書籍紹介「ヒトの目、驚異の進化」|私たちの目が持つ4つの超人的能力とは?

 

本の紹介

どんな本か?

 
今回手に取った本は、マーク・チャンギージーさんの「ヒトの目、驚異の進化 」でした。
 
 
この本は、我々がもつ2つの目、すなわち視覚の能力を分かりやすく解説した本です。
 
この本の最も特徴的な部分は、「我々はみな魔法のような超人的能力を持っているんだよ、そしてそれは視覚能力がもたらすものだよ」という切り口で語られる点です。
 
超人的能力?と聞くと始めは大げさに聞こえるかもしれませんが、本書を読み進めていけばそれが大げさではないことがわかります。
 
我々にとって、「視覚」はアタリマエすぎるのです。
朝から晩まで、我々は「視覚」がもたらした情報をもとに、というかそれに依存して日々の生活を送っています。
だからこそ気付かない (まさしく!) 視点から語られる『目』の能力は、われわれに恩恵を多大に与えているのだなぁと実感します。
 
 

読んだキッカケ・目的

 
私の兄がいわゆる読書家で、行動経済学・進化経済学・進化生物学などの多分野の本を読んでいて、その兄から「おもろいよ」といって譲り受けました。
 
読んでみると、確かにおもしろい!
 
序盤から興味をグッと引くようになっています。
というのも、本書の1章は「色覚」に焦点を当てているため、序文の前に色付きのイラストがまとまって記載されています。色彩豊かで好奇心を掻きたてる図の数々は、それを見るだけでワクワクします。
 
序文や解説 (石田英敬 先生) もすごく興味をそそる書き方で、読む前から既にワクワクさせられっぱなしでした。
 
「視覚」というものに焦点を当てた本は今まで読んだことなかったので、良い勉強になるかなとも思い、読んでみることにしました。
 

読むメリット (得られること・勉強になること)

 
 
  • 我々の『目』が持つ機能を、今まで意識したことのない切り口で意識できるようになる
  • ヒトとして、『目』を持って生まれてきたことを誇らしく感じられるようになる
 
 

読んでみた感想

とにかく読みやすい

 
著者のマーク・チャンギージーさんは、TEDで講演したりYoutubeでチャンネルを作ったり、はたまた作家として執筆されるなど、幅広く活動されている方のようです。
「人に伝える」という点を分かっている方だな~と思いました。
 
まず本書は『構成』が明瞭です。
 
本書は人の持つ視覚能力を4つに絞って解説しており、
 
1章「感情を読むテレパシーの力」色覚
2章「透視する力」両眼視
3章「未来を予見する力」錯覚現象
4章「霊読する力」読字能力
 
となっており、章タイトルも分かりやすく、”どの章から読もうかな~”と商品を選ぶような感覚さえ覚えます。
目次が分かりやすい本だと、”いま読んでるこの文章って、何について話しているんだったっけ、、”と、迷子になることがありません。
 
 
また、説明部分を「比喩や例え話」で伝えたり、「著者の子どもたちの日常的な出来事」から発展させて話を進めたりと、読者が理解しやすくなるような工夫を凝らしてくれています。
 
 

「今」と「昔」の切り替えの難しさと、その丁寧さ

 
私のような進化生物学に造詣が浅い人は、読んでいる時にすぐに混乱する場面に出会います。
それは「その能力が進化の過程でどう有利だったの?」という点です。
 
2章の「透視する力」では、左右の目が前向きについているのは「視界の悪い環境でも奥にある物体を視認できるために有利だ」と主張する場面があります。
それを説明するために、「柵越しに奥の環境を覗くと、、」という解説場面が出てきます。
 
ただ、柵は現代に出来た物体であり、「我々の祖先の時代には柵なんてものは存在しないではないか」と感じます。
この時、著者はすぐさま視点を「昔」に切り替えます。
 
『昔』は柵なんてものはないものの、「もっと草花が生い茂る森林で暮らして」いました。それゆえに、「むしろ現代とは比較にならないほど先の見通しが悪い環境」であったことが伺え、だからこそ「この透視能力が進化上有利だったのだ」と主張しています。
 
