多くの猫の飼い主は、猫を愛しく想い、彼らが自身の健康レベルを底上げしてくれる存在であることに確信を抱いています。
特に、情緒的な利益を意識する機会は多いのではないでしょうか。
実際、犬や猫を始めとするペットを対象にした研究は広く行われ、様々な研究結果が知られています。
しかしながら、『猫』単体を研究対象とし、「猫が飼い主に健康効果をもたらす」ということを示した研究は、以外にも多くありません (とくに、犬と比較して)。
そこでこの記事では、わずかばかりの「『猫』のもたらす心理面および社会面への健康効果」を示した論文を紹介したいと思います。
もくじ
心理的健康
Psychological Health in a Population of Australian Cat Owners
Cheryl M. Straede & Richard G. Gates M.D. (1993)
Anthrozoös, 6:1, 30-42, DOI: 10.2752/089279393787002385
調査の概要
オーストラリアに在住の92名の猫の飼い主と、70名の非飼い主にアンケート調査を行った。
測定した項目
・心理的健康全般
・抑うつ不安状態
・睡眠障害
・ペットへの態度と世話
・社会的望ましさ
・ライフ イベント インベントリ
得られた結果
猫を飼っていると、心理的健康全般、精神的障害の程度、といった項目の数値が統計学的に有意に低かった。
社会的健康
Understanding the Human—Cat Relationship: Human Social Support or Attachment
Karin B. Stammbach & Dennis C. Turner (1999)
Anthrozoös, 12:3, 162-168, DOI: 10.2752/089279399787000237
調査の概要
370名の女性を対象に調査を行った。
測定した項目
・2種類の、猫に対する愛着度合い
・2種類の、社会的サポート尺度
得られた結果
愛着度合いが高い人ほど、「重要であると認識する人間の数」や「感情的かつ具体的なサポートの点数」が低かった。
すなわち、猫が「社会的なサポート」として機能していることを示している。
感想と転用
2個目の研究の結果は一度見た時 ”ん?” となるのですが、「猫が、社会的空白を埋め合わせている」のような解釈になります。
解釈を変えればネガティブな結果とも取れるので (猫への愛着が大きいと、社会的サポートが低下する) 、けっこう難しい
古い
猫が持つ健康効果を示した文献は、(犬と比較して特に) 少ないことが知られています。
それを示すように、上記で挙げた論文はどれも2,30年近く前に行われたものです。
猫単体で研究することの意義は確かに無いので、そりゃそうか~とは感じます。
参照文献にするには古すぎる気もするので、犬猫の両方を対象にした新しい研究を採用した方がいいかもしれません。
研究の難しさ (他要因と因果関係)
健康は幅広い影響因子が想定できます。「運動」「たばこや酒」など、挙げだしたらキリがありません。
また、「猫を飼っているから健康」なのか「健康な人が猫を飼っているのか」といった因果関係の問題もあります。
少なくともこれらの研究ではコントロールしていませんので、このへんから考えても、他要因をコントロールした新しい論文を参照にする方が信頼性が高いようにも感じます。