本日の輪読会は5題でした。
まずは、1・2題目です。
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題目1「The Psychological and Physiological Effects of Using a Therapy Dog in Mindfulness Training 」
マインドフルネストレーニングでセラピードッグを使用することの心理的および生理学的効果
Courtney L. Henry and Susan L. Crowley
ANTHROZOÖS, 2015, VOLUME 28, ISSUE 3, PP. 385–401
目的:
「マインドフルネスに基づいたストレス低減プログラム(Modified Mindfulness-Based Stress Reduction program (MBSR))」に「動物介在療法(animal-assisted therapy (AAT)」の要素を取り入れることの有用性を確認すること。
方法:
実験参加者は21名で、「通常のMBSR (実験群)」10名、「AATを導入したMBSR (対照群)」11名とし、そのプログラム前と後で、心理面や生理面の結果を比較した。
セッションは50分間とし、6種類のセッションが実施された。
結果:
すべての被験者は、不安とうつ症状が低下し、マインドフルネスの技術が向上した。
また、セッション中に不安、血圧、心拍が減少した。
しかしながら、これらの結果に、実験群と対照群で、統計学的に有意な違いは見られなかった。
一方で、高い効果量が見られた項目はいくつかあり、
「トレーニングの推奨」「セラピストとの関わり」「トレーニングへの満足感」といった項目で、実験群のほうが良い効果をもたらすことが示された。
虎太郎所感:
他の研究でも示されているように、動物を既存の療法に導入したとき、それが直接的に既存の療法よりも優れていると示されることは少ないように思います。
まあ、それは当然の話で、既存の療法は過去の研究の積み重ねから作られた厳格なものであると思いますし。
ただ、動物を活用するメリットはないかというとそんなことはなくて、療法の導入時期には効果的であったり、モチベーションの維持には活用しやすいと思えます。
今回の結果も、トレーニングに対する満足感といった、間接的に治療の効果を下支えする側面に影響があるように思えました。
また、セラピストとの社会的触媒 (緩衝) 作用の役割は、動物ならではの効果のように思います。
要は、使い所の問題でしょうか。
題目2「Behavioural and physiological responses of therapy horses to mentally traumatized humans Katrina 」
精神的外傷を受けた人間に対するセラピーホースの行動および生理学的反応
Katrina Merkies, Marnie J. McKechnie, Emily Zakrajsek
Applied Animal Behaviour Science 205 (2018) 61–67
目的:
心的外傷後ストレス障害 (Post-Traumatic Stress Disorder: PTSD)と診断された患者への馬介在療法時における、馬側の行動や生理的影響を検証すること。
方法:
PTSDと診断された被験者4名を実験群、健常者4名を対照群とし、馬との接触場面を設けた。
17頭の馬が実験に参加し、生理面として唾液中コルチゾールと心拍数を測定し、行動面として歩行や耳・体の向き、発声などを計測した。
実験の内容は、
馬だけで馬場の中で5分間
その後被験者が馬場の中に入り2分間
人が退出してからまた馬だけで5分間
といった流れで行われた。
結果:
PTSDか否かによって、馬の生理面や行動面に顕著な違いは見られなかった。
しかしながら、馬との経験がある (馬に慣れている) 人が馬場に入ってきた時の方が、無い人が入ってきた時よりも、馬はその被験者に早く接近し、より近くに立ち、平均心拍数が高くなっていた。
虎太郎所感:
この結果は、著者の方々は想定していたものなのでしょうか。
PTSDか否かで、2分間のふれあいの仕方にそこまで大きな差異はでないよな~と思います。
一方で、馬とのふれあいに経験があるか否か (馬に慣れているか否か) であれば、2分間でも (人側の) 行動に差異が生じ、それが馬側に影響を及ぼしてもおかしくはないかな、とは思います。
ので、結果は正しいものな気がします。
が、研究の始まり、アプローチの発端が、よくわかりませんでした。
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どちらの研究も、着目観点が面白かったです。
マインドフルネスと犬をドッキングさせた1つ目の研究は、私個人の興味の強いアプローチ部分で、ぜひこれに近しいことを猫でやってみたいと思います。
また、療法場面において、馬側の影響を~という観点は、私の修論のテーマにも被るもので、非常に共感を覚えました。
療法に参加する動物側も (究極的な理想を言えば) 幸せになるような動物介在療法が望ましいと思います。