『統計』
言葉を見るだけで、ネガティブなイメージを思い浮かべる人が多いと思います。
もちろん私もそうです。
ただ、少しだけ統計に関する知識と理解が深まり、統計の面白いさが分かってきました。
くわえて、その重要性も認識することが出来るようになりました。
この記事では、卒業論文を作成するうえで必要となる、「統計解析」の概念や原理といった、初歩の部分を解説します。
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統計を学ぶ上で、まず知っておいてほしいこと
研究する上で、統計って100%必要?
答えはNOです。
まず統計の定義ですが、以下のとおりです。
統計(とうけい、statistic)は、現象を調査することによって数量で把握すること、または、調査によって得られた数量データ(統計量)のことである。統計の性質を調べる学問は統計学である。
Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%B1%E8%A8%88
では考えてみましょう。
この世の研究はすべて、数量を扱い、統計解析を行うものでしょうか?
例えば、文系の大学における研究のように、ある概念ついての文献を整理して体系的にまとめた、数量データを全く扱っていない論文があるとします。
この研究は、無価値でしょうか?
全くそんなことはありませんよね。
例えば、超希少な野生動物の生態を調査し、その動物の行動をたった1個体だけ撮影して記録した研究があるとします。
それは無意味な研究でしょうか。
全くそうではありません。
みなさんが認識しておくべき大事なことは、研究の道筋は1つではないということです。
すなわち、統計解析は研究の命ではないのです。
研究分野やその内容によって、「統計解析」を用いるか否かは変わってくるのです。
統計解析は、実験結果を解析する上で用いる『道具の1つ』だと考えてください。
じゃあ、何で統計を学ぶ必要があるの?
答えは簡単で、わたしたちが所属している研究室の分野は、統計解析を用いることができる研究分野だからです。
(というより、上記で例として挙げた分野も含めて、ほとんどの研究分野が統計解析を必須としています)
「動物と触れ合うことによるコルチゾールの減少」
「馬に乗った際の酸素化ヘモグロビン濃度の賦活化」…etc
どれも、研究を複数回実施することが可能で (サンプルが沢山あって) 、多くの実験データを取ることが可能 (データを沢山手に入れることができる) です。
そして、この「統計解析」を上手に使いこなせれば、それは皆さんにとって心強い武器になります。
すなわち、自分の実験結果を元にはっきりと自分の意見を主張することができるようになるのです。
もちろん、
疾患患者さんを対象にした難しい実験を計画している人は、サンプル数やデータ数が少なく、統計解析を用いることが不可能である場合もありますが、、。
統計の基本原理
統計解析を行う必要って?
ずばり、「研究結果のもっともらしさ」をアピールするために他なりません。
順を追って説明します。
みなさんが実験をした後、その実験結果から何らかの考察を考え、自分の意見を主張することになります。
研究論文とは、そういうものです。
その際、とても重要なことがあります。それは、
「あなたの研究の結果ってホント?」っていわれた時に、
「ホントだよ!!」って胸を張って言えるか否かです。
みなさんは研究を実際にやった張本人です。
当然、そのように主張するでしょう。
しかし、それはあくまで主観的な意見になります。
研究は、客観性が非常に重要視されます。
客観性とは、「誰がみても同じように解釈できる結果か否か」度合いのようなものです。
では、あなた以外の第三者が納得するような結果であることは、どうすれば主張できるのでしょうか?
そうです、統計解析を使うんです。
統計解析を道具として上手に活用することで、
自分の実験結果を客観的に評価することができ、
第三者から見ても「もっともらしい」と思ってもらえる結果であることをアピールすることができるのです。
統計解析を行うことで、何が言えるようになるのか?
もう少し深く、説明をくわえます。
統計解析とは、
「一部のデータ (みなさんの研究の実験結果)」で分かったことを、
「全体のデータ (この世のすべての研究の実験結果)」で分かったこと、
にする作業であると言えます。
もう一段階言い換えます。
「みなさんが行った実験」を、
「もう一度、別の人たちに対して実施」した時、
「全く同じ結果が得られるだろう」
ということを主張できるようにする作業になります。
これを、難しい言葉で、再現性と言います。
たとえば、
「200人に実施した実験結果から、猫をナデナデすると血圧が減少する」
という研究結果が得られたとします。
そのあと、みなさんは考察にて、
「猫を撫でることは、血圧を減少させるといったストレス緩和効果があるので、猫が健康寿命の延伸に寄与するだろう。」
と自分の意見を主張したとします。
これって、客観的な意見でしょうか?
