ペットとのかかわりは、人同士の関わりと通じるものが多いといえます。
他者の思考を推測する『共感能力』に対して及ぼす『ペット』の影響も、いくつかの研究が行われています。
この記事では、ペットが飼い主の『共感能力』を高めるのか否かを調べた研究を紹介します。
もくじ
■文献情報
〇題目
Empathic Differences in Adults as a Function of Childhood and Adult Pet Ownership and Pet Type
〇著者
Beth Daly and L. L. Morton
〇雑誌
Anthrozoos A Multidisciplinary Journal of The Interactions of People & Animals 22(4):371-382 · December 2009
■研究概要 (序論~方法)
〇背景
子どもの共感性に関わる能力が、ペットを飼っているか否かで変わってくることは知られています。
しかしながら、そのような研究を大人に対して行った研究はありません。
〇目的
子どもの頃、もしくは大人になった今現在に、「ペットを所有していたか (しているか) 」によって、大人の今現在の共感能力に影響は生じるのかを調査すること
〇被験者情報
424人の成人
〇実験・調査方法
アンケート調査。
被験者は以下の8つのグループに分けられ、解析された。
子どもの頃に、、
「犬も猫も飼っていた群」
「犬のみ飼っていた群」
「猫のみ飼っていた群」
「犬も猫も飼っていなかった群」
大人の今現在に、、
「犬も猫も飼っている群」
「犬のみ飼っている群」
「猫のみ飼っている群」
「犬も猫も飼っていない群」
〇 評価指標・方法
被験者の共感能力を測定するために、以下の2つのアンケートを実施した。
Interpersonal Reactivity Index (IRI)
→ 対人反応性指標
Empathy Quotient (EQ)
→ 共感指数
■研究概要 (結果~考察)
〇メインで得られた結果
子どもの頃に「犬も猫も飼っていた群」「犬のみ飼っていた群」の大人たちは、「犬も猫も飼っていなかった群」の大人に比べて、社会的スキルが高く、対人困難に関わる数値が低いことが分かった。
大人の今現在に「犬のみ飼っている群」の大人たちは、「犬も猫も飼っていない群」の大人に比べて、対人困難に関わる数値が低いことが分かった。
〇面白い・特筆すべき結果
大人の今現在に「犬のみ飼っている群」の大人たちは、「犬も猫も飼っていない群」と「猫のみを飼っている群」の大人に比べて、社会的スキルが高いことが分かった。
〇筆者の意見・主張
人間は、ペットとのかかわりを「擬人化して」捉える傾向にある。
また、ペットを家族とみなしており、特に猫よりも犬は、その認識が強いので結果が強く表れたといえる。
さらに、「社会的な共感性の高い人」が、犬をペットとして選んだ、ということも考えられる。
多くのペットの飼い主が、「ペットとの関係」を「人間との関係」と同様なもの捉えていることが考えられる。そして、被験者が比較的若いこともあり、家庭内に子供がいないことも考えられるため、ペットを子供の代わりのように認識していることも示唆できる。
■感想と転用
〇 卵が先か鶏が先か
必ず取りざたされる問題、「共感性が高い人がペットを飼っているだけでは?」。
確かにその可能性は高くて、というか、その可能性も1要素だと思います。
何かの現象が単一の背景によって生じていることの方が少ないし、複雑な経路からそのような現象が起きたのだといえます。
ただ、「過去にペットを飼っていた人の、現在の共感能力が高い」という事実が得られたこの研究は、「ペットを飼った」から「共感能力が上がった」と強めに主張できるのではないかと思います。
(これも勿論、反論の余地ありますが)
〇 猫の完敗
結果のみを見ると、猫が共感能力に及ぼす影響は小さいことが分かりました。
残念!
犬のような気質と比較すると、気まぐれで独立性の高い猫のような気質は、共感に関わる能力とのかかわりが小さいのか、、。
逆に、猫みたいな生き物だからこそ、「他者視点能力」は上がるような気がするんだけどなぁ、、。
ただ、子供の時であれば、犬猫両方飼っていれば共感能力が高かった、少しは共感能力に寄与するのかなとも思います。
今後の研究に期待ですね。