野の動きを測定し、比較する。

結果:

ASD群は健常児群と比較して、課題の正解数が少なく、反応時間も長かった。
ASD群は、活性しているchの数が少なく、対照群と比較して前頭前野の働きが低いことが分かった。
また、ASD群では特に4, 5chで有意な減少が見られた。

虎太郎所感:

こちらも非常にスタンダードな研究のように感じました。2012年なので少し古いからでしょうか。

 

題目3「Obesity and Longer Term Risks of Dementia in 65–74 Year Olds」

65~74歳の高齢者の、肥満と認知症の長期的リスクの関係性

KIRSTY BOWMAN, MADHAV THAMBISETTY, GEORGE A. KUCHEL, LUIGI FERRUCCI, DAVID MELZER
Age and Ageing 2019; 0: 1–6 doi: 10.1093/ageing/afz002

目的:

体重の減少と、長期および短期的な認知症の発症率を比較し、因果関係を検討すること。

方法:

イギリスの病院から健康診断データを収集し、比較した。

A群:健康者 (257,523名)
B群:非健康者 (161,927名) :喫煙者であり、がんや心不全などの症状を持っている

この2群に対して、10年未満 (短期) と10~15年 (長期) の時点での認知症の有無を追跡調査する。

結果:

A群は、短期的に見れば認知症の発症リスクが低い。
けれども、長期的に見ればリスクは高くなってしまう。
一方でB群では、短期的にも長期的にも発症リスクは低かった。

虎太郎所感:

この、A群とB群の、長期的側面におけるギャップは面白いと思いました。
すでに何か疾患を持っていたり、喫煙などで身体面の病因リスクを包含していると、体重がそもそも減少しやすいので、「体重の減少が認知症のリスク因子」なのであれば、肥満であった方がリスクが低いのは納得できるのかなと思いました。

あと、そもそも認知症になり始めた時点も分からないため、その時間的なその2点が、認知症のどのステージか、にも大きく左右されそうですし。

いずれにせよ、因果関係の特定が非常に難しい領域の研究なのだな、と感じました。

題目4「Early weaning increases aggression and stereotypic behaviour in cats」

猫の早期離乳は、攻撃性と常同行動を増加させる

Milla K. Ahola, Katariina Vapalahti & Hannes Lohi
Scientific REportS | 7: 10412 | DOI:10.1038/s41598-017-11173-5

目的:

早期離乳による、飼い猫の問題行動に及ぼす影響を明らかにすること。

方法:

40品種、5726匹の猫の飼い主を対象に、インターネットを通したアンケート調査。

結果:

早期離乳は、問題行動の数、見知らぬ人や他の猫に対する攻撃性、ウールサッチング (布などを噛んだり吸ったりしてしまう異食症の一種)を増加させてしまうことが分かった。

虎太郎所感:

明確で理想的な結果が得られたように思います。
8週齢未満として一括りにして論じてしまっているので、もう少し細分化して検証してくれたら、日本における早期離乳問題へのエビデンスの一つになるのかなと思いました。

題目5「Rigorous Training of Dogs Leads to High Accuracy in Human Scent Matching-To- Sample Performance」

サンプルと人間の匂いを結び付ける技能での高い正確性を導く、厳密な犬のトレーニング

Sophie Marchal, Olivier Bregeras, Didier Puaux, Rémi Gervais, Barbara Ferry
PLOS ONE | DOI:10.1371/journal.pone.0146963 February 10, 2016

目的:

嗅覚的な能力を駆使して人社会に貢献する犬を訓練するための、効率的なステップを明確化すること。

方法:

ジャーマンシェパード13匹に対して、週5回訓練を行う。

訓練で使用する匂いの種類は以下の2つ。
・体の匂い         :Body Scent (BS)
・(犯罪現場の)痕跡の匂い:Trade Scent (TS)

訓練は5つのステップに分かれている。
・ステップ1~3:匂いと報酬の結び付け学習の期間
・ステップ4  :人の匂いの識別を学習する期間
・ステップ5  :人の匂いとサンプルの結び付け学習の期間
以降は、継続的なトレーニングを行う。

結果:

ステップを挙げるごとに、訓練の試行回数は上昇していった。
また、継続的なトレーニングによって能力は向上していくものの、BS/BS, TS/TS といった同一の組み合わせの方が、BSとTSの異なる組み合わせよりも向上率が高かった。

虎太郎所感:

盲導犬をはじめとする介助犬においても同じですが、遺伝的要因と環境的要因の2つの軸によって適合した犬が生まれます。その、環境的な要因の大きな一つとして訓練があります。

訓練の方法を、経験的な側面だけでなく科学的な側面 (統計学的な効果測定を行うという意) からも評価していく論文が増えていくことで、より多くの適応個体を生むことができるのだと感じました。

 

 

題目6「Coping with Stress: The Effectiveness of Different Types of Music」

ストレスの対処:異なる種類の音楽の有益性の違い

Elise Labbe, Nicholas Schmidt, Jonathan Babin, Martha Pharr
Appl Psychophysiol Biofeedback (2007) 32:163–168 DOI 10.1007/s10484-007-9043-9

目的:

音楽を聞かせた時の心理および生理的効用を、音楽の種類ごとに比較すること。

方法:

56人の被験者を「無音状態」「自己選択(自分で聞く音楽を選ばせる)」「クラシック」「ヘビーメタル」の4群に分けて、20分間音楽を聴いてもらった (「無音状態」群は座ってもらうだけ)。
音楽を聴く前と後に、アンケート調査による情動の評価、心拍数の測定などを行った。

結果:

「自己選択」「クラシック」の群は、怒りや不安といった情動が改善し、心拍数の減少も見られた。

虎太郎所感:

非常にシンプルで仮説通りの結果なのかな、と思います。

が、例えば「自己選択」の中でも、どの種類の曲を聴いていたかについて言及する必要があるのではないかと思いました。
というのも、自己選択した曲がすべてクラシック系もしくはヘビーメタル系であった場合に、結果の解釈は大きく違ってくるからです。

 

~~(=^・・^=)~~

 

本日の最後の題目の発表者の子は、いつも面白いプレゼンをする子です。
音楽を流しながらプレゼンしたり、ストーリーテイストにするなど、明らかに他の子と (もちろん私とも)異質のプレゼン能力を持っています。

学術的なプレゼントしては些か欠けている要素はあるものの (レジュメは特に) 、見習うべき点が多いものでした。

次 (卒論報告会かな?) のプレゼンも、期待大です。

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