輪読会レポート|2019年11月20日②|自閉症児へのリーディングドッグプログラム・認知行動療法に犬は活用できる?・犬と飼い主の情動伝染は飼育期間と関係あり?

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昨日の続きの、3~5題目です

 

~~(=^・・^=)~~

 

題目3「The Impacts of a Reading-to-Dog Programme on Attending and Reading of Nine Children with Autism」
自閉症スペクトラム障害児9人の出席や読書に対する、リーディングドッグプログラムの影響

Spectrum Disorders Stefania Uccheddu, Mariangela Albertini, Ludovica Pierantoni, Sara Fantino and Federica Pirrone

目的:

自閉症児に対するリーディングドッグプログラム (犬に絵本などを読み聞かせする活動) により、読書の能力や意欲に影響が生じるかを検証すること。

方法:

6~11歳の自閉症児を対象とし、
「実験群」犬がいる環境下で読書
「対照群」いない環境下で読書
する群に分け、週に1回30分の活動を10回行った。

10回の活動の前後で、
読書能力を測る
Cornoldi reading test (MT2)
test of reading comprehension (TORC)
metaphonological competence (MCF)
を実施し、
認知能力を測る
Wechsler intelligence scale for children (Wisc IV)
を実施した。

結果:

読書能力も認知能力も、群の間で有意な差はみられなかった。

しかしながら、実験群の子供の活動出席率は100%で、対照群の75%よりも高い数値を示した。

虎太郎所感:

どうしてもサンプル数が制限されるので、統計的に有意な差が出づらいと思います。

しかし、出席率という最も主要な指標ではっきり違いが出ているので、よい結果なのではないかと思います。

 

 

題目4「Are Therapy Dogs Like Xanax? Does Animal- Assisted Therapy Impact Processes Relevant to Cognitive Behavioral Psychotherapy?」
セラピードッグはXanaxに似ているのか?動物介在療法は、認知行動心理療法に関連するプロセスに影響をおよぼすのか?

Melissa G. Hunt & Rachel R. Chizkov

ANTHROZOÖS VOLUME 27, ISSUE 3, PP. 457–469

目的:

認知行動療法 (cognitive behavioral therapy: CBT) に犬を介在させたとき、生じうるメリットとデメリットを検証すること。

方法:

被験者は106名の大学生。

実験は2つの群に分けられ、
「実験群」自身のトラウマについて記述を行う
「対照群」部屋に置いてある家具などについて記述を行う
を3日間実施した。

この時、どちらの群にも「犬を同伴させる群」と「させない群」でさらに2群に分けた。

3日間の実験期間、および2週間後に「State-Trait Anxiety Inventory Subscale: STAI-S」で不安検査を実施し、群間で比較を行った。

結果:

どちらの群も、犬が同伴していた方が不安を感じにくく、特にその差は、実験群の方で顕著であった。

一方で、エッセイの内容を分析した時、犬の存在の有無には記述の内容に影響は生じないことが分かった。

虎太郎所感:

犬は不安を和らげる効果があると同時に、それ効果はCBTに悪影響をおよぼさない、という結果が得られました。

これ、著者の方にとって、めちゃくちゃ理想的なものだったのではないでしょうか。

もし仮説をきちんと立てた上で (もちろんそうだと思いますが) この実験をして、この結果が得られたならば、万々歳ですね。

うらやましい。

 

題目5「Emotional Contagion From Humans to Dogs Is Facilitated by Duration of Ownership
人から犬への情動伝染は、飼育期間によって促進されうるか?

Maki Katayama , Takatomi Kubo  , Toshitaka Ya- makawa  , Koichi Fujiwara  , Kensaku Nomoto , Kazushi Ikeda , Kazutaka Mogi , Miho Nagasawa and Takefumi Kikusui

Front. Psychol., 19 July 2019 | https://doi.org/10.3389/fpsyg.2019.01678

目的:

(飼い主の) ストレス状況下において、飼い主とその飼い犬の自律神経に関連性はみられるか、そしてそれは飼育の期間によって影響されるか、を検証すること。

方法:

実験では、小型犬の飼い主34名を対象にし、飼い主には トリ―アの社会ストレステスト (Trier social stress test: TSST) を実施し、ストレス負荷をかけた。

飼い主が実験を受けている (ストレスを受けている) 場面を、犬には少し離れた場所から観察してもらい、飼い主と飼い犬の双方の心拍変動を測定し、その関係性を確認した。

結果:

いくつかのペアにおいて、犬と飼い主の自律神経に相関関係が見られた。

そしてその相関関係は、飼育期間によって正の影響 (飼育期間が長いほど、相関関係が大きくなる) ことが示された。

虎太郎所感:

飼い主と犬が「共有した時間の長さ」というのは、すなわち彼らの社会的絆の形成に大きく関与するファクターといえます。

心拍変動という生理的側面から、この社会的絆というものを定量化しようとするアプローチ (の発想) は、さすがだなぁと思います。

猫版でパクりたいですね。

 

あと、犬のエンパシーの能力って、やっぱり半端ないですね。すごい。

 

~~(=^・・^=)~~

 

イヌばかりでしたが、面白い論文が多かったです。

特に最後。

イヌだからこそできる実験アプローチだなぁ~と思いました。

猫もみならって、いろいろ工夫してみようと思います。

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