ツシマヤマネコのストレス状態は?|糞中グルココルチコイドによる健康管理

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

日本に唯一生息する野生のネコ科動物である対馬島に生息するツシマヤマネコと、西表島のイリオモテヤマネコ。

彼らは絶滅の危機に瀕しており、彼らの健康状態を適切に管理し、個体数の増加に努める必要があります。

今日紹介する論文では、「ツシマヤマネコの糞からストレス物質を測定できるか否か?」を調査しています。

 


文献の情報

Fecal Glucocorticoid Metabolites as a Noninvasive Indicator of Stress in the Tsushima Leopard Cats (Prionailurus bengalensis euptilurus): Application to Health Care
ツシマヤマネコの非侵襲的ストレス指標としての糞中グルココルチコイド代謝物:健康管理への応用

Kusuda, S., Funahashi, T., Adachi, I., Yamamoto, H., Nagao, E., Matsui, K., & Akiba, Y. (2022). Fecal Glucocorticoid Metabolites as a Noninvasive Indicator of Stress in the Tsushima Leopard Cats (Prionailurus bengalensis euptilurus): Application to Health Care. Animals, 12(9), 1072. 

背景・目的

ツシマヤマネコの保全のために、個体数を増やしていく必要がある。そのためには、ツシマヤマネコの繁殖生理を理解することや、ストレス評価を適切に行う必要がある。
 
そこで、カテーテルや注射器などを用いた侵襲的な方法ではなく、非侵襲的に採取が可能な糞を採取し、ストレス状態を反映する生理物質を数値化する方法を確立することとした。

材料と方法

調査対象

野生ではなく、管理下に置かれているツシマヤマネコのうち、健康と判断される6頭、疾患を抱える5頭の合計11頭を対象とした。

調査計画・流れ

酵素免疫測定法(EIA)にて糞中のグルココルチコイド代謝物(GCM)を定量化した。
 

結果・考察

健康な個体のGCM濃度0.66 ± 0.08 μg/g であった一方、 疾患を持つ個体は2.65 ± 0.76と数値が高かった。

また、健康診断のために麻酔処置をしたあと1~2日後にGCMは上昇する傾向にあり、ヘルニアを患っている個体は薬物投与によりGCMが減少することが分かった。

上記の結果から、ツシマヤマネコの糞から抽出したGCMの濃度は、ストレス状態を反映しており、有益な指標となり得ることが分かった。

文献に対する感想・内容の転用 (抽象化)

慢性的なストレスは、繁殖活動にネガティブな影響を与えます。その観点から考えて、正確なストレス評価方法を確立することは非常に意義深いものです。

ツシマヤマネコの繁殖が成功し、個体数が増えていくことを願っています。

次の課題は?

論文中にイリオモテヤマネコについての言及が無かったので、気になりました。同じ手法を適用できるなら良いですね。

どんなことが言える?

イエネコにも適用できるますね。特に、腎機能の疾患にかかりやすい猫にとって、このような糞便採取による生理データ分析は有益であるといえますね。家庭猫なら尿も採れますね。

ただ、複数の猫ちゃんを飼っている家庭だと、「どの糞尿がどの子?」という判定が難しい場合もあると思います。個体識別ができるシステムトイレなどもあると思いますし、今後どんどん普及していくと思うので、この問題も徐々に解決していけばいいなと思います。

 

 

いかがだったでしょうか?

ツシマヤマネコの保全の話は、よく小中学生の頃に学んだ気がします。大学でも授業で取り上げられてました。2010年の後半には、個体数が90頭以下まで減少している可能性が報告されているようです、、。状況は、あまり良くないのですね、、。

このような研究が発展していき、個体数が維持・増加していくといいですね。