本日の輪読会は5題でした。
まず、題目1,2からです。
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題目1「How Japanese companion dog and cat owners’ degree of attachment relates to the attribution of emotions to their animals」
犬と猫の飼い主の愛着度に、動物に対する感情の帰属との関係性はあるのか
Bingtao Su, Naoko Koda, Pim Martens
PLOS ONE | https://doi.org/10.1371/journal.pone.0190781 January 5, 2018
目的:
日本人が、犬や猫が感情を持っていると認識しているかどうかを調べ、その認識に愛着的関係性がどのように影響を及ぼすかを明らかにすること。
方法:
546人にアンケート調査を実施した。
アンケートでは、怒り・喜びといった一次感情と、恥・嫉妬といった二次感情を、ペットが持っていると感じる頻度を「頻繁に」「時々」「まったくみない」の3段階で評価をしてもらった。
また、ペットとの絆尺度 (Pet Bonding Scale: PBS) を用いて、ペットとの愛着度合いを確認した。
結果:
愛着度と感情には有意な相関関係が見られた。喜びと同情といった項目は特に高い正の相関関係が見られ、これらの感情はペットへの愛着が大きい飼い主ほどよく認識するという結果となった。
虎太郎所感:
この研究では、動物福祉の重要な指標の一つとして、「動物の感情保有」を認識しているようです。
愛着度が高い飼い主ほど、動物が感情を持っていると強く認識していることから、そのような意識や認識の普及 (それが本当かどうかは別問題として) が動物福祉の向上を底上げする要素であると述べています。
動物福祉の向上に、このようなアプローチ方法があるとは、あんまり認知してませんでした。良い知見を学べました。
題目2「Stable individual differences in vocalisation and motor activity during acute stress in the domestic cat」
イエネコの急性ストレス時における発声と自発運動の信頼性のある個体差
Andrea Urrutia, Sandra Martínez-Byer, Péter Szenczi, Robyn Hudson, Oxána Bánszegi
Behavioural Processes 165 (2019) 58–65
目的:
猫の行動ストレス評価として、安定している指標を探すこと。
方法:
実験は40匹の猫が使用された。
実験の流れは、普段飼育している部屋から「移動用キャリー」に入れられて実験部屋に移動し、そこで2分間キャリーの中で放置させられ、その間の「発声」と「体の動き」を評価するというもの。
実験は週に1回を3週間、つまり3回実施された。
結果:
「体の動き」は、回を重ねるごとに数が少なくなっていった。
一方で「発声」は安定した数を示していた。
つまり、「発声」の方が信頼性の高いストレス評価指標になりうると考えられた。
虎太郎所感:
これ、ウチの研究室の猫たちでも同じ認識です。
実験の関係で、実験に使わない方の猫をキャリーに入れると、『出してくれ~』っていって頻繁に鳴きますが、これ、昔から今も変わらない気がします。(もちろん年スパンで見れば慣れてますが)
短期的なストレスの指標として、音声が重要であることを示す、というアプローチ自体も、私にとってはなんか新しくて、良い感じです。
あと、図の見かた、読み取りが難しかったです。(後輩ちゃんに聞かれて一緒に読み解きましたが、割と時間かかってしまった、、)
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「動物の福祉」といった共通の『研究目的』を据えていたとしても、「人側の動物への認知」という人側へのフォーカスや「猫の行動的ストレス」といった動物側へのフォーカスなど、着目する部分によって『論文目的』がこうも変動するのか~~という良い例を知りました。
さらに言えば、それぞれの『研究目的』に対するアプローチのしかたも、「感情投影」や「発声」に着目するといった面白い視点でした。
目的の達成には、いろんな道筋があるんですね~