【地域猫】と呼ぶのは控えるべき?|用語がもたらす誤ったブランディングの悪影響

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「用語」を作り掲げる際には気をつける必要があります。

なぜなら、用語が想起させるイメージが誤って認識され拡散してしまう可能性があるからです。

今日紹介する論文では、「地域猫という用語の定義を明らかにする」調査を行い、外で暮らす猫たちの保全、我々の認識に及ぼす悪影響を検証しています。

 


Lepczyk, C. A., & Calver, M. C. (2022). Cat got your tongue? The misnomer of ‘community cats’ and its relevance to conservation. Biological Invasions, 1-9.

背景・目的

用語の設定は重要な問題です。

白人至上主義者が使用する「白人公民権」。
犯罪によって得た資金の出所を不明瞭にする「マネーロンダリング」。

上記の用語のように、実際の意味を婉曲的に表現にすることは、良い意味でも悪い意味でも、その用語に対する誤った認識を助長するかも知れません。

「地域猫」という言葉も、猫が生態系や公衆衛生に及ぼす影響、そして彼らの保全に対する人々の意識に影響をおよぼすかも知れません。

そこで、文献調査行い、「地域猫」という用語が使用されている論文を調査し、定義を明らかにしていく。

結果・考察

62件の論文がピックアップされた。地域猫という用語は、大きく5つの定義で使用されていた。

  • 野良猫と同義(1件)
  • 非飼育下の放し飼いされた猫、非社会化。(57件)
  • 非飼育下の放し飼いされた猫、コミュニティにより同意や責任の認識があり、管理戦略の対象となっている。(3件)
  • 飼育されているものの放置されている猫。(1件)
  • 猫繁殖コミュニティ。特定の品種のブリーダーに対して使用。(1件)

多くの研究では地域猫を、「人に飼われず屋外で暮らす猫の集団」とし、彼らを受け入れ、責任を共有し、彼らの集団維持を支持するような感情的な意味合いが含まれている。

これは問題である。なぜなら、

  • 猫が野生動物種を狩猟し生態系に影響及ぼすこと
  • 人を病気にさせる感染症の蔓延に繋がること
  • 外で飼育されている猫の健康福祉が低いということ

等の問題を覆い隠し、曖昧にさせてしまう可能性があるからである。

 

文献に対する感想・内容の転用 (抽象化)

「用語に着目し、それをブランディング捉え、用語の使い方を正していく」という観点が私にはなかったので、とても新鮮な感覚を覚える論文でした。

この論文によると、地域猫という用語が使用され始めたのは10年ほど前からだそうです。

 

たしかに、今まで意識していませんでしたが、地域猫という言葉が「みんなの猫だよっ!だから、みんなで大切にしていこうねっ!」というニュアンスが含まれていることには共感します。

それを認識して、それに対して問題意識を持つことは発想になかったので、勉強になりました。

次の課題は?

地域猫以外の用語を作るはダメなんですかね。

この著者は、無意味に新しい用語つくんなよ!的な空気を出していますが、適切な用語をあえて作り出してリブランディングしていく、という発想はないのでしょうか?

地域猫という言葉使うな!野良猫っていえ!というダメダメ戦略だけじゃ、なんかな、とも思います。

どんなことが言える?

私自身、地域猫という言葉を今後使うかどうかは悩みますが、そこまで問題がないようにも感じます。

この研究はオーストラリアなので、日本よりも猫の生態系への影響に敏感な気もしますし。

一方で、「用語の適切なチョイス」という考え方の重要性には深く共感しました。

先日作成していた研究申請書でも、用語の不適な使用をしてしまっていました。誤った解釈をもたらす懸念があるため、用語の使用は慎重にすべきだな~と改めて感じました。

 


 

いかがだったでしょうか?

「地域猫」という言葉は、優しくて友愛なイメージを想起しますが、それが返って、野良猫の問題点までフワッとさせてしまうことは問題なのかもしれません。

用語に惑わされず、現状を正しく認識していく姿勢が大事なのだと感じます。