研究活動において「過去の学術論文」は超重要なものです。
なぜなら、研究は「未知を既知に変える作業」だからです。つまり、「まだ誰も知らないこと(未知)を研究で初めて明らかにする(既知)作業」が研究活動といえます。
であるならば、「どこまで知られているのか?(既知)」を知っていないと、「知らないこと(未知)」を知ることが出来ません。
そこで必要になってくるのが、「過去の学術論文」になります。
この記事では「学術論文」を読んで内容をまとめて発表する活動、「輪読会」の意義や目的についてご紹介します。
もくじ
輪読会とは?
輪読会とは「人々が集まって、同じ教科書などの本を読み、その内容について意見を交わすことを意味する語。事前に決められた担当者が、本の内容を訳したりまとめたりしてから、他の参加者が理解できるように発表する形式がとられることも多い。」(ウェブリオ)
ご多分に漏れず、私の所属する動物介在療法学研究室では、学部3年次生は「年に3,4回」、4年生は「年に2回」ほど「輪読会」が回ってきました。この頻度が全国の「大学研究室」において少ないか多いかは分かりません。ただ、輪読会は多くの研究室で広く行われるものです。
一方で、あまり意義や目的を理解できずに輪読会に臨む学生さんもいます。(私も学部生のときはそうでした)
ウチではなぜ「英語」の「学術論文」を対象にしているのか?
文系分野では、「書籍」などをテーマに輪読会を行ったりもします。このような種類の輪読会では、「単一の書籍(の一部)についてみんなで意見を交わし合う」というのが特色です。
一方、多くの理系研究室、そしてウチの研究室の輪読会では、「英語で書かれた学術論文を翻訳」して内容を発表します。「英語」「学術論文」に指定されてる理由はたくさんあります。
まず「最新性」が高いということがあります。研究は、この「新しさ」が結構重要です。
毎年、世界中で数百万という膨大な学術論文が出版されています。「動物と人の関係学」という狭い領域でも、毎日新しい知見が示されています。
つまり、今この瞬間にも、「あなたがやろうとした研究を『別の人間がやっていた』」可能性だってあります。それだとまずいですよね。だからこそ、最新の情報が得られる「学術論文」を読む必要があるのです。
では、「学術論文」の内容を読んで発表するこの「輪読会」をすることには、一体どんな意義や目的があるのでしょう。
輪読会の意義・目的は?
たくさんありますが、適当に3つほど挙げてみました。
-
-
英語力の向上
-
プレゼンテーション力の向上
-
その学問分野における「既知」の向上
-
どれが正解とかはありません。大事なのは、「なにか意義・目的を置いているか否か」を自分で認識しておくことです。
①英語力の向上
例えば、①を意義としておいた場合、学術論文の1語1句を舐めるように読んで知識に蓄えていく必要があります。一方で、読んでいる文献が「バッチリ」自分の読みたい内容とあってなくても問題ありません。(あっているに越したことはありませんが)
ちなみに私が学部生の頃は、この①を意義に据えていました。なので、私の輪読会の取り組み方は以下の通りでした。
Step1:原文を一読し、「意味の知らない単語」に全て線を引くStep2:線を引いた単語をすべてキャンパスノートの左端に書き出すStep3:全ての単語一つ一つを英語辞典で引き、「意味」「発音記号」「品詞」を横に書くStep4:原文を「単語帳」を見ながら一文ずつ訳していくStep5:意味が読み取れなかった文章は、Google 翻訳 に入れて意味を探る
こんな感じでした。作業期間としては2,3週間くらいだったかな、、。あんまり覚えてないけど。
私は英語力がまったくなかったので、『ほとんどの英単語』に線が引かれてました。今考えると強迫性が高かったなーと思うし、それが効率的だったかと問われると分かりません。が、英語の勉強にはなった気がしてます。
上記とやり方が同じじゃないにせよ、①を意義に置くのであれば、「英単語の知識」「英文読解力」を向上することに重きをおいた「輪読会準備」が理想であると言えます。
②プレゼンテーション力の向上
一方で②に意義をおいてたとしたら、内容理解を早々に切り上げて、「パワポづくり」「レジュメづくり」に精を出す必要があります。こちらも、「バッチリ」自分の読みたい論文でなくてもOKです。
また、読み込む内容は、極端な話、「アブストラクト」と「本文の『発表に必要な最低限の情報』」だけで良いと思います。ガッツリやる必要はありません。
「パワポ」などの資料作成技術は、今後の人生のさまざまな場面で必要とされる能力です。①の英語もそうですが、「卒業した後に役立つ能力」に関しては、ぜひ力を入れて努力すべきだと思っています。
③その学問分野における「既知」の向上
そして③の意義です。冒頭につらつら述べた内容は、ここになります。
なぜ「英語の学術論文」を読むと「既知が向上」するのかというと、学術論文は「知られていること(既知)の塊」だからです。
序論:その研究分野の「社会的な立ち位置」「過去から現在までの発展過程」
方法:「伝統的または新規な研究手法」「評価するための実験機器・尺度」
結果:その論文が示した「その分野の最新研究成果」
考察:「その成果を肯定または否定する情報」「その成果に対する論理的な解釈」
論文は、上記の内容に関する大量の「参考引用文献」が記載されています。これらは、あなたの知りたい研究分野をよく知る上で超有益な情報です。したがって、上記の2つの目的とは異なり、「バッチリ」自分の読みたい論文を見つける必要があります。そうしないと、有益な「既知」をゲットできないからです。
また、論文を読み込むと③その学問分野における「既知」の向上には、「その参考引用文献」をメモしたりまとめたりしながら、自分の序論作成に活用できるように作業しましょう。
意義や目的は据えることが大事
上記の意義と目的、みなさんは当てはまるものはありましたか?何も該当しない場合、別のものを自分で考えてみましょう。
意義や目的は1つじゃなくてもちろん大丈夫です。ただ、あまり全部全部~と思うと大変だと思います。「一番重要視するのはコレかな~」みたいな感覚でもいいので、なにか据えてみましょう。
ちなみに、おすすめは「③その学問分野における「既知」の向上」ですかね。みなさんはいずれ序論を書いて研究計画を考えていきます。その時、必ず「既知」が必要になるからです。今のうちに知識を蓄えておくに越したことはありません。
「意義」や「目的」を作ると、「意思」や「意欲」がわきます。「輪読会に意義なんてないわ~ダルいからやりたくないわ~」という人も、上辺でもいいので何か意義を作ってみましょう。何も作らないより、身になります。
文献を読む作業は、これから嫌というほど繰り返す作業です。輪読会は、その作業に慣れるための訓練だと思いましょう。ぜひ、意義や目的をきっちり作った輪読会作業をしてください。
そして、「じゃあ、バッチリ自分の読みたい論文を見つけるにはどうすればいいのよ?」という疑問のアンサーを次の記事で示していきます。