本日の輪読会は6題でした。
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題目1「Domestic cats (Felis catus) discriminate their names from other words」
猫は自身の名前を、他の単語と区別して認識する
Atsuko Saito, Kazutaka Shinozuka, Yuki Ito & Toshikazu Hasegawa
Scientific Reports | (2019) 9:5394 | https://doi.org/10.1038/s41598-019-40616-4
目的:
猫は自分の名前を聞き分けることができるのか、を検証すること。
方法:
『飼い猫の呼び名と同様のイントネーションや長さの単語』や『一緒に暮らしている同居猫の名前』を聞かせ、『実際の呼び名』を聞かせた時と「猫の耳や頭の動き、鳴音..」などに変化が起きるのか、を行動分析する。
対象は、一般で飼育している猫、そして猫カフェにて実験を行った。
結果:
猫カフェの猫では、識別は出来ていなかった。
しかし、一般家庭の猫は、耳の動きや頭の動きに変化があり、自身の名前を識別してることが分かった!
虎太郎所感:
著者の斎藤先生は有名な猫の行動心理学の先生で、過去にも「猫は飼い主の声を識別しているか?」という論文も書かれております(識別していた!!)。
内容もキャッチーなのでメディアでも話題になっていました。
題目2「Respiratory rate of clinically healthy cats measured in veterinary consultation rooms」
診療室での、健康な猫の呼吸数の測定
E. Dijkstra, E. Teske, V. Szatmári
The Veterinary Journal 234 (2018) 96–101
目的:
猫の呼吸数の基礎値を、 『臨床現場 (動物病院内) 』と『自宅』で測定し、比較分析すること。
方法:
猫142匹に対して、『病院での身体検査前および検査中』と『自宅での安静中および睡眠中』の呼吸数を計測し、比較する。
結果:
『病院での身体検査前および検査中 (1分間に28~176回) 』は『自宅での安静中および睡眠中 (1分間に9~60回) 』よりも呼吸数が多かった。
虎太郎所感:
飼い猫の正常な呼吸数を診るには、動物病院に行く前に自宅にてビデオ撮影するなどした方が、獣医さんは助かるのかもしれませんね。
人間の白衣高血圧症 (White Coat Effect) のような現象は、猫では特に顕著なようです。
題目3「Personality Profiles of Users Sharing Animal- related Content on Social Media」
SNS上での動物に関連したコンテンツを共有するユーザーの性格特性分析
Courtney Hagan, Jordan Carpenter, Lyle Ungar & Daniel Preotiuc-Pietro
(2017) Anthrozoös, 30:4, 671-680, DOI: 10.1080/08927936.2017.1370235
目的:
SNSの投稿を基に、ペットに対する嗜好性と性格傾向に関連性はあるのかを分析すること。
方法:
TwitterとFacebookの投稿内容を用いて、性格傾向 (Big Five: Openness 開放性; Conscientiousness 誠実性; Extraversion 外向性; Agreeableness 調和性; Neuroticism 情緒不安定性) を導き出す。そして、犬派と猫派で、その性格傾向に違いはあるのかを比較した。
結果:
猫派の投稿者は、犬はよりも情緒不安定性の傾向が高く、より開放性の強い性格である可能性が分かった。
虎太郎所感:
SNSの総ユーザー数を考えた時、サンプル数の確保にSNSを利用するメリットを強く感じます。
それは、研究の被験者を探す場としてだけではなく、研究を行う場自体としても利用することが可能であるということです。ツールは十分用意されているので、そのツールを使うための発想力のみが重要なのだと思います。
題目4「ADHD Treatment in Primary Care: Demographic Factors, Medication Trends, and Treatment Predictors」
ADHD患者へのプライマリケア:人口統計学的要因、医療傾向、治療予測因子
Tanya S. Hauck, MD, PhD , Cindy Lau, MPH, Laura Li Foa Wing, BMath, Paul Kurdyak, MD, PhD, and Karen Tu, MD, MSc
The Canadian Journal of Psychiatry / La Revue Canadienne de Psychiatrie 2017, Vol. 62(6) 393-402
目的:
ADHDに対する医療の現状を、多様な側面から分析すること。
方法:
電子カルテデータベースから抽出した1万人の情報を用いて、ロジスティック回帰分析にて分析。
結果:
ADHD患者の有病率は5.4%であり、そのうちの約7割が何らかの薬物による治療を受けていた。
ADHDの青年の患者は、精神病を併発するリスクが高かった。
家庭環境や人種、家庭内経済状況により発症率が異なっており、母子家庭、黒人、貧困であると発症率が高いことが分かった。
虎太郎所感:
アウトカムについて触れる研究ではないので、どこまで言及できるのかは難しいのですが、ADHDの問題には文化的、経済的などの側面も絡まる複雑な問題であることが分かります。
このような研究を基盤に、あるべき体制についてふみこむ研究が必要なのだと思いました。
題目5「Psychological and cortisol reactivity to experimentally induced stress in adults with ADHD」
ADHD患者の成人での実験的に引き起こされたストレスへの心理的およびコルチゾールの反応
Sivan Raz, Dmitry Leykin
Psychoneuroendocrinology (2015) 60, 7—17
目的:
ADHD患者の学業不振の一因であると考えられている『試験に対する不安』について、実験を行うことで分析すること。
方法:
ADHD患者24名と健常者25名に対して、数学の試験を行う。
その前後で、心理的側面 (Visual Analogue Scaleを使用) と生理的側面 (唾液サンプルによる分析) の計測を行う。
結果:
ADHD群は健常者群と比較して、実験前に高い不安状態を示す傾向があり、試験前後の増加率が有意に大きかった。
虎太郎所感:
ADHD患者は「試験への不安が高まる」⇒「過度な緊張」⇒「コルチゾールの上昇」⇒「認知機能の低下」⇒「結果、悪い点を取る」⇒「次の試験の時も不安が高まる」・・・
といった、負のスパイラルに陥る傾向があるようです。
これには周囲の人間のサポートも必要であり、不安をあおらないような理解の仕方が重要だと考えられます。
題目6「The long-term benefits of dog ownership in families with children with autism」
自閉症児の家庭での犬の飼育の長期的効用
Sophie S. Hall, Hannah F. Wright, Annette Hames, PAWS Team, Daniel S. Mills
Journal of Veterinary Behavior 13 (2016) 46-54
目的:
自閉症児の親に対して、犬の飼育がもたらす長期的な効用を明らかにすること
方法:
犬を飼育する『介入群』と、犬を飼育しない『対照群』にたいして、約2年半にかけて追跡調査を行う。
結果:
機能的な家庭困難の数値が、『介入群』の方が大きく減少した。
また、子育てにおけるストレスが、『介入群』では、すべての項目で減少しており、総ストレススコアも大きな減少が見られた。
虎太郎所感:
前回発表された題目でも、総ストレススコアの減少が見られ、さらに同様に、「最終的には群間で数値に違いはない」というような結果が得られていたと思います。
これは、犬の介入が、治療の初期場面で特に大きな効用をもたらしているということを示しているともいえます。
つまり、動物を治療に利用するときのタイミングや、効率の良い使用方法を示していると考えられます。
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本日から、新3年生の発表も始まりました。
緊張していましたが、しっかり発表で来ていたと思います。
皆さんお疲れ様でした。