過去にタイムスリップすることが出来ないゆえに、進化に関わる研究は「現代の生き物や生息環境」で傍証を積み上げていくしかありません。さらに、著者のように、分かりやすく説明するために「現代」に寄り添った説明の仕方を、あえてしてくれる時があります。
しかし、私のような素人は「過去の生き物や生息環境」が直ぐに想起できないため、その分かりやすい説明で、逆に理解が進まなくなる時があります。
 
本書は、そこの「今」と「昔」のギャップや混同を解消するように、まさしく『視点』の切り替えを丁寧にやってくれるので、非常に読みやすかったです。
 

オススメの章

 
1章「感情を読むテレパシーの力」色覚
 
が、一番面白かったですね。
 
特に、図9を読んだだけで面白味がすごかったです。
 
われわれ霊長類、特にヒトが色覚能力に特化しているのは、「『顔の色調』から、他者の状態はたまた心情を把握するためである」というのが本章の肝の部分になります。
その明確な傍証の1つに、「色覚をもつ種のサルは『顔面が毛でおおわれていなくて肌が露出している』」という事実があります。
図9は、複数の種のサルをイラストで紹介しているのですが、たしかに、チンパンジーやニホンザルなどの色覚を持つ動物たちは、顔面に毛がないんですよね。この図で、それが一目でわかります。
 
私は色覚って、「果実などの食物の分別」のために発達したと思っていたのですが、そうではないとガツンと一蹴されます。
 
「社会性の高い動物」は、「嘘偽りない他者の心情を『即時的に』把握する方法」が重要であり、そのために色覚の発達が有利だったということです。
 
 
この章だけでなく、本書はイラストが豊富で、そこも本書の分かりやすさを助長しています。
 
 

印象に残った場面・描写

 
2章「透視する力」両眼視
 
の、最初の部分ですね。
「自分がリスになって、チンパンジーに襲われているシーン」のところです。
実はここ、全然学術的な部分じゃなく、本編ではないのですが笑
 
ホントにこの著者さんは文章が上手いんですよね~。引き寄せられるというか、小説家みたいなんですよね。
 
リスになってしまった自分がチンパンジーの追跡から逃げていくシーンの「情景説明」「心情」ホントにリアルでハラハラするし、分かりやすい。
 
自分の研究分野を面白く明瞭に伝える文章能力は、優秀な研究者の必須スキルなんだな~と実感しました。
 
 
 

書籍の紹介文章

 
周りを見渡しながら散歩でもしてみよう。
色とりどりの風景を眺めつつ、信号の色が青になったのを確認して渡る。
スマホでSNSをチェックしながらも、近づいてくる車や自転車に注意を向け、ぶつからないように歩く。
 
われわれが無意識に行っている日常行動には、『目』から送られる視覚情報が欠かせない。
でも、みなさんお気づきだろうか?みなさんの持つ視覚能力が、いかに超人的な能力であるかということを。
 
状態を即座に把握し読み取る「テレパシー能力」は、視覚における色覚能力の宿す超能力だといえる。
物体に遮られているはずの空間を難なく知覚する「透視能力」、はたまた、周囲環境や物体がどのように動くのかを先読みする「未来予見能力」も、立派な超能力だ。
 
そして、あなたが今読んでいるこの羅列された文字群を難なくスラスラ読める『霊読する力』は、読字という超能力がなせる業といえる。
 
本書は、これらの視覚がもつ能力をなぜわれわれが有しているのかを、「今」と「昔」の視点から解説していく。
 
大事なことはアタリマエすぎて見えない、なんて言葉を耳にしますが、まさしくその通り。
われわれは、もっと『視点』を変えて『われわれを知っていくべきだ』

ペットを飼っている子供は低血圧?|ペットが持つ生理学的な健康効果 (猫は、、)

ペットの健康効果には、ざっくりと「心理 (精神) 面」「生理 (身体) 面」「社会面」に分けられます。

「心理面」「社会面」に関してはアンケート調査の活用がメインとなりますが、「生理面」ではそれが難しいと言えます。故に、非常に実験が難しいと言えます。
特に「子供」を対象にした実験では、更にその難易度が上がります。

この記事では、「ペットの飼育」が「子供の生理的健康効果」と関わりがあるかを調査した研究を紹介します。

 

■文献情報

〇題目

Prenatal and postnatal exposure to pet ownership, blood pressure, and hypertension in children: The Seven Northeastern Cities study. 
 

