猫と飼い主の福祉を向上させるには、望む行動を増やし、問題行動を減らすことであるといえます。
ただ、言うは易く行うは難しです。なぜなら、猫の行動は「飼い主の行動特性」や「飼育家庭環境」などの多要因に左右されるからです。
今日紹介する論文では、「猫の行動を左右する要因はなにか?」を調査し、猫のより良い福祉を考える試みをしています。
文献の情報
Relationships between owner and household characteristics and enrichment and cat behaviour
飼い主と家庭の特徴の関係性、エンリッチメントと猫の行動の関係性
Windschnurer, I., Häusler, A., Waiblinger, S., & Coleman, G. J. (2022). Relationships between owner and household characteristics and enrichment and cat behaviour. Applied Animal Behaviour Science, 105562.
背景・目的
猫の行動に対して、飼い主の行動特性・価値観が影響を及ぼすことは明らかになってきた。しかし、それらの詳細な関係性はまだ不明瞭な点が多い。
そこで本研究の目的は3つ。
- 「飼い主の行動」と「飼い主の猫に対する価値観や行動」の関係性を調査
- 「飼い主の行動」を左右する因子を調査
- 「飼い主の行動」と「猫の行動」の関係性を調査
材料と方法
調査対象
猫の飼い主435名
調査計画・流れ
計画的行動理論を採用。
Ajzenが1991年に提唱した概念。人間の行動は「行動意図」によって左右されており、その行動意図は「行動への態度」「主観的規範」「行動のコントロール感」の3つによって左右されるとのこと。この3要素を高めることができれば、その行動を高めることが出来るそう。(以下、【3分でマスター】計画的行動理論から引用)
結果・考察
「猫を遊ばせることは重要である」という態度が高い人ほど、「猫と遊ぶ時間」が長くなる。
「複数種類のおもちゃで遊ばせることが重要」と認識している人ほど、猫ごとのおもちゃの数が多かった。
「外は危険ではない」「外にだすことは大事」と認識している人ほど、猫を外に出す頻度が多かった。
結果から、猫の望ましい行動(遊び時間など)を増やすためには、「猫の行動に対する態度や信念(遊びの重要性など)」の意識改革が必要であると考えられます。
文献に対する感想・内容の転用 (抽象化)
分析量が多く、読むのが大変でした。あまり本質的な部分は理解できてないかも、、。
猫に対する行動(本研究では特に遊び行動)を左右するのは、飼い主が「遊び行動をどう考えているか?」という行動への態度であるそう。
つまり、「猫を遊ばせることは大切だよね~」のような認識を持つことは、結果的に「猫を遊ばせる時間を伸ばす」ことに繋がるよう、ということですかね。
次の課題は?
本研究で得られた知見を活かした介入研究が必要なのかなと感じます。
「飼育講習会」などを開き、猫の飼育に対する認識や行動を変えるような取り組みをして、実際に猫に対する行動が変化するかをモニターする必要があるのかなと思います。
どんなことが言える?
過去の研究だと、「猫との関係性が親密だ」と感じている飼い主ほど、猫との暮らしでをポジティブに捉えているようです。
つまり、「飼い主側の認識・考え方・捉え方」それ自体が、猫との暮らしによる飼い主側の健康福祉向上にも繋がるのだと考えられます。
本研究では、「飼い主側の認識・考え方・捉え方」が、実際の行動を決定する因子であることも分かり、飼い主の意識改革がいかに重要かがわかります。
またこれは、良い方向にも、悪い方向にも繋がるので、「できるだけ正しい猫についての知識を深める」ことが肝要だといえます。
いかがだったでしょうか?
猫の飼育管理に対する認識・意識を変えれば、猫に対する行動が変わり、猫の行動も変わります。
それは結果的に、猫との暮らしをもっと豊かにすることに繋がるのかも知れません。
猫について書かれた書籍等を読むことの大切さが認識できる論文でした。