文献紹介|動物介在介入に対するアンブレラレビュー|動物のチカラ

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もくじ

■文献情報

〇題目

Methodological and Terminological Issues in Animal-Assisted Interventions: An Umbrella Review of Systematic Reviews
 

〇著者

Santaniello, A.; Dicé, F.; Claudia Carratú, R.; Amato, A.; Fioretti, A.; Menna, L.F.
 

〇雑誌

Animals 2020, 10, 759.
 
 

■研究概要 (序論~方法) 

〇背景

動物介在介入 (Animal-assisted interventions: AAIs) という概念がある。これは、the International Association of Human–Animal Interaction Organizations (IAHAIO) という組織によって作られた概念で、「病理・社会・教育的問題」に対して実施される、動物を介入させた「レクリエーション」「教育」「リハビリや医療」などの活動を指す。
医療分野では、アニマルセラピーとして知られる動物介在療法 (Animal-assisted therapy: AAT)、学校などの教育機関で活用する動物介在教育 (Animal-assisted education: AAE) 等が挙げられる。
 
このAAIsは近年、各国でそれぞれ異なる背景で広がり、その効果や最適な方法について議論がされている。
 

〇目的

この研究の目的は、AAIs分野におけるアンブレラレビューを実施すること。
 
ある研究分野の課題に対して、学術論文をかき集め、統合して評価し、その研究分野の現状を知ろうという試みをしているのが、システマティックレビュー (Systematic review) と呼ばれる論文になります。
そしてさらに、そのシステマティックレビューをかき集め、高いレベルで統合して評価するのが、アンブレラレビュー (Umbrella review) と呼ばれるものになります。
 
 

〇実験・調査方法

アンブレラレビューでは、PRISMA (Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses) と呼ばれる手順を用いて、Google Scholarを始めとするいくつかの検索エンジンから文献をかき集め、精査していく。
 

■研究概要 (結果~考察)

〇得られた結果

57本の文献が集められ、その中から内容等を厳選していき、結果的に15本のシステマティックレビューが集められた。
 

〇筆者の意見・主張

結果的としては、以下の批評がなされた
 
・特に、医療のリハビリ領域では効果的な活動である
・一方で、AAIに関わる用語の統一が出来ていない
・活動のプロトコル (実施内容、実施期間や回数など) が不均質である
・上記を整理して、文献間での比較を容易にしていくことなどが重要
 
もっとこの分野の研究を発展させて、質の高い研究を行っていく必要がある。
 
 

■感想と転用

 
AAIのアンブレラレビューがあるなんて、驚きでした。
このような研究があることを、もっともっと普及していかないと、いつまでも研究分野が発展しないのかなと思います。
 

〇 研究を俯瞰的に見るちから 

常々、専門バカにならないように意識していますが、なかなかバイアスのかかった思考をとるのは難しいものです。この文献のように、1つ高い視点から対象を批評していく姿勢、というか能力は、身に付ける必要があると強く感じました。
 
ただ、アンブレラレビューやシステマティックレビューをこなしていく作業は、とてもじゃないけど独力じゃ無理な気がします、、。そこの専門性の高い人と協同をするなど、分野をまたいだ研究が必要になると感じます。
 

〇 農大の先生の文献あり

世田谷キャンパスの上岡洋晴先生の執筆された文献が、15本の文献のうちの1つに入っていました。
めちゃくちゃびっくりしました。灯台下暗しとはまさにこのこと。
先生のHPを拝見するに、人と動物の関係学というより、システマティックレビューに関してご権威のある先生のようです。
 
唯一の日本人の執筆論文が、「人と動物の関係学分野の研究者」ではないことに、課題を感じつつも、これからの研究活動の在り方という可能性も感じました。

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