2019年5月22日、本学校にて特別講義が行われました。
講義の内容は、「人とペットの減災:平成28年熊本地震の事例から」というもので、話者は九州保健福祉大学、社会福祉学研究科、准教授の加藤謙介先生でした。
先生は、社会心理学 (Group Dynamics) を専門とされており、人と動物の関係学、アニマルセラピーなどをテーマに研究をされている方です。
私は、人と動物の関係学会 (Human ー Animal Relationships: HARs) の学術大会にて、毎年お世話になっております。
本講義では、『減災』をキーワードに、ペットを飼育している人、さらには飼育してない人が、どのようなマインドセットを持って災害に備えるべきかについて、詳細にお話しいただきました。
講義内容を振り返りつつ、個人的な所感を述べたいと思います。
マインドマップは以下の通りです。
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①講義の論理展開
動物は、家畜動物、実験動物など、多様な形で人間社会に浸透しています。
なかでも、現代において重要な愛玩動物、すなわちペットとしての動物は、人間社会における重要な存在だと言えます。
動物と人の関係性を物理的に破壊する、避けては通れない問題が、『災害』です。
日本は災害大国とよばれており、世界中で発生するマグニチュード6以上の地震の約20%が日本付近で発生していると言われています。
出典: 一般財団法人 国土技術研究センターhttp://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary12
すなわち、わが国では地震に十分な備えを施す必要があります。そしてそれは、国単位、地方自治体単位だけではなく、個人単位で必要となります。
加藤先生はここで、『減災』というキーワードを挙げます。減災とは、災害のサイクルである「『発災』⇒『救急救命期』⇒『復旧期』⇒『復興期』⇒『日常へ』⇒・・・」という5つの段階それぞれにおいて、その現状を改善していく活動です。
減災をするには、この5つの段階をよく理解し、どのような備えすべきかを学ぶこと必要があると言えます。
そこで、加藤先生が紹介するのが、環境省が出している「人とペットの災害対策ガイドライン」です。これを、ダウンロードし、まず読み込むこと!
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3009a/a-1a.pdf
出典: 環境省自然環境局 ウェブサイトより抜粋
そして、自身が所属している地方自治体が出しているガイドライン (あればね、、) を読み込むこと!
https://www.city.atsugi.kanagawa.jp/shiminbenri/environment/kankyou/chouju/inuneko/d041091.html
出典: 厚木市 ウェブサイトより抜粋
これが、減災の第一歩だといいます。
そして、ここで出てくるもう一つのキーワードが、『同行避難』です。
同行避難とは、「人だけでなく飼育動物も共に非難する」という意味の災害用語です。
※「避難所でペットと一緒に暮らす」という意味ではないのであしからず。
この同行避難には多くの問題があり、それは、災害サイクルの各段階すべてに存在します。
この同行避難をキーワードにしつつ、『熊本地震』の事例を取り上げ、災害サイクルの各段階における現状や取り組みを、加藤先生自身の御経験からお話しされました。
そして、最後に結論として、「『わざわざ防災』ではなく『ついでに防災』」をキーワードに、
ペットを飼育している人もそうでない人も、『双方に配慮の気持ちを持つ』ことが重要であり、そのためには『地域の防災訓練に積極的に参加』するなど、積極的に減災の知識を蓄える必要がある、と述べられました。
②個人的所感
加藤先生の講義を聞いて、私は2つの所感を持ちました。
1つ目は「研究室でも減災を行わねば」、2つ目は「減災の普及啓発活動の難しさ」です。
ー研究室でも減災を行わねば
当研究室では、猫と馬を飼育しています。彼らの災害対策について、意識を高めるべきだと思いました。
研究室という、いわば通常の飼育家庭とは異なる環境では、減災のしかたは異なるものと思われます。
しかし、当たり前ですが、「研究室の実験動物 (猫や馬の) 災害マニュアル」などというものは存在しません。なので、私たち自身で思考し、準備をする必要があります。
もちろん、これまで災害対策を何もしてこなかったわけではありません。私が大学院生として研究室に来た頃から、わたしを中心に災害対策について考え始めていました。
具体的な例を挙げれば、
・発災時フロー作成
・災害時用の大きめのキャリーの購入
・保存水や災害用ペットトイレの購入
・迷子札の作成
・迷子時用のチラシ
などなどです。
しかしながら、まだまだやることはあります。
書籍や上記のマニュアルを参考にしつつ、日々、準備をしていきたいと思います。
ー減災の普及啓発活動の難しさ
災害の普及啓発の難しさは、『予測不可能性』にあると思います。
予測できないからこそ、実感がわかないため、どうしても準備を怠ってしまいます。
人は、時間的な距離の近いものに対して大きな価値を抱きます。
『予測が出来ない』災害は、人にとって時間的に遠い距離にあるため、必然的に価値を小さくとらえがちです。その結果、日々の減災を怠ることになります。
これは、減災を普及する上での大きな障壁であるといえます。
本日の講義の様子をみていても、能動的に聴講している人もいますが、やはり多くの人が受動的に聴講しています。
このような人達の災害に対する認識を変えるのは、非常に難しいです。
ではどうするのかと考えた時、『単純な行動プロセスを提示する』ことが重要なのだと思いました。
なぜなら、人が行動を先送りせず、高いモチベーションを獲得するためには、『具体的で明確な行動のプロセスを設定する』必要があると言われているからです。
加藤先生の本日の講義で言えば、「地方自治体のマニュアルや環境省のマニュアルをダウンロードする」こと、かと思います。
言い方は悪いかもしれませんが、いわゆる『馬鹿でもできる』ほど小さく明瞭な第一歩を提示する必要があります。
マニュアルを印刷して配ってしまうのも1つの手なのかなと思います。
まあ、そこまでしても、みてくれない人はみてくれませんが、、。
うーーん、普及活動、難しいですね、、。
もっと心理学的な教養をつけて、勉強しなければならない、と思いました。