本日の輪読会は5題でした。
多いので、2回に分けます~。
最初は、1,2題目です。
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題目1「Transport stress in horses: Effects of two different distances」
馬の輸送のストレス: 2つの異なる移動距離の影響
Alessandra Tateo, Barbara Padalino, Marianna Boccaccio, Aristide Maggiolino, Pasquale Centoducati
Journal of Veterinary Behavior, Vol 7, No 1, January/February 2012
目的:
これまでは、馬の長距離輸送時のみで、輸送時の福祉的な配慮が規定され、制限されていた。
そこで、比較的短い輸送距離で生じる、馬の生理面と行動面に及ぼす影響を確認すること、さらには、輸送後の競技においてより成績を残せるように配慮すべきことについて提案すること。
方法:
12頭の馬を対象に、
「短距離輸送」50㎞
「長距離輸送」200㎞
の2種類の条件を設定し、
「心拍数「コルチゾール濃度」「行動時間」「輸送後の行動」を観察した。
データは、積み込み前~輸送後4時間後まで、定期的に測定された。
結果:
長距離輸送と比べ、短距離輸送では心拍数もコルチゾールも高い上昇を示した。
また、バランスを取るための前後に動きを取ることも多かったよう。
一方で、輸送後は、長距離輸送をした馬は長い時間水を飲み、濃厚飼料を多く消費した。
輸送後の新奇環境では、良質な水と餌を用意しておき、少なくとも競技4時間前には現地に到着しておく必要がある、といえる。
虎太郎所感:
一見すると、矛盾するような結果でした。
おそらくこれは実験デザインの問題で、長期輸送は時間が長いゆえに、馴化しリカバリーが生じたからだと言えます。もうすこし短いスパン (少なくとも、短距離輸送の終了目安時間とか) で生理データを取らないといけないのでは、と思いました。それは、研究の意図とズレるのかな。
研究の目的は非常に意義深く、共感できるものでした。
題目2「Oxytocin administration and emotion recognition abilities in adults with a history of childhood adversity」
小児虐待経験のある成人に対する、オキシトシン投与の影響
Marion Schwaiger, Markus Heinrichs, Robert Kumsta
Psychoneuroendocrinology 99 (2019) 66–71
目的:
オキシトシンの投与を行うことで、小児虐待をされた経験のある成人の、感情を含めた精神状態の認識に影響が生じるかを調べること。
方法:
実験は2重盲検プラセボ実験で行われた。
健康な成人80人、そのうちで40名が虐待経験のある人でした。
36枚の写真から他者の思考や感情を推測する「目からの心的状態の推測試験 (Reading the Mind in the Eyes Test: RMET) 」
さまざまな顔の表情が段階的に変化し、それを読み取っていく「感情認識試験 (emotion recognition task)」
を実施し、オキシトシンの投与の前後でテストの結果が変わるかを調べた。
結果:
どちらの試験も、オキシトシンを投与した場合の方が、高い成績を収め、特に感情を認識する試験では虐待経験のある群でのみ有意に成績が高まった。
虎太郎所感:
虐待の経験は、過度なストレスをもたらす原因となり、社会的行動に重要な枠割を持つ偏桃体や海馬に損傷をおよぼします。
オキシトシンの短期的な投与が、他者の感情を認知する能力を底上げするという事実を示したこの研究は、個人的にはとても嬉しい知見です。
動物がもたらす健康効果に共感性の育成があることは広く知られています。犬ではありますが、動物との接触とオキシトシンに関係性もあることも示唆されています。
この研究の結果は、この2つの文献をつなぐ架け橋になるように感じました。
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オキシトシンの文献、私の研究とかでも考察や序論に使いやすいので、とっても助かる。
自分で読む労力が減るのも、輪読会の利点ですね~