■文献情報
〇題目
ネコの行動学:データ収集におけるソーシャルメディア活用を評価する
〇著者
Patricia Casey
〇雑誌
■研究概要 (序論~方法)
〇背景
したがって、移動先での猫の行動が、「彼らの通常のふるまい」であるかといわれると、そう捉えるのは難しい。
〇目的
〇対象にしたYouTube動画
〇評価方法
ネガティブな行動の例:「しっぽの付け根だけ上に上がり、先の方は下に垂れている」「耳が横か後ろに向けられている」
〇動画のカテゴリー分け
61個の動画は、「闘争」「親和」「遊び」「その他」の4カテゴリーに分けられた。
そして、この4カテゴリーの動画ごとに、猫たちの行動に違いがあるのかを検証します。
■研究概要 (結果~考察)
〇得られた結果
猫の挨拶行動として知られる「尻尾を上げたり、巻き付けたりする行動」が、「親和」カテゴリーの動画で5.31倍も多く発生していた。
猫の遊び行動の1つである「前脚で触ろうとする動き」は、より頻繁に確認された。
猫が鳴く回数は、「遊び」カテゴリーのビデオで5.67倍も多かった。
〇筆者の意見・主張
YouTube動画で観察された行動は、すでに確認されている実際の猫の行動と一致していた。
それは、YouTubeに投稿された動画が、猫の行動を研究するための材料になることを示している。
「猫の生活している家庭内で」「猫の飼い主の前で頻繁に見せる」行動を観察することが出来るという点に特に価値があり、猫の自然な状態での行動についての情報を得ることが出来る。
■感想と転用
〇 YouTubeで研究する時代もすぐそこ?
研究における超大事な点、『データ数の確保』を考えた時、SNSの活用は利口な方法のように思います。
若者を中心にSNSの普及はどんどん広がっており、研究者が足と労力を使って手に入れたデータの「何十倍ものデータ」が取れる可能性もあります。
一方で、こんな時代だからこそ、『信頼性の確保』という点に関しては微妙かなと思います。
つまり、誰でも高度な動画加工ができるこの時代において、「その動画がフェイクか否か」を見極めることが困難だからです。
著者は、「解析に用いるYouTube動画を選定する段階」で、「加工が強い動画」は排除していたようです。
この作業では今度は「評価基準 (どこまでを排除するの?どうやってそれを見極めるの?)」といった部分の難しさも出てきます。
SNSにアップされた動画を用いて研究を行うには、かなり吟味が必要だな~と思いました。
〇 猫の行動実験の圧倒的課題
猫は縄張り性の動物であり、環境に依存する生き物です。
これは犬とは典型的に異なる点であると同時に、「犬で進んでいる研究が猫で進んでいない」理由の1つでもあるといえます。
「実験者」という部外者が家庭内に入ってきた時点で、猫によっては普段の行動を取れなくなる可能性があります。
すなわち、実験の実施が困難になるということです。
これは由々しき問題で、猫の行動学的研究の難しさを表しています。
SNSはさておき、「猫の飼い主自身に動画を取ってもらう」という実験手法は、アリだなと思いました。
かなりナチュラルな行動が見られるので、行動解析の対象としては理想的だなと感じます。
いかがだったでしょうか。
SNSの猫動画を研究材料にする、という発想はとても面白いですよね。
現代における新しい研究のカタチなのかなと思います。
もしかしたら、10年後にはスタンダードな研究手法になっている、、かも、、?