実は、まだ主観的な部分が強いんです。
なんでかというと、この結果はあくまで「200人」のみの実験結果であり、日本人1億2000万人全員の実験結果ではないからです。
それなのに、
「猫は血圧を下げる」
という研究結果を主観的に信じて考察を立てることは、
「残りの1億1999万9800人」
の実験結果を考慮していない、主観的な意見になってしまうからです。
ではどうすればいいか、そんな時に統計解析を使うのです。
統計解析を行うことで、
「その実験を他の人間に実施した場合、もう一度同じ結果が得られるでしょう」という、いわゆるお墨付きをもらえるのです。
このお墨付きはすなわち、客観的に「この結果はホントですよ!」と主張するために重要な結果となるのです。
好奇心をもち、学習しよう
今回の記事では、統計の話を私なりにかなりかみ砕いて説明してみました。
私が一貫して伝えてきた統計の話は、厳密に言えば「推測統計学」と呼ばれるものです。
統計学は奥が深く、記述統計学、ベイズ統計学などなど、たくさんの種類があります。
なので私は、表面をかすり取って、かみ砕いて、みなさんに伝えるしかありません。
でも、それでいいと思っています。
何でかというと、みなさんが研究を「自走」するためには、自学習がどうしても必須になります。
では、自学習を推進するためにどうすればいいかというと、とにかく好奇心を誘起することだと思っています。
好奇心はすごいです。
何かを学ぶモチベーションとして強く働き、思考させ、そして理解が深まり、また好奇心が生まれて、、という良いサイクルを生み出します。
私の統計に関するかみ砕いた説明で、すこしでも「理解」を得られたのであれば、その萌芽した小さな好奇心をすくい取って大事にしてください。
以下では、その好奇心の先に踏み出すであろう、行動に関するコンテンツを紹介します。
ウェブサイト
これはもう、ググってください。笑
沢山あります。笑
玉石混交で、すげーわかりやすい文章もあれば、難解な表現もあります。
自分の理解にすこしでも繋がるコンテンツを、サーフィンしながら能動的に探してみてください。
本
これに関しては、いくつか紹介したいと思います。
統計学が最強の学問である (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2013/1/24
西内 啓
学部生のころ、初めて読んだ統計の本がこれでした。
すごく読みやすい本で、統計が今の世の中でどんな位置づけであるのか、それを丁寧に説明してくれます。
好奇心を生み出す一歩目として素晴らしい本だと思っています。
マンガでわかる統計学 (日本語) 単行本 – 2004/7/1
高橋 信 (著), トレンドプロ (著)
他の統計解析書とは毛色の異なる本書は、最初の学びとして適していると思います。
マンガ好きな人は、すごく取っ付きやすいと思います。
各所でがっつりした数学的説明が入りますが、飛ばして、漫画だけ読んでもいいと思います。 (私もそうしました)
このシリーズは、「回帰分析 編」「因子分析 編」などなど、めちゃくちゃ沢山のシリーズ本が出ています。
そっちも分かりやすいのでオススメです。
この世で一番おもしろい統計学――誰も「データ」でダマされなくなるかもしれない16講+α (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2014/1/30
アラン・ダブニー (著), グレディ・クライン (著),
この本も、漫画テイストの統計初心者向けの本です。
海外のイラストレーターの方なので、すごく独特な絵のタッチ (とボケの内容) です。
この本は、統計を学ぶ上で取っても大事な概念、「中心極限定理 (統計解析の肝の数学的原理?みたいなもの)」をすごく分かりやすく教えてくれます。
他書をいくら読んでもしっくりこなかった理解力のない私が、この本ですごくストンと腑に落ちました。
「なんで統計解析をすると、再現性を主張できるようになるのか」という部分の、ホントに基礎部分を説明してくれてます。
以上です。
ちなみに、上記の本を読んで、「じゃあ自分のデータを実際に統計解析にかけられるのか」と言われると、ちょっと無理だと思います。
実際の統計解析の手法や手順は、別の学びが必要ですし、別の本の方が参考になります。
それについては、次の記事で説明しますね。
また、統計の本なんて、たっくさんあります。
みなさんにフィットする本がどれかは、ぜひ好奇心を持って、書店で自ら本を漁って探してみてほしいです。
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いかがだったでしょうか。
すげー長くなってしまった。。
全ての物事に言えることですが、「道筋」は1つではなく、多様にあります。
統計を学ぶ方法も、それは同じです。
好奇心を持って、自分なりの方法で統計に挑んでみてください。