みなさんは、物事を抽象的にとらえることができますか?
はたまた、具体的な表現に変換できますか?
卒論を作成する時、この具体化と抽象化を上手に使いこなす能力は、強い武器になります。
この記事では、抽象化と具体化を使いこなすための思考法について解説をします。
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具体と抽象ってなんだろうか?
まず、イメージをつかんでほしいと思います。
辞書によると、
抽象は「多くの物や事柄や具体的な概念から、それらの範囲の全部に共通な属性を抜き出し、これを一般的な概念としてとらえること」と定義されます。
具体は「物事が、直接に知覚され認識されうる形や内容を備えていること」と定義されます。
うーん、分かりづらい。
そこで、イメージをつかんでもらうために似たような概念をいくつかご紹介します。
帰納と演繹
論理学でおなじみの帰納と演繹。
帰納とは、「いくつかの事例」から「仮説」を作る思考です。
これは、抽象化と似たような考え方になります。
例えば、「オス猫は可愛い」「メス猫は可愛い」「仔猫は可愛い」という現象が見られた時、したがって「猫は可愛いのでは?」と考えることが出来ます。
共通点探しゲームのイメージですね (例で言えば『猫』という共通点があった、といえます) 。
一方で、演繹とは逆に、「前提」に基づいて「事例」を考えることになります。
「猫は可愛い」という世界の真理があったとします。
すると、したがって「オス猫は可愛い」「メス猫は可愛い」「仔猫は可愛い」と考えることができ、事例を具体化して考えている例になります。
部分と全体
これはとても分かりやすいですね。
「猫」という生物個体の全体 (抽象) に対して、「耳」「しっぽ」「目」などの部分 (具体) があるということです。
全体の構成要素が部分であり、部分によって全体は成り立ちます。
ゲシュタルトとその崩壊
ゲシュタルトとは「全体性を持ったまとまりのある構造」のことを言います。
みなさんは、同じ漢字を何度も書いたり眺めたりしていて、”漢字の部分部分がバラバラに見えるように感じた”経験はありますか?
この現象は『ゲシュタルト崩壊』は呼ばれており、「全体のまとまりが消えて、部分部分が際立ってみえる現象」のことを言います。
すなわち、部分部分 (具体) が寄り集まることで、初めて全体として (抽象) 意味を成す (ゲシュタルトを形成する) ことになるのです。
なぜ、研究活動において欠かせない思考なのか?
上記の段落で、抽象化と具体化についてのイメージを何となく理解していただけたと思います。
では次に、なぜこの思考が研究活動において大切なのかを説明します。
わかりやすい文章が書けるようになる
論文は高度な知的作業であり、何百何千という文章をかく必要があります。
すなわち、1つ1つ分かりやすい文章を書かねばなりません。
では、文章を分かりやすく書くためにどうすればいいのか?
1つの方法として「思考の整理」が挙げられます。
自分の考えを整理することで、伝えたいことが明白になり、文章も明白になっていきます。
その整理の一助として、抽象化と具体化思考があります。
抽象化と具体化が上手くできるようになると、圧倒的に文章作成能力が上がります。
なぜなら、1つ1つの物事の関係性を整理し理解することに繋がるからです。
物事の関係性を理解することは、論理性の高い文章を作ることに直結します。
そして結果的に、他者を納得させられるような分かりやすい文章になるのです。
思考の幅を広げることが出来る
抽象化と具体化は、発想を広げる際の思考に大いに貢献します。
部分部分を全体として捉える、その逆に、物事の全体を部分に変換する 。
このような視点移動は、自分の思考を広げる良い方法です。
例えば、ウェブで文献検索をしている時、ゲットしたい文献がぜんぜん見当たらなかったとします。
みなさんならどうしますか?
おそらく、文章 (キーワード) を変換して、再度検索をすると思います。
この時の「変換作業」は、抽象化と具体化をひたすら繰り返しているようなものです。
したがって、この抽象化と具体化が上手くなると、文献検索も上手くなっていくのです。
また、序論や考察を書く際、うまい文章表現が思い浮かばないかもしれません。
そんなときも、抽象化してカッコいい文章に変換したり、具体化して明瞭な文章を作ることも可能になります。
さらに、実験方法を考えている時に問題点にぶち当たることもあるでしょう。
ぜひ、抽象化な思考をして発想を変えてみましょう。
あたらしい実験方法が見えてきて、それが問題解決に繋がることもあります。
抽象化と具体化は、卒論制作の様々な場面で活用されるのです。
抽象化と具体化をするにはどうすればいい?
上記の段落で、抽象化と具体化の重要性を理解していただけたと思います。
では次に、抽象化と具体化をするための方法を4つ解説します。
因数分解 (要素に分けて整理する)
懐かしい響きですね。
この因数分解を、数学的ではなく、国語的に活用します。
その物事の構成要素 (因数) を考えてみる、という方法です。
例えば、「猫」という言葉は、「雑種」「マンチカン」「スコティッシュフォールド」のように種類別に分類することが出来ます。
これは、「猫」というものを具体化しているといえます。
一方で、「猫」を抽象化してとらえると、「ネコ科動物」や、さらには「脊椎動物」であることが分かります。
このように因数分解をすることで、物事の種類・枠組み・立ち位置を理解することが出来ます。
因果関係 (メカニズムを知る)
例えば、「猫を飼っている人は健康になる」という考え方があったとします。
この文章を因果関係的に考えてみます。
健康になった理由が、「猫が可愛くて癒されたから」「猫を撫でていると落ち着くから」といった原因であったと考えれば、これは具体化の1つと言えます。
逆に、健康になったことで得られる結果として「医療費が減り社会が潤う」「病院や老人ホームで猫を飼う動きが強まる」のようにも考えられます。これは、抽象化の一種です。
このように、原因を探る、結果を予測する、これらの思考によって物事を深く理解することができます。
「目的 (ゴールを明確化する)」 と「手順 (プロセスを考える)」
目的と手順を考えることも、効果的です。
例えば、「猫を撫でた時に血圧が下がるかどうかを検証する」という実験を考えたとします。
その実験の目的はなんでしょう?
「血圧が下がる」という現象が「心疾患のリスクを下げる」と分かっていた場合、すなわち「猫を撫でることが心疾患のリスクを下げることを証明する」のような目的である、と考えられます。
さらに、「心疾患のリスクが下がる」ということは「健康を維持できる」と考えられ、「猫を撫でることで健康になることを証明する」といったように、抽象的に捉えることも出来ます。
一方で、「序論を完成させる」という目的を掲げたとします。
その過程には、「院生に添削依頼をする」「指導教員に添削依頼をする」という行動の手順が考えられます。
さらにさらに、添削を依頼するには「足りない参考文献を検索して見つける」「目的の文章が不明瞭なので書き直す」「段落1と2の書式を変える」のように、やるべきことを羅列して、どんどん具体化することが出来ます。
5W1H (いつ、どこで、だれが、なぜ、なにを、どうやって (どのくらい))
これは有名な考え方ですね。 抽象化というよりは、具体化の時に力を発揮します。
例えば、「プレ実験を行う」という行動を計画したとします。
これを5W1Hで変換すると、
「明日12時に、C実験室にて、後輩の○○にお願いして、本番でミスをしないために、実験AのBの部分ができるかどうかを、△△を使いながら、1時間、プレ実験をする」のように具体化することが出来ます。
例は極端にすべての要素を入れましたが、いくつかの要素を使うだけでも十分具体化することはできます。
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具体化と抽象化の重要性、コツは分かっていただけたでしょうか?
次の記事では、実用編として「卒論執筆場面ごとの活用方法」を解説したいと思います。