猫の飼育頭数は、日本を含めた多くの国々で犬を上回っています。
これには様々な背景があり、「猫という生き物の生態上の飼育管理の簡易さ」や「現代社会の住居空間の変容」などが挙げられます。
その一方で、猫は犬と比較して個々体の独立性が高く、また、人間の生活環境下でも単独で狩猟採集を行うことのできる動物であるといえます。
その生態を考慮した飼い主が、放し飼いで猫を飼育することもしばしばあります。
この記事では、南米のチリにおける猫の飼育管理状況を調べ、その懸念点を指摘している研究を紹介します。
もくじ
■文献情報
〇題目
Can Responsible Ownership Practices Influence Hunting Behavior of Owned Cats?: Results from a Survey of Cat Owners in Chile.
〇著者
Escobar-Aguirre, S.; Alegría-Morán, R.A.; Calderón-Amor, J.; Tadich, T.A.
〇雑誌
Animals 2019, 9, 745. https://doi.org/10.3390/ani9100745
■研究概要 (序論~方法)
〇背景
猫は飼育頭数、そして家庭内での多頭外の数も増えています。
その一方で、猫が野生動物に及ぼす影響も大きいと言われています。
〇目的
南米チリにおける、猫の飼育管理の方法、実際の野生動物の狩猟の数、そして飼い主の意識、これらを調査すること
〇被験者情報
5216人
〇実験・調査方法
オンラインでのアンケート調査
■研究概要 (結果~考察)
〇メインで得られた結果
5216人中、94.3 %の人が何らかのペットを飼育しており、その中で約半数の49.9 %が猫を飼育していた。
平均の飼育頭数は2.2匹で、84.1 %の猫の飼い主が「自分の飼っている猫が野生動物を狩猟する」と回答した。
〇面白い・特筆すべき結果
マイクロチップの登録がない、屋外への出入りができる、などの責任のない飼育管理が、「野生動物の狩猟」の可能性を高めていることが分かった。
〇筆者の意見・主張
猫が野生動物に及ぼす悪影響に対する、猫の飼い主の意識を変えるためには、国際レベルでの教育戦略が必要だ。
■感想と転用
〇 めっちゃ図表が可愛い
オープンアクセスの論文だからなのか、最初の2枚の図、学術論文とは思えないほどインフォグラフィック要素が強くて、めっちゃ可愛い笑。
すごく私好みな図だったので、「こんな感じでもいいんだ!」という研究の自由度を知れるいい機会になりました。
私もこんな図を作れるようになりたい。
〇 信念を変えるのは難しい
「猫を屋外で飼育している人」にはいくつも異なる背景があります。
・人の健康を害するレベルで猫が外に出たがるので、仕方なく外に出している人 (問題行動型)
・生じる悪影響を認識していないため、外に出している人 (無知型)
・猫のためを思って、外に出している人 (信念型)
などなど。
問題行動型の人には、動物行動学専門の獣医師に相談するのを促すのがベストです。
無知型の人には、個人・諸団体様がやられているような啓蒙活動 (SNSでの発信や講習会など) をひたすら繰り返して知ってもらうのが良い方法かもしれません。
一方で、信念型の人には、アプローチの仕方が非常に難しい。
何でかっていうと、「猫は放し飼いにして暮らした方が幸せか?」という議題は、『正しい / 正しくない』の二軸で切れるものではないからです。
『幸せ』の定義がなく (あってもそれは人間が作ったもので) 、『幸せか否か』は人間ではなく猫が決めることだからです。
猫が人の言語を操れるようになる日を待つよりほかありません。
では、私も含め、「猫は完全室内飼育にすべきだ!」と主張する人たちはどんな軸で考えているかというと、『好きか / 嫌いか』の二軸なのかなと思います。
「こーこ―こういう理由で、こんな感じだから、猫を室内で飼育する『方が私は好きだなぁ』」というものです。
その熱量の程度は人の差有れど、考えはこんな感じだと思います。
では、そんな信念型を変えるにはどうすればいいのだろう、、。
こっちの正義もあれば、向こうの正義もあります。
正しさを押し付けようとしても、向こうの正しさで押し返されます。
「信念を捻じ曲げられるほどの経験を与える (室内飼育が好きになってくれるような感動的アプローチ) 」
「信念を捻じ曲げざる負えない仕組みをつくる (法的処置をとれるようにするなど) 」
とかですかね。
あとはもう、人を見ないというのも手ですね。
「野生動物の区域に猫が侵入できない仕組みを作る (ATフィールドみたいな壁づくり、テクノロジーの活用など)」