〇著者

Xu, Shu-Li & Trevathan, Edwin & Qian, Zhengmin & Vivian, Elaina & Yang, Boyi & Hu, Li-Wen & Zeng, Xiao-Wen & Li, Meng & Zhou, Yang & Qin, Xiao-Di & Wenwen, Bao & Yuan, Ping & Zhang, Ya-Zhi & Wang, Jia & Zhang, Chuan & Tian, Yan-Peng & Nian, Min & Xiao, Xiang & Dong, Guang-Hui.
 

〇雑誌

Journal of Hypertension. (2016).35. 1. 10.1097/HJH.0000000000001166.
 
 

■研究概要 (序論~方法) 

〇背景

 
ペットが人の健康、特に血圧などの生理面に及ぼす影響は多く議論されています。
しかし、それらの多くは成人を対象にしており、子供を対象としたものは少数です。
 

〇目的

 
ペット飼育と子供の血圧に関係性はあるか調べること
 

〇被験者情報

 
5から17歳の子供9354人
ペットを飼育していた人は2127人で、犬の飼育者は482人、猫の飼育者は325人。
 

〇評価と実験方法

 
評価の軸は大きく2種類。
 
「収縮期 (最高) および拡張期 (最低) 血圧」
☞ 血圧は3回測定された
 
「高血圧」
☞ 判断基準は、「性別」「年齢」「身長」を基に割り出された基準値を超えるか否か
 
 
また、「飼育歴」「家庭内経済状況」「親の教育レベル」「受動喫煙」「家族の高血圧歴」などなど、解析で調整するためにさまざまな項目が調査された。
 
 
 

■研究概要 (結果~考察)

〇メインで得られた結果

 
ペットの飼育している人は、そうでない人よりも、「高血圧」の発症数も「血圧」の数値自体も、低い傾向にあった。
その傾向は犬の飼育者でより顕著であった。
 
 

〇面白い・特筆すべき結果

 
その他、「家庭内経済状況」などの様々な因子の影響を考慮した上での結果は以下の通り。
 
・「その子供の生後2年の間にペットが家庭にいたか否か」は、結果と無関係
・一方で、「現在ペットを飼っているか否か」では、飼っている子どもの方が高血圧の割合は低かった
・また、男児のみ、「生まれる前 (まだ母親の子宮の中にいる時) にペットが家庭内いた」方が「高血圧」の割合が少なかった
 
 
・「ペットの飼育」の有無で、「血圧の値」において有意な違いが見られたのは「女児」のみで、「最低血圧」が低いことが分かった
 
・動物の種類別で分けた時、すべての動物種 (犬・猫・鳥・牧場動物・その他動物) で血圧が低いことが分かったが、統計学的に有意な違いが見られたのは「犬」と「その他動物」のみであった。
 

〇筆者の意見・主張

 
ペットの飼育は、子どもの血圧の上昇を抑え、高血圧のリスクを下げることが分かった。
 

■感想と転用

〇 ものすごい数の大規模調査

 
48もの小中学校の子供たち9354人を対象って、えぐすぎますね。
この論文では過去に行われた「ペット」と「血圧」の関係性に関する研究を表でまとめてくれています。
そこで記載されている人数たちと比較すると、いかにこの研究の対象人数が多いかが分かります。
(過去の研究では多くて5000人くらい)。
 
子どもを対象にした実験は、実験の承諾などはご両親が関わってくるはずですし、成人よりも倫理的な配慮がとても大変だったと思われます。
研究のそういった準備部分を考えると、この人数に対する調査がいかにヤバいかが分かります。笑
 
ゆえに、すごく信頼性が高く、すごく価値がある研究です。
ゆえに、猫ではっきり結果が出ていないのが、すごく悔しい、、。笑
 
考察で述べられていますが、今回の調査で統計学的な差が見られたのは「犬 (482人)」と 「その他動物 (504人)」だけでしたが、その理由が「被験者の数」の可能性があります。
猫の飼育者は176名で、3倍近くの差があります。
 
この調査は中国で行われたようですが、中国は確か犬の飼育頭数の方が多いんですよね。
(日本を含めた他の先進国では、猫の飼育頭数が多い傾向にあり)
 
猫の飼育頭数ももう少し確保できるような地域だったならば、、と思うばかりです。
 
 

