本日の輪読会は6題でした。
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題目1「Stranger danger? An investigation into the influence of human-horse bond
on stress and behaviour」
知らない人にはついていくな?人と馬の絆の影響がおよぼす、馬のストレスや行動の調査
Carrie Ijichi, Kym Griffin, Keith Squibb, Rebecca Favier
Applied Animal Behaviour Science 206 (2018) 59–63
目的:
馬は飼い主を『安全基地』としてみなしているか(愛着関係を形成する)かを調べること。
方法:
『親しいハンドラー(飼い主)』と『親しくないハンドラー(見知らぬ人)』が、『ブルーシート』や『プラスチック製のひも』などの物体を馬と一緒に通り抜ける。
その際の馬の行動を分析する。また、眼球の温度や心拍数を測定する。
結果:
曳く人によって、馬の行動も生理面も、変動は起きなかった。
虎太郎所感:
馬のような、人との特殊な関係性を築くと思われる動物で、芳しい結果が得られないことに驚きでした。
動物の愛着を実験で推し量ることがいかに難しいかを、あらためて実感しました。
題目2「Olfactory discrimination between litter mates by mothers and alien
adult cats: lump or split?」
見知らぬ猫と母猫の新生児間の嗅覚的識別
Elisa Jacinto, Péter Szenczi, Robyn Hudson, Oxána Bánszegi
Animal Cognition (2019) 22:61–69
https://doi.org/10.1007/s10071-018-1221-z
目的:
母猫が、自身の仔猫の匂いを、他の母親の仔猫と区別できるか、さらには、同腹仔内の仔猫の匂いを識別できるかを確かめること。
方法:
実験方法は「馴化・脱馴化法」を用いた。
1~3回目で同じ匂いを、4回目で異なる匂いを嗅がせることで、1~4回それぞれの母猫の行動 (匂いが染みついた綿棒を嗅ぐ行動) を観察し、違いがあるかを確認する。
結果:
同腹仔の仔猫を識別することはできなかったものの、異なる母猫が産んだ仔猫の匂いとは区別することが可能であった。
虎太郎所感:
同腹仔の子供を個体ごとに見分けていないのは、意外でした。
人間ではどうなのか (双子とか) が非常に気になりました。
題目3「Mental health supported accommodation services in England
and in Italy: a comparison」
イタリアとイギリスの宿泊型精神保健支援サービスの比較
Alessandra Martinelli· Laura Iozzino· Mirella Ruggeri· Louise Marston· Helen Killaspy
Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology
https://doi.org/10.1007/s00127-019-01723-9
Accepted: 29 April 2019
目的:
イギリスとイタリアの保健支援サービスの特性、ニーズ、品質などを調査し、比較すること。
方法:
イングランドの87の施設と691のユーザー、イタリアの25の施設と167のユーザーのデータを用いて解析を行った。
結果:
双方のニーズや支援の経路 (保健支援サービスを経て、他の独立した施設に移るまでの流れ) が類似していた。
しかし、生活の質やニーズに対しては、イタリアがイギリスよりも高い数値を示していた。
虎太郎所感:
どちらの施設においても、予想されたユーザーの滞在日数を超えていたようで、それには『移るための適切な施設の場所がない』という問題によるのだと言います。
そもそもの移るための施設がないというのは、根本的な問題なのだと感じます。
題目4「Biopsychosocial Factors and Cognitive Function in Cat Ownership and Attachment in Community-dwelling Older Adults」
猫の飼育における生物心理社会的要因と認知機能と、地域社会に住む高齢者の愛着
Sandra M. Branson, Lisa Boss, Nikhil S. Padhye, Nancy R. Gee & Thea T.Trötscher
2019 ANTHROZOÖS VOLUME 32, ISSUE 2, PP. 267–282
目的:
猫を飼育している高齢者の、猫への愛着と認知機能および生物心理社会的要因の関係性を探ること
方法:
「ペットを飼育していない」(41人) もしくは「猫を飼育している」(55人) 60歳以上の高齢者にLAPS (Lexington Attachment Pet Scale:ペット愛着度尺度)に回答してもらい、唾液中の成分や、心理面のアンケートに回答してもらい、比較を行った。
結果:
猫を飼育している人の方が、うつ病や孤独感に関わる項目の数値が低く、免疫機能の数値は高かった。
一方で、飼い主の愛着のレベルとそれらの数値に有意な相関関係は見られなかった。
虎太郎所感:
愛着のレベルとの相関関係が見られなかったのは残念でした。
しかし、心理および生理面で猫の飼育の効果が見られているようで、良い結果だと思いました。
題目5「The potential beneficial effect of classical music on heart rate variability in dogs used in veterinary training」
クラシック音楽がもたらす、獣医療の実習に用いられる犬の心拍変動への潜在的影響
Liza S. Köster, Fortune Sithole, Gregory E. Gilbert, Elpida Artemiou
Journal of Veterinary Behavior 30 (2019) 103-109
目的:
獣医学校でのトレーニングに用いられる犬に対して、クラシック音楽を聞かせることが有益であるかを検証すること。
方法:
16匹の犬に対して『クラシック音楽を聞かせる』場合と『音楽を聞かせない』場合で比較をした。
結果:
『クラシック音楽を聞かせる』場合の方が、低いRR間隔の数字を示し、強い交感神経の数値を示した。
虎太郎所感:
他の研究では、いくつかの動物で、クラシック音楽を聴くことで幸福感が出ることが知られているそうです。しかしながら、本研究ではそのような結果は示されませんでした。
獣医療、という特殊性がもたらした結果であるため、他の研究と差異が出たように思います。
題目6「Specificity and variability of trunk kinematics on a mechanical horse」
乗馬マシンの体幹運動学的側面の特異性と変動性
Adam D. Goodwortha, Cody Barrett, Jonathan Rylander, Brian Garner
Human Movement Science 63 (2019) 82–95
目的:
乗馬マシンと騎乗者の三次元的な動きを分析し、比較すること。
方法:
加速度を騎乗者や乗馬マシンに設置し、三次元的な動きを把握する。
また、骨盤および体幹サポーターなどの器具を装着することによる影響も確認する。
結果:
乗馬マシンと騎乗者の三次元的な動き方は類似していた。
骨盤と体幹サポーターを用いた際、動きに大きな制限がかけられた。
虎太郎所感:
運動学の論文は相変わらず理解が難しく、本質的な結論がつかめなかったように思います、、。
乗馬マシンと騎乗者の動きの類似性を示したい、というのが本質ということで、あっているのでしょうか、、。
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クラシック音楽や仔猫の匂い、馬の愛着など、面白いテーマの研究が多かったです。