輪読会レポート 2019年6月20日 | ロボットアザラシ・馬で心理療法・精神病と睡眠障害・犬と人のストレス同期・写真投影法・運動習慣と犬の飼育

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本日の輪読会は6題でした。

 

題目1「Robotic Seals as Therapeutic Tools in an Aged Care Facility:
A Qualitative Study」高齢者介護施設における、療法ツールのためのロボットアザラシ:質的研究

Melanie Birks, Marie Bodak, Joanna Barlas, June Harwood, and Mary Pether
Hindawi Publishing Corporation Journal of Aging Research Volume 2016, Article ID 8569602, 7 pages http://dx.doi.org/10.1155/2016/8569602

目的:

高齢者施設でのパロ (アザラシ型のロボット) を用いた活動を質的に評価すること。

方法:

レクリエーションセラピスト3名が実験に参加し、4か月、1回30~40分のセッションを行った。
面接での聞き取り調査や、セラピストによる客観的な記録を、主題分析 (質的データを分類する方法) をもちいて評価した。

結果:

結果はすべての人にあてはまるわけではなかった。
しかしながら、『気分の改善』『危険な行動の減少』『社会交流の促進』などの効用が見られたことから、『感情的』『行動的』『社会的』側面に影響をおよぼすことがわかった。

虎太郎所感:

人によっては (特に認知症を患う人では) 、動物を療法のツールとして用いることに、屈辱的な印象を持つこともあるといいます。
すべての人に適している療法などは存在しないため、この側面のみを取り上げて動物介在療法を批判することは誤りです。しかしながら、むしろ悪化を招くようなことは避けないとならないため、「どのような属性 (特性) の人間」に効果があるのかを論じていくことは重要であることが、よくわかります。

 

題目2「Equine-facilitated psychotherapy for at-risk adolescents: The influence on self-image, self-control and trust」
青年の危険性に対するホースファシリテッド心理療法:自己イメージ、自己制御、信頼感への影響

Keren Bachi, Joseph Terkel and Meir Teichman
Clinical Child Psychology and Psychiatry 1–15 © The Author(s) 2011
Reprints and permission: sagepub. co.uk/journalsPermissions.nav
DOI: 10.1177/1359104511404177

目的:

居住用治療施設に住む青年に対してEFP(Equine Facilitated  Therapy)を行った際の、自己イメージ、自制心、信頼感への影響を調査すること。

方法:

実験は7か月実施し、その前後でアンケートを実施した。また、追跡調査を1年間行った。
『実験群 (14名)』:馬とのかかわりを持った活動に参加する
『対照群 (15名)』:6割が何もしないけど、4割はなんらかの治療を行う

結果:

実験群の方が、対照群よりも、自己イメージ、自制心、信頼感に改善がよく見られていた。しかしながら、どの項目も有意ではなかった。
また、追跡調査によると、実験群のうち2名が通常の学校に戻り、犯罪を犯した人の割合が21% (対照群では60%) 、薬物の使用率は29% (対照群では80%) となっていた。

虎太郎所感:

施設に来た経緯 (バックグラウンド) によっても結果が変わることが想定されますし、対照群の4割は何らかの別の治療を施されています。これらの要素をフラットにする (サンプル数の少なさから、本研究では無理ですが) ことで有意な差は表れるのではないか、と思いました。

 

 

題目3「Sleep Disorders in Early Psychosis: Incidence, Severity, and Association With Clinical Symptoms」
早期精神病における睡眠障害:発生率、重症度、および臨床症状との関連

Sarah Reeve, Bryony Sheaves, and Daniel Freeman
Schizophrenia Bulletin vol. 45 no. 2 pp. 287–295, 2019 doi:10.1093/schbul/sby129

目的:

睡眠障害を併発する精神障碍者に関する詳細な評価を行うこと。

方法:

60名 (18~30歳) を対象に、睡眠状態、精神状態、心理的幸福感 などを調査した。

結果:

約8割の患者が、少なくとも1つの睡眠障害を有していた。患者一人当たり約3.3個の種類の睡眠障害を有していた。
また、パラノイア、幻覚症状、認知の混乱、といった項目の重症度と、睡眠障害の保有には関連性が見られた。

虎太郎所感:

睡眠は脳機能の側面からみても非常に重要な活動であり、睡眠障害は疾患の重症度に影響することは至極当然だと感じます。逆に言えば、睡眠障害を積極的に改善することが、精神病の症状を緩和するための大きな一歩になるのかなと思いました。

 