〇 過去の研究との差分

 
過去に5079人の成人に対して行われた研究では、ペットの飼育は血圧に影響を及ぼさず、最低血圧は高い傾向にあることが示されていたようです。
 
全文が見れないので考察は見れてないのですが、明らかに今回の結果とは逆ですね。
 
人数の規模を考えると、被験者の数とかは関係なさそうです。
子どもと成人の違い、なのか、、。
 
 
〇 最低血圧のが重要らしい
 
血圧には「最高 (収縮期) 血圧」と「最低 (拡張期) 血圧」の2種類がありますが、「高血圧」とのかかわりが深いのは後者の方のようです。
 
この研究の結果でも「最低血圧」でのみ有意な結果が見られていることから、結果の信頼性がさらに伺えます。
 
 
日本医事新報社

猫を飼育すると幸福感が減少する?|日本の小学生に実施された「ペットと健康」の大規模調査

昨日の記事で、「猫を飼育している子どもは、精神的健康の状態が悪い」という悲しい論文を紹介しました。
調べてみると、他の論文でも、「猫の飼育は、子供の幸福感を減少させる」という結果が見られたようです。
 
この記事では、東京都の小学生に対して実施した大規模な健康調査に関する論文を紹介します。
 

■文献情報

〇題目

Dog and Cat Ownership Predicts Adolescents’ Mental Well-Being: A Population-Based Longitudinal Study
 

〇著者

Endo, K., Yamasaki, S., Ando, S., Kikusui, T., Mogi, K., Nagasawa, M., Kamimura, I., Ishihara, J., Nakanishi, M., Usami, S., Hiraiwa-Hasegawa, M., Kasai, K., & Nishida, A.
 

〇雑誌

International journal of environmental research and public health, 2020, 17(3), 884. https://doi.org/10.3390/ijerph17030884
 
 

■研究概要 (序論~方法) 

〇背景

 
精神的健康とペットの飼育の間の関係性は示唆されている。しかし、しっかりとした縦断的研究 (追跡調査を行う研究) は不足している。
 

〇目的

 
代表的なペットである犬と猫の飼育が、子供の精神的幸福感を予測する要素となりえるかを調査すること。
 

〇被験者情報

 
東京ティーンコホートという団体で得られている、子供たち2584名のデータを使用。
 

〇評価方法

 
「幸福感」の評価は「5-item World Health Organization Well-Being Index (WHO5)」と呼ばれる5つの質問で構成された尺度で実施。
直近2週間を振り返り、「自身の幸福感を自分で」6段階で採点する。
 
質問内容は「明るく,楽しい気分で過ごしたか?」といった質問で、以下のサイトから無料で閲覧可能。
 
 

〇実験・調査方法

 
子供が10歳の時、そして2年後の12歳の時に答えた「WHO5の点数」を比較する。
 
 
 

■研究概要 (結果~考察)

〇メインで得られた結果

 
猫を飼育してる子供、12歳の時の幸福感が10歳の時より減少しており、「犬も猫も飼っていない子供」よりも低い数値を示した。
 

〇面白い・特筆すべき結果

 
「犬を飼育している子供」は、幸福感に大きな変動はなく、維持していた。
 
 

〇筆者の意見・主張

 
「猫を飼育している子供が、12歳の時に幸福感か低下していた」という結果に対して考えられる仮説・およびそれに伴う考察、は以下の通り。
 
・犬のような「散歩」が世話に含まれていないので、「身体活動」が低いから
 
精神疾患と関わりがあり、かつ、猫と人の共通感染症である「トキソプラズマ症」による影響から
 
・犬と人では頻繁に研究されている「オキシトシンの分泌」が猫では生じないから (そもそも研究が行われていないので不明瞭)
 
 

■感想と転用

 
猫好きとしては、この研究結果をみると白目を剥いてしまいます。
 
なぜこのような結果が出たのかについて、著者は複数の仮説を当てはめていました。また、それに伴い、いくつかの「研究の制限」も述べていました。
 
私なりの意見も交えつつ、解説してみます。
 

〇 能動性の問題

 
例えば、この小学生が、「自らの意志で能動的に」猫を飼育していたか否かは非常に重要な点であるといえます。
 
「親がもともと猫好きなので昔から飼っていた (受動的)」
ポジティブな影響 → ペットとの愛着や絆が形成されやすい
ネガティブな影響 → 子供自身は別に好きではない
 
