猫を飼育すると幸福感が減少する?|日本の小学生に実施された「ペットと健康」の大規模調査

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昨日の記事で、「猫を飼育している子どもは、精神的健康の状態が悪い」という悲しい論文を紹介しました。
調べてみると、他の論文でも、「猫の飼育は、子供の幸福感を減少させる」という結果が見られたようです。
 
この記事では、東京都の小学生に対して実施した大規模な健康調査に関する論文を紹介します。
 
もくじ

■文献情報

〇題目

Dog and Cat Ownership Predicts Adolescents’ Mental Well-Being: A Population-Based Longitudinal Study
 

〇著者

Endo, K., Yamasaki, S., Ando, S., Kikusui, T., Mogi, K., Nagasawa, M., Kamimura, I., Ishihara, J., Nakanishi, M., Usami, S., Hiraiwa-Hasegawa, M., Kasai, K., & Nishida, A.
 

〇雑誌

International journal of environmental research and public health, 2020, 17(3), 884. https://doi.org/10.3390/ijerph17030884
 
 

■研究概要 (序論~方法) 

〇背景

 
精神的健康とペットの飼育の間の関係性は示唆されている。しかし、しっかりとした縦断的研究 (追跡調査を行う研究) は不足している。
 

〇目的

 
代表的なペットである犬と猫の飼育が、子供の精神的幸福感を予測する要素となりえるかを調査すること。
 

〇被験者情報

 
東京ティーンコホートという団体で得られている、子供たち2584名のデータを使用。
 

〇評価方法

 
「幸福感」の評価は「5-item World Health Organization Well-Being Index (WHO5)」と呼ばれる5つの質問で構成された尺度で実施。
直近2週間を振り返り、「自身の幸福感を自分で」6段階で採点する。
 
質問内容は「明るく,楽しい気分で過ごしたか?」といった質問で、以下のサイトから無料で閲覧可能。
 
 

〇実験・調査方法

 
子供が10歳の時、そして2年後の12歳の時に答えた「WHO5の点数」を比較する。
 
 
 

■研究概要 (結果~考察)

〇メインで得られた結果

 
猫を飼育してる子供、12歳の時の幸福感が10歳の時より減少しており、「犬も猫も飼っていない子供」よりも低い数値を示した。
 

〇面白い・特筆すべき結果

 
「犬を飼育している子供」は、幸福感に大きな変動はなく、維持していた。
 
 

〇筆者の意見・主張

 
「猫を飼育している子供が、12歳の時に幸福感か低下していた」という結果に対して考えられる仮説・およびそれに伴う考察、は以下の通り。
 
・犬のような「散歩」が世話に含まれていないので、「身体活動」が低いから
 
精神疾患と関わりがあり、かつ、猫と人の共通感染症である「トキソプラズマ症」による影響から
 
・犬と人では頻繁に研究されている「オキシトシンの分泌」が猫では生じないから (そもそも研究が行われていないので不明瞭)
 
 

■感想と転用

 
猫好きとしては、この研究結果をみると白目を剥いてしまいます。
 
なぜこのような結果が出たのかについて、著者は複数の仮説を当てはめていました。また、それに伴い、いくつかの「研究の制限」も述べていました。
 
私なりの意見も交えつつ、解説してみます。
 

〇 能動性の問題

 
例えば、この小学生が、「自らの意志で能動的に」猫を飼育していたか否かは非常に重要な点であるといえます。
 
「親がもともと猫好きなので昔から飼っていた (受動的)」
ポジティブな影響 → ペットとの愛着や絆が形成されやすい
ネガティブな影響 → 子供自身は別に好きではない
 
「子ども自身が『飼いたい』といって飼い始めた (能動的)」
ポジティブな影響 → ペットとの愛着や絆が形成されやすい
ネガティブな影響 → 飼い始めたら意外と、、
 
どっちの方が、っていうのは難しいところですが、分析する上では重要なファクターなのかなと思います。
 
著者の方も、「ペットの飼育期間や年齢」といった背景をもっと掘るべきだと話しています。
 

〇 愛着の程度

 
上記とほぼ同じですが、子どもが「猫に抱いている印象、結んでいる絆や愛着」も重要だと考えます。
 
著者の方が言うように、「そのペットの世話の有無」など、そもそものペットとの関わり合いについても分析に入れる必要があるように思います。
 
 

〇 一般的、主観的な健康を見ていない点

 

質問項目を見てもらえれば分かると思いますが、かなり広域な (メタ的っていうんですかね) 概念としての「幸福感」を質問で聞いています。

 
もう少し具体的な項目を、「心理」「社会」的な健康効果も含めて、評価する必要もあると著者は述べています。
 
また、その他の交絡因子 (影響を及ぼしそうな要素) がものすごくあるので、その部分を調整して分析していく必要も、とも述べています。
因子は挙げだしたらキリがありませんが。。
 
 

〇 個体特性によって違ったりしない?

 
ここは完璧に私個人の意見ですが、「個体特性」も結構重要な気がします。
 
犬や猫にも個性があります。
(犬であれば、特にその個性は「犬種」にも左右はされると思いますが。)
 
例えば、「いつでも人にベタベタの甘えん坊」もいれば、「人からの接触をまったく許容しないツンツン」もいるし、その中間で「ツンデレを使いこなす」子もいます。
 
「運動」というファクターを考えた時に、その運動の種類 (ウォーキング?ランニング?スポーツ?) を考えるのと同じように、「ペット」についても細かく分類して考える必要があるのかな、と思います。
 
 
まあ、それ以外の制限の解消の方が優先度は高いので、もっと未来の研究の話になるのかな、とは思います。
 
 
 

 
明日は、「ペットの飼育」と「生理学的な健康効果」について研究した論文を関連論文として紹介します。
 
 
この論文も、猫はあんまりポジティブではないんですよね、、、笑
 
気が重いですが笑

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