論文紹介 No.2|2020年1月25日|保護猫の譲渡率を上げるために必要なことって?

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題目

The Effect of Housing and Handling Practices on the Welfare, Behaviour and Selection of Domestic Cats (Felis sylvestris catus) by Adopters in an Animal Shelter

著者

N. Gourkow, D. Fraser

雑誌情報

The Humane Society Institute for Science and Policy Animal Studies Repository, 2006

研究目的は?

動物シェルターに収容されている保護猫の譲渡率を高めるための方法を模索すること。

対象者は?

カナダのバンクーバーの動物保護シェルターに収容された165匹の成猫。

調査の手順は?

猫達を、4つの飼育環境に分類する。

①小さめのゲージ (70×70×55) に1頭ずつ収容
②小さめのゲージに1頭ずつ収容するが、隠れたり休んだりできる小さな空間を追加
③大きめの部屋 (230×160×240)に最大8匹の集団で収容するが、猫同士の接触をなるべく小さくするために、それぞれの猫用に空間を用意
④大きめの部屋に最大8匹の集団で収容するが、猫同士の接触を推奨するように、個別の部屋は無く、プレイハウスなどが用意されていた。

さらに、「人からの接触」にも条件を設け、

①  →ボランティアが交代で世話。猫との関わり方に決まりはなく、ボランティアが個々人で行った。
②③④→実験者が常におこなった。猫との関わり方を統制し、遊んだり話したり撫でたりした。

どんな評価・分析を行った?

165匹の猫たちが、飼い主に引き取られるか、殺処分されるか、などを追跡で調査した。

また、収容中の猫のストレス度合いを、「Cat Stress Score」と呼ばれる尺度を用いて、猫の体、耳、体の状態といった外貌的な指標を観察して評価した。

さらに、猫を引き取った人は、何を基準に引き取る猫を選択するのかを、アンケートにて調査した。

どんな結果が得られた?

①のパターンで飼育されていた猫たちは、②③④と比較して、引き取られる割合が少なく、ストレス度合いも高かった。

一方で、②③④の間に、差はみられなかった。

また、殺処分の対象になる猫たちは、ストレス度合いがもっとも高かった。

猫を引き取る人は、猫の「人への友好性」「遊ぶのが好きか」「幸せそうか」といった判断基準を重要視していた。

どんなことを主張している?

「一貫性のある、人とのふれあい」や「飼育環境の向上」が組み合わさり、猫のストレスは低下し、それによって猫の譲渡の率が高まることが分かった。

 

虎太郎の所感

1999年に実施し、2006年にパブリッシュされた論文なので少々古いですが、非常に有益にな知見が多かったです。

結果はとても当然、というか、まあそりゃそうだよな、というものでした。それはディスってるわけじゃなく、こういった基礎的研究がいかに重要かを再認識できたという意味です。このような研究を前提にすえた上で、現代の猫の福祉向上研究は成り立っているのだなぁと実感しました。

猫の飼育環境において、「隠れられる」スペースを用意したり、「行動範囲が広い」部屋を用意することは、猫にとって好ましいことであることが伺えます。これは非常に納得です。

また、人からの「一貫性のある」インタラクションが重要、というのも面白い点でした。一貫性の欠如は、すなわち、猫達にとっての環境の変化と同義になります。それがストレスを生み出す要因になったのかもしれません。
一方で、研究のデザインが複雑なので、「飼育環境」と「人のインタラクション」のどっちが重要?までは踏み込めないところが、惜しいな~と感じました。まあ、難しいですよね、、。

あと面白いのは、「猫同士のインタラクション」ではなく、「人とのインタラクション」が、猫に必要なのではないか、とも読み取れる点でした。結果の部分をよく見てみると、有意差はないものの、譲渡率、殺処分率、ストレス度合い、どれをとっても③が最も高いのです。

猫同士のインタラクションを促進させすぎると、逆にトラブルも起きやすくなるのでしょうか。

面白い研究でした。
日本でもこのような研究をしなきゃですよね。頑張ります。

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