「子ども自身が『飼いたい』といって飼い始めた (能動的)」
ポジティブな影響 → ペットとの愛着や絆が形成されやすい
ネガティブな影響 → 飼い始めたら意外と、、
 
どっちの方が、っていうのは難しいところですが、分析する上では重要なファクターなのかなと思います。
 
著者の方も、「ペットの飼育期間や年齢」といった背景をもっと掘るべきだと話しています。
 

〇 愛着の程度

 
上記とほぼ同じですが、子どもが「猫に抱いている印象、結んでいる絆や愛着」も重要だと考えます。
 
著者の方が言うように、「そのペットの世話の有無」など、そもそものペットとの関わり合いについても分析に入れる必要があるように思います。
 
 

〇 一般的、主観的な健康を見ていない点

 

質問項目を見てもらえれば分かると思いますが、かなり広域な (メタ的っていうんですかね) 概念としての「幸福感」を質問で聞いています。

 
もう少し具体的な項目を、「心理」「社会」的な健康効果も含めて、評価する必要もあると著者は述べています。
 
また、その他の交絡因子 (影響を及ぼしそうな要素) がものすごくあるので、その部分を調整して分析していく必要も、とも述べています。
因子は挙げだしたらキリがありませんが。。
 
 

〇 個体特性によって違ったりしない?

 
ここは完璧に私個人の意見ですが、「個体特性」も結構重要な気がします。
 
犬や猫にも個性があります。
(犬であれば、特にその個性は「犬種」にも左右はされると思いますが。)
 
例えば、「いつでも人にベタベタの甘えん坊」もいれば、「人からの接触をまったく許容しないツンツン」もいるし、その中間で「ツンデレを使いこなす」子もいます。
 
「運動」というファクターを考えた時に、その運動の種類 (ウォーキング?ランニング?スポーツ?) を考えるのと同じように、「ペット」についても細かく分類して考える必要があるのかな、と思います。
 
 
まあ、それ以外の制限の解消の方が優先度は高いので、もっと未来の研究の話になるのかな、とは思います。
 
 
 

 
明日は、「ペットの飼育」と「生理学的な健康効果」について研究した論文を関連論文として紹介します。
 
 
この論文も、猫はあんまりポジティブではないんですよね、、、笑
 
気が重いですが笑

猫は子供の精神衛生上よくない?|猫を飼っている子供は精神健康上の問題を多く抱えている、かも

昨日の記事でお伝えした通り、猫の飼育が、その家庭の子供の精神的疾患と関わりがある可能性が研究で明らかになっています。
 
かなり気になったので、元の文献をたどってみました。
 
全文が見れないので考察部分が読めないのは残念ですが、その研究の要約部分と、そしてその研究の内容について記述してある他の文献も合わせて紹介します。
 
 

■文献情報

〇題目

Household Cats and Children’s Mental Health (研究の原著論文)
② The Effects Pet Dogs and Cats Have On Children
 

〇著者

① Moira R. Riley, Bonita Gibb & Anne Gadomski
② Belkees Salem Alowami 学生?  (指導教員 Asma Alfarsey)
 

〇雑誌

① 2018, Volume 6, No. 2Human-Animal Interaction >HAI Bulletin Articles
 
② 2017 Libyan International Medical University Faculty of Basic Medical Science

■研究概要

〇背景

 
猫は犬と並んで、代表的なコンパニオンアニマルである。
 
成人の健康にポジティブな影響を及ぼすことは信じられている。
しかしながら、子供の発達に及ぼす影響に関しては、ポジティブな物とネガティブな物の両方が考えられている。
 
 

〇被験者情報

 
研究の参加者は、643名の子供たち。
年齢が4~10歳の小学生
猫を飼っていたる子供は180人で、飼っていない子供は463人であった。
 
 

〇評価方法

 
両親から「子どもたちの精神疾患」等を評価してもらう。
その他にも、その両親の「抑うつ程度」なども聞き取り調査し、結果の解析に用いた。
 
 

〇メインで得られた結果

 
猫を飼育している家庭の子供は、「精神的健康上の問題」の発生リスクが3倍であった。
とくに「注意能力の問題」を多く持つ傾向にあった。
 
そしてこの結果は、「子どもの年齢」「貧困度合い」「両親の抑うつ状態」等の条件を考慮に入れて解析しているため、これらの要因は関係ないことが示された。
 
 

