犬と猫の生活の質(Quality of Life)|開発された9つの評価指標に関するレビュー

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猫や犬は、我々との暮らしを楽しんでいるでしょうか?
 
彼らが病床に伏した時、そんな考えはより強く想起されます。
 
今日紹介する論文では、「猫と犬の生活の質 Quality of Life(QOL)を評価するための尺度」を調査し、その重要性を説いています。


文献の情報

Quality of Life Measurement in Dogs and Cats: A Scoping Review of Generic Tools
犬と猫の生活の質の測定:一般的なツールのスコーピングレビュー

Fulmer, A. E., Laven, L. J., & Hill, K. E. (2022). Quality of Life Measurement in Dogs and Cats: A Scoping Review of Generic Tools. Animals, 12(3), 400.

背景・目的

動物のQOLの正確な評価は、特に獣医学領域では重要なトピックであると考えられています。
 
なぜなら、主観的に健康状態を報告する「患者報告型結果評価」が動物は出来ないため、どうしても獣医・飼い主による「観察者報告型結果評価」しか出来ないからです。なるべく正確な評価をするための
 
また、腎臓病やガン、といった特定の疾患に特化したQOLも大切である。しかし、複数の疾患を併存している終末期のペットを対象とした時、汎用性の高い一般型QOL評価尺度も大切である。
 
そこで、現在開発されている、一般型のQOLを調べ、それらの内容を評価することとした。

材料と方法

 

調査計画・流れ

文献調査。
 
合計82件の文献が得られ、そこから9つの文献がピックアップされた。
 
猫は4つ、犬は4つ、犬と猫の共通が1つ。
 
具体的なQOL尺度については、論文のTable2から確認することが出来ます。

結果・考察

9つの論文では、主に3つの項目が共通で観察された。

【活動量】
「私のペットは以前と同じように活動している」「私のペットは普通に動いている」

【人などの外部環境への反応】
「留守から戻ると猫が挨拶してくれた」、「猫が周囲に興味を示してくれた」

【食欲】
「この7日間を考えて、○○は食事を楽しんでいたと言えますか」

 

また、猫においては、追加で2つの共通項目が存在した。

【気分状態】
「過去4週間、愛猫が幸せそうに見えたか」

【グルーミング】
「過去1週間の愛猫のグルーミングはどうでしたか」

 

現在の尺度ではあまり触れられていない、「動物の痛み」について評価する質問項目(グリマススケールなど)を追加すべきだと言及されています。

また、動物のQOLは「飼い主自身のQOL」にも左右されることが知られているため、そのような質問項目も必要かもしれないそう。

文献に対する感想・内容の転用 (抽象化)

犬では見られない、猫のQOL尺度に共通で見られた項目がとても興味深かった。

気分状態とか、犬のほうが顕著に見られそうですけどね。辛いときでも楽しそうな様子を見せちゃいそうで、評価しづらいんですかね。

また、グルーミングは、なるほどという感じ。高齢の猫ちゃんはグルーミングの頻度が減って毛がボサボサの子もいますし、無臭な猫にとってグルーミングは重要なQOLポイントなのかも知れません。

次の課題は?

尺度の統合なのかなと感じました。

質問数が40近くあるものもあれば、7つほどに集約されているもの。リッカード尺度も4~16ポイントだったり、Visual Analog Scale を使っていたりと、尺度ごとの特異性が強いのは課題点なのかと感じました。

獣医師会のような組織が、統合した代表的な尺度みたいのを開発すれば、比較検討もしやすくなるし、有益なんじゃないかと感じます。

どんなことが言える?

このようなQOL尺度は、一般的に病床に伏したペットを対象にした尺度だと思います。

ただ、健常なペットにも適応できそうな気がします。グルーミングや食事量、運動量など、健康なうちから評価することを習慣づけていれば、早期の疾患の発現にも繋がるのかなと感じました。

近いうちに、いくつかの尺度を日本語翻訳してみようと思います。
 

 
いかがだったでしょうか?
 
ペットと暮らす以上、私達自身のQOLだけではなく、ペット達のQOLについても考えるべきですね。