題目4「Long-term stress levels are synchronized in dogs and their owners」
犬とその飼い主の長期的なストレスレベルの同期

Ann-Sofe Sundman, EnyaVan Poucke, Ann-Charlotte Svensson Holm, Åshild Faresjö, ElvarTheodorsson, Per Jensen & Lina S.V. Roth
Scientific Reports | (2019) 9:7391 | https://doi.org/10.1038/s41598-019-43851-x

目的:

飼い主とその飼い犬の、HCC (Hair Cortisol Concentration: 毛髪コルチゾール濃度) を測り、長期的なストレスが異種間で同期するか否かを確かめること

方法:

58組の被験者に対して、冬季と夏季の二回に分けてサンプル採取を行い、HCCを算出し、相関関係を確認した。

結果:

冬季においても夏季においても、飼い主とその飼い犬のHCCには正の相関関係があった。

虎太郎所感:

めちゃくちゃ面白い研究でした。これこそが、発想をぶち壊す研究な気がします。『長期的』な同期に目を付けたところとか、『毛髪』をサンプルに使うなど、非常にユニークです。また、雌犬の方が同期率が高かったり、飼い主の神経症傾向との負の相関関係にあったり、犬種 (シェルティーとコリー) で違いをみたりなど、他側面から結果を解析している点も面白いです。
今度、じっくり読んでみたいと思います。

題目5「Analysing recreational values and management effects in an urban forest with the visitor-employed photography method」
写真投影法による都市森林のレクリエーション価値と管理効果の分析

Erik Heyman
Urban Forestry & Urban Greening 11 (2012) 267–277

目的:

写真投影法 (Visitor Employed Photograph) を用いて、森林の構造に対する嗜好性を検討すること。

方法:

被験者は学生62名。
デジタルカメラを持ったまま、指定された公園の歩道を歩き、10枚の写真を撮ってもらう。
その写真に対して好き嫌いを評価してもらった。

結果:

自然物に分類されるような『森林景観』は好意的に捉えられ、人工物である『ゴルフコース』などは非好意的に捉えられた。

虎太郎所感:

非常に予想通りの結果と言えます。
ベンチやごみ箱といった設備においても、自然の素材を用いる方が良いとも言及されています。
以下に自然的な要素を残し、管理面が負担にならないように工夫するかが重要なのだと感じました。

 

題目6「Dog ownership, dog walking, and leisure- time walking among Taiwanese metropolitan and nonmetropolitan older adults」
台湾の大都市圏および非大都市圏の高齢者における、犬の飼育、犬との散歩、余暇活動的ウォーキング

Yung Liao, Pin-Hsuan Huang, Yi-Ling Chen, Ming-Chun Hsueh and Shao-Hsi Chang
BMC Geriatrics (2018) 18:85 https://doi.org/10.1186/s12877-018-0772-9

目的:

台湾の高齢者における、犬の飼育と運動習慣の関係性を検討すること。

方法:

1074名に、電話調査を実施。
運動習慣や人口統計学的項目を質問し、回答してもらった。

結果:

大都市圏に住む高齢者は、非大都市圏の高齢者よりも『余暇活動的ウォーキング』を多く行っていた。
また、非大都市圏に住む高齢者は、『犬を飼育する割合』が高いものの、『散歩を行う頻度』が少なかった。
そして、非大都市圏で犬を飼育し、散歩を行っている高齢者は、『余暇活動的ウォーキング』も多く行っていた。

虎太郎所感:

ちょっとわかりづらい結果の羅列になりましたが、簡潔に言えば「犬との散歩はその他の運動習慣の促進にもつながるが、そもそも犬を飼ってても散歩しない人は運動習慣が促進されない傾向がある。したがって、犬の散歩を促すための介入が必要だね!」ってことかと思います。
介入の仕方としては、『地方にも公園やレジャー施設を増やそう!』みたいのが挙げられているようです。まさにそのとおり。犬を飼ってる『だけ』では健康にならん、ということですね。

 

~~(=^・・^=)~~

 

最近は、『猫や犬が人を健康にする』という認識に疑問が浮かぶようになりました。あくまで動物は健康を促進するためのツールなだけであり、『健康になろう』という飼い主側の意識や認識がもっとも大切なように思います。健康にはマインドセットが重要であることは当然ですし、何も勉強しないでメカニズムや要因も理解せず、『ただ飼ってるだけで健康になる』なんて、おかしな話です。

常に能動的に健康効果を求め、理解・認識する必要があると感じてます。

 

 

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