読書感想文|パット・センソン 見せびらかすイルカ・おいしそうなアリ|研究者のあくなき好奇心

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自分の話

動物行動学は人を惹きつける魅力にあふれており、面白い本が山ほどあります。

私の指導教員が授業で薦めていた、コンラート・ローレンツ著の「ソロモンの指輪」を読んだとき、動物行動学がいかに魅力的であるかを知りました。

ローレンツさんの生きざまに衝撃を受けたのもそうですし、動物の行動をさまざまな観点から理論的に説明していく、という考え方、概念自体が、当時の私にとって新鮮でした。

その後、「人イヌにあう」「攻撃」など他の本を読んだり、小林朋道先生のシリーズものをよんだり、活字と対面するのが苦手だった私が積極的に本を読むようになったきっかけとなりました。

今回の本は、そんな動物行動学の魅力にあふれた一冊です。

 

読んだ本の話

今回手に取った本は、パット・センソンさんの「見せびらかすイルカ・おいしそうなアリ」でした。

見せびらかすイルカ、おいしそうなアリ パット・センソン  飛鳥新社ポピュラーサイエンス

☞Amazonページ
https://www.amazon.co.jp/%E8%A6%8B%E3%81%9B%E3%81%B3%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%99%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%80%81%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%97%E3%81%9D%E3%81%86%E3%81%AA%E3%82%A2%E3%83%AA-%E9%A3%9B%E9%B3%A5%E6%96%B0%E7%A4%BE%E3%83%9D%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B9-%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3/dp/4864101078

 

動物の行動には、一見して人下から見ると不可解なものがたくさんあります
しかしそれは、「人間フィルター」でその行動をみているからであるといえます。

2年くらい前に読んだ『生物から見た世界』で、ユクスキュルさんが提唱している「環世界」という概念を思い出しました。

環世界とは?

すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、その主体として行動しているという考え。ヤーコプ・フォン・ユクスキュルが提唱した生物学の概念。

☞Wikipediaより
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%92%B0%E4%B8%96%E7%95%8C

 

つまり、動物はその種ごとに独自の知覚機能を駆使して外界を認識しているから、「我々とはそもそも見ている外界世界が違う」ということです。

 

たとえば、サルが自分のおしっこで手を洗っていたり、カワイルカが木の棒を加えて振り回していたり、「われわれからすると不可解」な行動には、「彼らからすると合理的」な理由が背後にあります。
(理由は、ぜひ本書をご覧ください)

その合理的な理由を知るには、我々の「人間フィルター」は排除し、彼らの視点に立つことが重要なります。

 

この考え方ってすごく大事だと思ってて、動物種だけに限らないと思います。

人同士においてもこの考えは適用できて、「普通はこうだから」とか「常識的に考えてこうだから」とか、主観的な価値判断を他者に要求してしまう場面は良く起こりえます。

そんなとき、自分を俯瞰的に省みて、他者視点にもつ必要があるかもしれません。

 

それから、現象を客観的に判断する思考に長けているのは、明らかに研究者であると痛感しました。

と同時に、本書で描かれる、研究者のあくなき探求心には脱帽です。

まさしく、尊敬する部分だと思いました。

 

『全国読書マラソン・コメント大賞』への掲載予定文章(推敲中)

動物の行動に疑問を持った経験は、誰でも一度はあるだろう。
なぜそんな行動を?その行動にはどんな意味が?
いくら考えても分からず、しだいに考えていたことさえも忘れていく。

本書にでてくる研究者たちは、忘れなかった。

その行動を徹底的に調べ上げ、時には危険をおかしながら実験と調査を重ね、もっとも合理的な行動の理由を導き出す。

その行動原理を知るには、人間フィルターを外す必要もある。
その生物種の視点にいかにして立ち、彼らにとってその行動がいかに重要かをくみ取る。

研究者とは、もしかしたら最も他者志向性の高い人種なのかもしれない。

 

『全国読書マラソン・コメント大賞』とは??
☞ 全国大学生活協同組合連合会 HP
https://www.univcoop.or.jp/news_2/news_detail_1477.html

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