〇筆者の意見・主張

 
この「猫」と「精神的健康への悪影響」関係性における因果関係はまだ分からないため、今後はより詳細な研究が望まれる。
 
 
 

■感想と転用

〇 大規模な調査

 
643名の子ども、という人数が多いと捉えるか、少ないと捉えるかは人それぞれですが、私は多いと感じました。
子どもの、さらにはその後両親に調査をと考えると、色々考慮すべき事項や、実験実施までに踏むべきステップが沢山あり、大変だっただろうと思います。
しかも、著者3人しかおらんし、、。
 
この人数で解析した結果が、「統計の端 (偶然だった)」であると考えるのは、ちょっと違和感ありますね。。

〇 他の要因を考慮してもこの結果ということは、、

 
「貧困」や、「両親の精神的状態」を考慮に入れても「猫のネガティブ結果」が見られたというのは驚きです。
この研究をみると、明らかに「猫の飼育」は「小学生くらいの年齢の子供」にネガティブな影響を及ぼす因子なのでは、、と捉えられます。
 
もちろん追加で調査をする必要はありますが。
 
 
 
実は、この文献を調べる中で、似たように「猫のネガティブ効果」が見られたという最新の研究を見つけました。
それも、なんと日本で行われた研究です。
 
猫のネガティブデータは、調べていてかなり気の重いのものなのですが、、笑
 
その結果をどのように考察しているか気になるので、明日はその文献を紹介したいと思います。

猫は子供たちのメンタルに「悪」影響をもたらす?|猫の健康効果に対する批判的な見解とは?

猫ちゃんを飼っている人は、「猫が我々に健康効果をもたらしている」と強く実感する人が多いかもしれません。
しかしながら、猫が必ずしも人を健康にするとは限りません。
 
猫が人にどのような影響を及ぼすかは、「時」「場所」「場合」など、さまざまな要因によって左右されます。
 
この記事では、猫が人にもたらす健康効果を批判的に評価している記事を紹介します。
 
いつもとは異なり、学術論文ではなく、サイトの記事をとりあげます。
 
 
 

■文献情報

〇記事のタイトル

Do Children with Cats Have More Mental Health Problems?
Researchers explain why there are so few studies of human-cat relationships.
 

〇著者

Hal Herzog
 

〇記事名

Psychology Today 2018
 
 

■猫がもたらす人への悪影響

〇 猫研究のこれまでの背景

 
猫は代表的なコンパニオンアニマルであり、アメリカではその飼育頭数は犬を上回っている。
にもかかわらず、「犬と人の絆」に関する研究と比べて、猫を対象にした研究は非常に少ない。
 

〇 一貫性のない猫の研究結果

 
複数の研究結果は、ポジティブなものであったり、はたまたネガティブなものであったり、さまざまである。
 
研究① 「猫の飼い主は運動量が低く、メンタルクリニックの利用率が高い
研究② 「猫の飼い主は心血管疾患で死亡する可能性が低い
研究③  「心血管疾患にかかった猫の飼い主は、死亡率も再入院率も高い
研究④ 「猫を飼っている女性は酒飲みが多い
研究⑤ 「猫を飼っている高齢者は、慢性疾患が増えやすい
 

〇 子どもへの悪影響

 
ペットを飼育している子供たちを対象に行った大規模調査では、を飼っている子供は以下の健康効果が見られた。
 
「運動量が多くBMIの数値が低い」
「精神疾患の有無」
「不安傾向が低い」
 
一方では、以下の結果が見られた。
 
「精神疾患と診断された数が3倍高い」
 
 
 

■ なぜこんなネガティブな結果がでたのか?

