猫は飼い主の「感情」を理解している?!|クロスモーダル認知を用いた研究

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猫を飼っている人の中には、「ウチの猫は私が悲しんでるのを理解してるのよ~」と思っている人もいるでしょう。
それ、もしかしたら本当かもしれません。
 
この記事では、猫は「他の猫、そして人の感情を『視覚的』『聴覚的』に認識する能力がある」ということを明らかにした研究を紹介します。

 


 

 

もくじ

■ 論文の内容

 

〇 序論

 
社会集団で暮らす動物にとって、他者の感情を認知する能力は重要な役割を担っている。
そして猫は、「同種である猫」そして「人」と社会的関係性を構築する。
 
また過去の研究では、猫は「他の猫」や「人」との関わり合いにおける「シグナル」に敏感であるといわれているものの、その「感情の認知」についての調査はまだまだ不足している。
 
この研究の目的は、猫のもつ「他の猫」および「人間」の感情を認識する能力について調べることである。
 
 

〇 方法

 
この研究では、クロスモーダル認知に着目をしています。
 
クロスモーダル認知
 
2つの知覚が相互に影響を及ぼし合って「認知」を導く現象。
この研究で言えば、「聴覚刺激 (例: 怒鳴り声)」を聞くと、自然と「視覚刺激 (例: 睨んでる顔)」もイメージするような感じ。
 
このクロスモーダル認知は、ヤギ・カラス・霊長類でも確認されている。
さらに、などの「人と密接に関わっている」動物では、異種である「人」に対してもクロスモーダル認知を行うことが知られている。
 
しかし、猫では不明瞭である。
 
 
実験では、猫と人それぞれの「怒り」「幸せ」の2種類の「音声刺激」「表情の写真」を準備した。
 
猫:怒りの感情「シャー」・幸せな感情である「ゴロゴロ」
人:「怒り」「幸せ」
 
実験の流れは、以下の通り。
実験に参加する猫の目の前に、2.5m四方のスクリーンが用意され、「怒り感情」「幸せ感情」の両方が映し出された。と同時に、スクリーンの後方から、「『どちらかの顔と一致している』音声刺激」を流す。
 
このとき、「どちらの顔を見るのか?」「ストレス・不安行動が見られるか?」に着目して猫の様子を確認した。
 
 
そして、提示する刺激が「猫バージョン」と「人バージョン」で、それぞれ実施された。
 
 

〇 結果

 
猫の「シャー」、人の「怒り」「幸せ」、この3つの音声を流した場合、「それぞれに対応する『顔の表情』の写真」を見る時間が長かった
つまり、音声刺激と視覚刺激を結び付けて認識していた。
 
また、
猫の「シャー」の刺激を見た場合、「ゴロゴロ」よりも、「ストレス・不安行動」が大きくなった。
同じように、人の「怒り」の刺激を見た場合、「幸せ」よりも、「ストレス・不安行動」が大きくなった。
 
 

〇 考察と結論

 
全体として、猫は、「他の猫」や「人」といった社会的なパートナーの感情に対する、一般的な精神描写を持ち合わせていることが分かった。
 
猫のもつ「近しいパートナーの感情を認識する社会認知的能力」を理解することは、猫と猫、そして猫と人の関係性の質家庭内環境での猫の福祉、これらをより良いものにするために重要である。
 

〇 記事情報 

 
Quaranta, Angelo; d’Ingeo, Serenella; Amoruso, Rosaria; Siniscalchi, Marcello. 2020. “Emotion Recognition in Cats.” Animals 10, no. 7: 1107.
 
 
 

■感想と転用

〇 人と長期間共生していく上で獲得したのか?

 
「クロスモーダル認知」
なんてカッコいくて難しい言葉を使ってきましたが、要は「猫は人の感情 (怒りと喜び) をちゃんと認識しているんだよ~」という研究の結果でした。
 
この研究では「悲しみ」を対象にはしていませんが、認知している可能性は高いかもしれませんね。
猫ちゃんが、泣いてるあなたに寄り添ってくるのも、「悲しみ」を認識しているからかも。
(ただし、『慰めに来てくれたのか否か』は、わかりませんね笑)
 
 
「同種の猫」ならまだしも、「人」の感情も丁寧に認知するのは、なにか不思議ですよね。
共生の結果なのか。
でも、犬や馬ならまだしも、野生原種と大きな違いが見られないイエネコで、それはあり得るのか。
 
「共生の結果、獲得」の方が、猫派の私は、なんだか嬉しい気もする。
 
 

〇 ゴロゴロは、そこまで認識してない?

 
著者は、「ゴロゴロ」でのみ結果がでなかった理由は、その「生物学的機能の多様性」によるものと主張しています。
 
ゴロゴロは、満足して幸せを感じている時だけではなく、「空腹時」「ケガをしている時」などの多様な場面でも発声されます。
さらに、その場面ごとに「その音声成分自体」も変動することが分かっています。
 
以前の研究で、猫が「何かを要求している時 (餌くれ~~って言ってるとき)」に発するゴロゴロは、人にとって不快な周波数が混じっていることが明らかになっています。
 
Karen McComb et al., 2009 Current biology
 
 
ゴロゴロは、意外と奥が深いんですよね~~。
確かに、判別するのは難しそうです。
 
これ、個体差とかも見ていけると、さらに面白いかもしれませんね。
「コミュニケーション下手な猫は、ゴロゴロの認知も下手」みたいな結果が出たらスゴイ擬人観が高まる。笑
 
 
 

 
 
 
いかがだったでしょうか。
 
猫が、人の感情を理解してくれてるのは、なんだか微笑ましいように感じます。
 
われわれも、猫の感情をより良く理解できるよう、勉強していかないとですね。

 

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