猫のエイズウイルス(FIV)は、2~14%の猫が感染していると考えられる疾患です。
FIVはまた、神経認知障害と関連していることも知られています。
今日紹介する論文では、「FIVキャリア持ちの猫の認知機能」を調査をし、猫の健康福祉に役立てようとしています。
文献の情報
Association of age and body condition with physical activity of domestic cats (Felis Age‐related cognitive impairments in domestic cats naturally infected with feline immunodeficiency virus
猫エイズウイルスに自然感染した猫の加齢に伴う認知機能障害
Azadian, A., & Gunn‐Moore, D. A. (2022). Age‐related cognitive impairments in domestic cats naturally infected with feline immunodeficiency virus. Veterinary Record, e1683.
背景・目的
猫の認知機能障害に関連する行動は、15歳以上の猫の約50%に観察されると言われています。
また、FIVがそれらの認知機能に影響を及ぼすことも知られていますが、まだ不明瞭な点が多いのが現状です。
材料と方法
調査対象
合計76頭の猫
FIV感染猫(n = 37)
対照猫(n = 39)
調査計画・流れ
2つの認知機能能力を実験で検証。
① 視空間ワーキングメモリ Visuospatial working memory (VSWM)
餌を入れた容器の位置を一定時間(4分間)記憶する能力
② 問題解決 Problem-solving (PS)
餌を入れた容器を操作して制限時間内に餌を入手する能力
結果・考察
- 高齢猫と比べ、若い猫の認知機能の成績が優れていた
- 若い猫は、FIVキャリアの有無による認知機能の違いはなかった
- 高齢猫は、FIVキャリアを持っている場合、VSWMの成績が悪かった
- FIVウイルス量は、VSWMを予測する因子であった
文献に対する感想・内容の転用 (抽象化)
FIVと認知機能障害に関連性があること自体知らなかったため、大変勉強になりました。
認知機能障害の徴候として、過度な発声等の問題行動の発現が挙げられます。
したがって、動物福祉はもちろん、飼い主の福祉にもクリティカルな影響が出る懸念があり、切迫した問題だなと感じました。
次の課題は?
FIV、そして認知機能障害を患う猫のために、我々は何が出来るのか、に言及する研究が必要なのかなと感じました。
他の研究で調査されているかも知れませんが、「認知症予防のためのアクションプラン」や、「認知症にかかった猫への具体的な配慮方法」などが知りたいなと感じました。
どんなことが言える?
FIVキャリア持ちの猫ちゃんの飼い主さんにとって、認知機能が、FIVの症状の評価指標になるのかなと感じました。
獣医さんでは判断できないため、日常生活での「猫の行動の変化」を、注意深く観察する必要があるのだと思いました。
ウイルス量などは評価が難しいですが、行動の変化であれば、毎日の観察によって早期発見も可能なのかなと感じます。
いかがだったでしょうか?
FIVのキャリア猫ちゃんは、症状がでないまま一生を終えることもあるそうです。ただ、症状が出た場合、健康福祉が損なわれる可能性があります。
日常から猫の行動を観察し、違和感が見られた場合にすぐ獣医師さんに相談する意識付けが大切なのかも知れません。