〇 可能性1 

 
1つの可能性は「猫の『何らかの要素』」が子供の心理面に悪影響を及ぼしているということ。
ただし、この『何らかの要素』は、現在明らかになっていない。
 
ただ、ある研究者は、猫が媒介するといわれている「トキソプラズマ」による物ではないかと主張している。
 
このトキソプラズマに感染すると、注意状態を含む精神疾患にかかる可能性が高まることが知られています。
 
ただ、こちらもただの仮説であり、「猫」「トキソプラズマ」「精神疾患」の3者の関係性を正確に研究した論文はありません。
 

〇 可能性2

 
もう1つの可能性は、「猫自体には無関係な要因」によるものではないか、ということだ。
 
例えばある研究は、「猫を飼っている成人は、犬の飼い主よりも、ポジティブな感情、さらに誠実性という性格傾向が低い」ということを示した。さらに、「ネガティブな感情、さらには神経症的傾向が高い」ということも示した。
 
可能性は低いが、もしかしたら、「猫と暮らすことを選択した『大人』の育てている子供が精神疾患を抱える可能性が高い」という事なのではないかと推測できる。つまり、因果関係の向きが逆なのである。
 

〇 可能性3

 
最後の可能性は、実験の統計的な結果によるもの、ということ。
つまり、偶然によるものではないか、ということだ。
 
 

■ なぜ猫の研究は少ない?

 
なぜ猫の研究が少ないのか、猫研究の専門家3名に理由を聞いてみた。
 

〇 Carri Westgarth (リバプール大学)

 
資金面の問題ですね。
犬が身体面に影響をあたえ、それと同時に精神面にも影響を与えることはとても明白です。
それは、資金提供者に、支援する重要性と理解を与えます。
 

〇 Mikel Delgado (カリフォルニア大学)

 
1つは、やはり資金面
犬の研究は、動物介在療法といった医療系に寄ったものがおおく、国の機関などから資金源を受けられることが多い。
「セラピーキャット」のような活用の少ない手法よりも、「セラピードッグ」を用いた研究の方が明らかにやりやすい。
 
もう1つの理由は、猫への認識だ。
猫は「非社会的」「独立性が高い」と認識している人が多く、いくつかの研究者にとって、猫と人の関係性を研究することの価値が理解されていないということもある。
 
さらに、猫を研究する学生が少ないのも理由の1つだろう。
 

〇 John Bradshaw (ブリストル大学)

 
犬の資金調達は、猫と比較して簡単だ。
犬はさまざまな機関で活用されており、社会的、政治的な影響力があります。
 
また、生物学的な理由も考えられる。
犬は人との愛着関係を持つため、「認知能力を調べる研究」や「複数の異なる条件の研究」にも適しています。
 
一方、猫は縄張り性の動物であり、特定の環境に愛着関係をもちます。
見知らぬ場所などでは実験が難しく、犬では可能であるような実験も猫では難しい
 
 

■感想と転用

〇 めちゃくちゃ格好いい研究者たち

 
私のようなアマチュア研究者も含め、「何かを実験して、評価して、解釈を下す」という一連の行為に従事している時、どうしても邪な考えが頭をよぎります。
それは「都合の悪いデータを見た時」に起こります。
つまり、「都合よく解釈したい」と思ってしまうことです。
 
しかし研究の重要な要素として「客観性」があります。つまり解析の段階でも「主観」を入れたプロセスは厳禁で、あくまで事実を正確に解釈することが求められます。
 
「猫飼育と子供の関係性」を研究した人も、最初はポジティブな影響を仮説に立ててたと思います。
しかし、ネガティブな結果が得られました。
こんな場合でも、しっかりと結果を論文としてまとめ、その結果を社会に発信したことはすごく格好いいです。
 

〇 どの側面を切り取るか

 
世の中に存在する事象の多くが、「白黒つけられない」物です。ある人から見れば思いっきり白だとしても、違う人が見たら薄っすら黒かもしれません。
 
何らかの事象に対して自分が敷いている価値基準の場所を「バランシングポイント」などと表現しますが、この「バランシング・ポイント」は無限に存在しており、重なり合う人の方は人類規模で見てもごく少数かもしれません。
 
得られた実験結果というのも、複雑なバックグラウンド実験の方法対象者実験プロトコル、、多くの要素から左右されまくった結果あらわれた事実です。
これを一義的に捉える方が難しく、メディアのように一側面を切り取って「あたかもその一側面が事実の解釈のすべてである」のように表現するのは危険な行為といえます。
著者のHerzogさんは記事内で、その点の危険さも強調しています。
 
メディアに限らず、結果そのものである「事実」と、それを主観的に捉えたあとの「解釈」を、ごっちゃ混ぜにしないよう心掛けることが、なにごとにも肝要かと思います。
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